エピローグ
事務室に行くと、執事がディスプレイに向かっていた。諸人が声をかけると、
「おや、もういいのですか。まあ、早く来ていただいて、嬉しく思います」
「何を見ているんですか?」
諸人が画面を覗く。ユニも顔を近づける。
「あまり見ていていい気分がするものじゃありませんがね」
執事がそう言うと、諸人は口を手で覆った。
二十代後半ぐらいの美しい女性が、純白のドレスを着て、ベッドに四肢と胴体を拘束されている。女性の腕には点滴が打たれ、鼻と口には吸入器が固定されていた。目を閉じて、昏睡状態にあるようだ。画面には、A・ゲームの残り時間と思しき時刻と、女性の脈拍や体温、血中の物質の成分とその濃度などが表示されている。
「どういうことなんですこれは!」
諸人が叫んだ。
「まあ落ち着いてください。こちらが、『姫』でございます。P・ゲームが何の略でしたかお忘れですか?」
「プリンセス・ゲーム……」
「左様でございます。あなたたちは敵を倒し終えたので、これから姫を救いに行くのです」執事は続けた。「一度外に出ましょう。姫様は地下で眠られております。」
そう言ってユニと諸人は執事に案内され、裏口に通され、樹木の生い茂る場所に出た。勇者が殺された場所というのも、おそらくこの辺りなのだろう。執事が土を払うと、そこから鉄の蓋が現れた。
「この下です」
執事は蓋を開けた。そこには仄暗い階段が続いていた。
「このペンライトで足元を照らしますので、お気をつけください」
そう言って、胸元からペンライトを取り出した。三人は階段を降りて、最深部の壁の突き当り、左側のドアの鍵を執事は開け、中に入ると、鉄筋コンクリートでできた部屋が大きく広がっていた。そして大きなガラス張りの部屋の中に、先ほどの女性がいた。執事は、
「お姫様をお助けします。しゃべれる状態になるまで、そこに腰かけて待っていてください。」
二人は用意されていた二脚のパイプ椅子にそれぞれ座り、じっと待った。
女性の拘束具が解かれ、執事は抱きかかえてソファに運び、解毒剤を注射した。彼女は二人の前のソファに横たわった。だらりと横になり、口からは涎を垂らしていた。
スチール製のテーブルが三人の間に用意され、そこに執事は缶コーヒーを並べた。
「お姫様――沢城夏帆お嬢様は、あの部屋で毒薬を体内に注入されていて、一六八時間――七日間経てば致死量に達する装置に身を預けていたのです。」
「なんでそんな酷いことを……」
諸人が嘆き混じりに聞く。
とここで、沢城、という苗字に聞き覚えがあった。
「沢城夏帆は、勇者――沢城祥平の妹なんですか」
「左様でございます」
これは一体どういうことなのだろう。
ユニと諸人が黙っていると、突如その女性――沢城夏帆が硬直したからだを震わせながらゆっくり起き上がり、こう口にした。
「助けて……くれて……ありがとう……勇者様」
うっすら笑みを浮かべて、こう言った。
「……ようこそ、P・ゲームへ」
諸人は、この瞬間、今までで一番恐怖していた。
P・ゲームに続きます。A・ゲームではカスみたいなトリックでしたが、P・ゲームはどうなるのか……お楽しみに。




