第9話 いざ、漆黒の塔へ!
翌朝、俺たちはサラに乗って出発した。ダチョウ一羽に三人は多いんじゃないかと思ったが、サラは案外パワフルで、まったく問題なく駆けてくれた。
「クワァアアッ!」
風を切って走るサラ。後ろからは、アイリーンとアメリアが折り重なってしがみついている。
むにゅむにゅ……
ええと、これは、ええと。背中には柔らかい何かが押し付けられているわけで、平静を保つのに、想像力スキルをフル稼働させる必要があった。
「タクヤ、なんか緊張してません?」
「な、なんでもない! 走りに集中してるだけだ!」
「ふふ、それは結構ですわ」
アイリーンが俺の耳元でささやく。あったかい息が首筋にかかって、ぞくぞくする。
「ちょっとアイリーン様、誘惑しないでください!」
「あら、誘惑じゃないですわよ、ただ単に近いだけ」
「いやいや、近いのが問題なんですって!」
俺はサラのスピードを、なるべく速くしてもらうように頼んだ。少しでも風の音で、二人の声がかき消されるように。
半日ほど走り続け、俺たちは森を抜けた。目の前に広がるのは、荒れ果てた大地。所々から黒い瘴気が立ち上り、遠くにそびえるのは――漆黒の塔。
「あれが……アルテミスの居城」
アメリアが、低い声でつぶやく。
「うわー、めっちゃ禍々しいですわね!」
アイリーンが、能天気に手を叩く。
「アイリーン様、もう少し緊張感持って……」
「あら、女神の使いは緊張しないんですよ」
知らなかった。
俺は、サラから降りて、塔を見上げる。高さは……どれくらいだろう、20階建てくらいか? 黒い石で組まれた塔は、確かに魔王の居城という雰囲気だった。
「ねえタクヤ、作戦は?」
アメリアが、剣の柄に手をかけながら聞く。俺は敵の城を落とすイメージを思い描く。今こそ想像力を活かす時だ!
俺は目を閉じてしばし熟考したのち、正面をピシッと指差して毅然と話す。
「……この正面に、城への入り口が見える。そこから中に入るぞ!」
「えっ……それって……」
「そう、正面突破だ!」
「それ……めっちゃ普通じゃない!」
アメリアが半目で俺に突っ込みを入れる。
「アメリアちゃん、いいんですよ。タクヤ殿には最強スキルがあるんですから!」
アイリーンは俺のフォローに回る。彼女も面倒な事は考えたくないタイプだな。
そうして、特に策もないまま、俺たちは塔の入り口まで歩み寄る。
◇◇◇◇
塔の入り口に近づいた、その瞬間――
ズシン、ズシン、と地響きと共に、入り口から巨大な何かが姿を現した。
身長2メートルはあろうかという、筋肉ムキムキの女戦士。手には、自分の身長ほどある大斧。額には角が二本。露出度の高い装備……というか、ほぼ装備をしていない。胸元は、革のベルトでぎりぎり隠れている程度。
「な、なんですか、あの方……」
アイリーンが、ぽかんと口を開ける。
「……アルテミスの幹部の一人、ベルセルカー!」
アメリアが叫ぶ。
「目撃情報はあったけど、まさかここに……」
「貴様らかぁああ! 我が主の塔に近づく愚か者はぁああ!」
ベルセルカーは、咆哮を上げて大斧を構える。




