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第88話 静かなる終幕

◇◇◇◇


 アルテミスが、本をぱたんと閉じる。そして、その古びた本を、胸にしっかりと抱きしめる。しばらく、彼は無言だったが……やがて、その唇がわずかに動いた。

 

「……でも、タクヤ殿」

 彼の声が、涙で震えた。

 

「お前の、晩年の本は」

 アルテミスの白い頬に、涙が一筋、伝った。

 

「最高傑作だったよ」

 

 その一言が、桜の花びらの舞う空気の中に、深く響いた。

 アイリーンも、ふっと笑った。

 

「私も、そう思いますわぁ」

 

 ベルが、震える両手で、その古い本をアルテミスから受け取った。


「アルテミス様、アイリーン様」

「うむ」

「あらん」

「父の物語、確かに、受け取りました」

「うむ」

 

 アルテミスが、目を細めて、深く、深く頷いた。

 彼の白い瞳の奥に、遠い昔の、北の漆黒の塔での夜の記憶が、優しく蘇っていた。


 その時、リリィが、ぱたぱたと駆け寄ってきた。彼女も、涙をこぼしながら、兄の手の中の古い本を、そっと覗き込んだ。

「お兄ちゃん、それ、お父さんの……?」

「うん」

「大事にしなきゃね」

「絶対」

 

 アルテミスとアイリーンが、二人の傍で、しずかに微笑んでいた。

「ベルくん、リリィちゃん」

 アイリーンが、優しくささやいた。

「あなた達のお父さんとお母さんは、私たちにとって、大切な、大切なお友達でしたの」

「その本、大切にしてあげてね」

「はい!」

 ベルとリリィが、揃って頷いた。

 

◇◇◇◇


 葬儀の広場を、桜の花びらが、静かに覆っていく。

 

 東タクヤの、長い、長い物語は、ここで幕を下ろした。

 

 「誰かに、届け」

 という彼の遺言のとおり、彼の物語は——これから先も、時を超えて届き続けていく。

 

 春の光が、優しく、王宮中央広場を包んでいる。遠くのジャガイモ畑の緑が、王様の遺志を継いで、青々と風に揺れている。空の高い所で、若き日のタクヤとアメリアが、静かに微笑んでいるように見えた。

 

 「またな、皆」

 

 若き日のタクヤの声が、風に乗って、はっきりと聞こえた気がする。

 物語の、最後のページが、ゆっくりと……閉じられていった。


 

 最強スキル「イマジナリー」で異世界無双!……のはずがパンツとお地蔵さんしか召喚できません

 

 完


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

完結までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました!

いいね、コメント、レビューなどは……今作が一番多かったかも知れません。とても励みになりました。

また、Xでの告知では、多くの方にリアクション、RT頂きました。ここまで走れたのは、皆様のおかげです。


次回作は書き始めていますが、……投稿サイトでの公開はしばらくお休みとなります。過去作では、進んでるプロジェクトがあるので、世に出た時には告知いたします。これからも応援宜しくお願いします!


さくらまりお


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