滾るぜ
「さて、と。
俺は、……数が多いだけか」
クリトは亜死族の群れを見渡す。
「まぁ、食い甲斐がありそうなのは、あそこら程度か。
面倒だが」
言葉とは、裏腹にクリトの口角は上がっている。クリトは切り札を切る。チエが「蒼いの」「紅いの」と呼んでいた、あの二挺だ。
「……来い!『万理』『万象』!」
クリトの右手に蒼い、左手には紅い銃が現れる。
「……滾るぜ」
クリトは左足を下げ、両手を正面でクロスした、独特のポーズをキメる。
「ド派手に行こうか!」
〈そうよね。やっぱりそれがいいわよね!〉
「は?」
数多の魔物の頭上にぴったりと狙いすましたかのように、魔法陣が浮かび上がる。
〈たぁまや〜!
って、どういう意味なのかしら?クリト、知ってる?〉
直後、魔法陣から光の柱が立ち上がる。弱きモノからは、細く。強きモノからは太く。それらは、ちょうど見上げる程度まで登ると、弾けてキラキラとした残影を残し散って行く。
急激な魔力喪失に耐えながら、クリトは胸元の魔道具に手を伸ばす。
「なぁ、チセ。どういうことだ?」
〈あらあら。おねえさん、頑張ったのよ?ド派手に、って言ったじゃない?でも時間はかけられないし。やっぱりエフェクト足りなかったかしら?大丈夫。調整はしたわよ?やっぱり、トーマさんを錬成するんでしょう?ちゃぁんと十分な量は回収してるわ〉
「誤魔化すなよ」
〈それ、チエが赤いの、とか、青いのーとか、呼んでた奴よね。やっぱりクリトが使うのね。万能の魔女の象徴とも言える汎用兵器だもの。やっぱり使わないと勿体無いものね。それにしても、アビスファングとか、ノクトイーターとか、色々迷ってたみたいだけど、命名の決め手って何かしら?〉
「……」
〈……〉
「…………本人の希望だ」
〈あれ?なんか、怒ってる?ごめんなさいね。急に魔力使っちゃったことかな?
でも。ほら、この間、必要なら俺を使えって言ってくれてたでしょ?やっぱり今だと思ったのよね。ほら、クリトはポーションで回復できるし。それに。
……やっぱり、あなたはもう無理出来ないもの。だから、過剰演算でも、少しクリトの魔力を借りれれば、ね?やっぱり間に合わせたいじゃない?〉
はぁ、と、ため息を吐きながら万理と万象を送還する。
「……お前のメンテが一番手間かかるんだよ。
……心配させんな」
〈……大丈夫。あなたがいるもの〉
夜の静寂を乱しているのは、残り二箇所。
サナをチラリとみてから、ユーナに向かい走り出す。クリトの瞳は、既に次の戦闘を見据えている。
〈……滾るぜ。ふふ〉
「ぶっ壊すぞ?!」




