ヘマ
「我ながらキザな事しちまったもんだぜ。」
錬太郎は路地裏の道を歩いていた。そこには先程通った時に串焼きをやった物乞い達が数人がおり、また近付いて来た。
「旦那~、何か恵んで下さいよ。頼んますよ~」
「あ゛?人がせっかく良い気分に浸ってるのによ・・うん!?」
見ると、物乞い達の顔は誰かに殴られたようで、顔がアザだらけの物や、腫れ上がっている者だらけである。
「おい!お前らどうしたんだよ!!さっき串焼きやった時は、そんな顔してなかっただろうが!!」
「うん?さっき・・」
物乞いの一人が、錬太郎の顔をまじまじと見つめる。
「あっ!あんたはちょっと前に串焼きくれた人じゃねぇか?」
すると、物乞い達は皆で合図するように目配せした。
「だから、そう言ってるだろが!それで、何があった・んだ?・・おい!お前ら止めろ!!」
次の瞬間、物乞い達は一斉に錬太郎に掴み掛かった。錬太郎は仕方なく、腰に装備していた銅製のショートソードに手を掛けたが、物乞い達は必死になってそれを抜かせないようにする。錬太郎はやむを得なく、物乞いの一人の股間を蹴り上げて対抗したが、数の力でねじ伏せられ、その場に完全に押さえ込まれ身動きが取れなくなった。股間を蹴られた物乞いが錬太郎に向かってぶち切れた。そして、怒りのまま、錬太郎の顔を蹴り上げた。
「ぐおぉ~・・このくそが!!いきなり襲って来やがって・・なんなんだ!てめえらはよ!!」
その拍子に錬太郎の目に泥が入った。開けようと思っても思うように目が開かない。そんな錬太郎に向かって物乞い達は自分達がなぜケガをしているのか、その事情を話し出した。
それは錬太郎が住宅の壁に怒りをぶつけた際、適当な言い訳で頭にあったこの物乞い達の事を引合いに出した事が切っ掛けで、この物乞い達があの家主にやりたい放題に暴力を振るわれたと言う物であった。それを聞いた錬太郎は咄嗟にその事実を否定した。
「嘘だ!俺はそんな事言ってないぞ!!」
「はぁ?寝言は寝てから言えよ!この野郎!!」
「そうだ!アイツはな、修道服を来た男がそう言ってたって言ってたんだよ!!この街で修道服来た男なんて見たのは久しぶりだし、今日見たのはてめえ一人だけなんだよ!!」
「いや・・でも、どこに証拠があるんだ?俺がその修道服の男って言う証拠が?」
「はぁ??てめえはさっき自分で串焼きを俺達にくれたって言っただろうがよ!!」
「・・うん。言った。」
「それが証拠だろうがよ!!」
「だから!!なんでそれが証拠になるんだよ!!俺は確かにお前達に串焼きやった修道服着てた奴だよ!・・でも、なんで他に修道服着た男がいないと言い切れる?そして、そいつが同一人物じゃない可能性もあるし、ましてや、お前らをやったあのゴツい男が憂さ晴らしの為に「修道服着た男がそう言ってたから間違いない、修道院の奴が嘘言う訳ない」ってお前達を殴りに来ただけじゃねぇのか?違うか??」
「おい!どうするよ?」
「あ゛~分かんねぇよ!!」
「でも、コイツの言ってる事もっとも臭くねぇか?」
錬太郎の説明を聞き、物乞い達は自分達が勘違いして、別人に対して復讐しようとしているんじゃないかと疑心暗鬼になり始めている。
(よし!あと一押しだ!!)
「お前らにわざわざ施しをして上げた人に、暴力で施し返すのが、お前らの道理なのか??それは大したもんだ!!そんなにやりたいなら好きにやれや!!」
すると、物乞いの中で一人黙り込んでいた奴が口を開いた。
「ちょっとお前に聞きたい事がある。良いか?」
「なんだ?」
「お前はなんで・・俺達が暴力振るわれた男の容姿が〔ゴツい〕体格をしている事を知っていたんだ?」
「えっ?」
「だって俺達は事情こそは伝えたが、その事をした相手の特徴については一切喋ってないはずだぞ?そうだろ?みんな?」
「・・おぉ!!確かにそうだな!!」
「流石サムソン!!」
「危うく騙される所だったぜ!!」
「おい!それは言葉のあやでよ!!」
「はぁ?寝言は寝てから言え!!この嘘吐き野郎が!!・・みんなやっちまえ!!」
錬太郎は容赦なくボコボコにされ、気を失った。その後身ぐるみを剥がされ、街の外に容赦なく放り投げられた。
物乞い達は錬太郎の持っていたお金は均等に分け、錬太郎の服と銅製のショートソードはサムソンが独占する事になったようである。サムソンは早速錬太郎の装備と衣服に着替えると自分の着ていたボロボロの衣服を錬太郎の方に放り投げた。
「あぁ~なんか悪いねぇ。逆に儲かってしまったわ。ありがとうね!う・そ・つ・き・さん!!あっはははは・・」
サムソンは高笑いをしながら、街へと消えて行った。
しばらくすると、雨がザアザアと降って来た。その冷たい雫が錬太郎の体を刺激する。
「う・・うん?・・くそっ・・詰めが甘くて、また振り出しかよ・・でもやり直せるだけまだマシか・・」
錬太郎は、サムソンが放り投げていったずぶ濡れのボロボロのボロ切れ状態の衣服をなんとか羽織ると、とりあえず街を離れようと行く当てのない旅に出るのであった。
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