第十四章 第四幕 お調子者の武勇伝
俺たちの前に現れた西遊記の主人公、孫悟空。彼は俺の弟子となり、旅を共にすることになった。
「兄貴。ここら辺の家を巡って、宿を取ってきます」
「悟空。今晩はここで野宿する」
「流石は兄貴。常に修行なんですね!」
俺たちが野宿を行う理由。トロルドなど異界の魔物との戦闘に巻き込まない事。最近は少ないが、常に危険はある。ただし、現在は・・・孫悟空。こいつの存在だ。どんな行動を起すか読めない、そして新たな異界の介入がいつ現れてもおかしくないからだ。
「兄貴。用があったらなんでも言ってください」
「わかった。では、周りの警戒をしてきてくれ。山側だけでいい。後は觔斗雲は使わない事。目立つのは困る。そして見つけても闘わない事。俺たちに報告して、許可を得てから闘うんだ」
「はい、わかりました。行ってきます」
孫悟空は、正に猿の様に山へ消えていく。ある意味、馬鹿正直に従ってくれるのだから、その点はありがたい。
「上手く追い払ったじゃない」
「まぁ、あいつが素直で助かったよ」
「単純って言わないの?」
「蓉子さん。多分、茂玄さんは警戒していると思います」
「俺としては、久し振りに頭を使ったよ。孫悟空の能力が解らない。だから、聴こえている可能性もあるからな」
「それで、葵衣さん。明日からは、どうされますか?」
「うーん。私たちだけなら、平野部を旅人として歩けるけど・・・」
「あの化け猿を連れていると目立つ。と?」
「そうです。ただ、いざとなれば悟空さんは小さくなれると思いますが」
「そもそも論になるけどさ、萩に行くのは中止した方が良くないか?蓉子たちには申し訳ないが」
「あたしは兄様に従います」
「えっと。私も茂玄さんに賛成です」
「正直、あの猿を連れて行くのは無粋よね」
「じゃあ、次の行動をどうするかだ。蓉子は考えがあったりするか?」
「いずれにせよ、人里は避けたいわね。あの役立たずは、何をやっているのかしら・・・」
蓉子のいう役立たずとは、豊穣の神豊受気媛、北欧神話の戦乙女オルルーンだ。
「良い策が見つかるまで、ここに駐留でいいか?」
「それが無難でしょ。あの猿のお陰で、守りはそこそこだろうし」
「蓉子さ、何か言い訳あるか?」
こういったアイデアは蓉子が適している。葵衣は人を誑かすのは苦手だ。
「そうね・・・無駄足踏ませるために、この美濃に大妖怪が居るっているのは?居たらいたで潰せばいいし、いなければ徒労になるのはあの猿だし」
蓉子らしい。
こんな感じで、四日が経過した。暇を潰すために順番で町に行く。葵衣と朱莉が二人で、蓉子は一人で、と順番に行くだ。俺は孫悟空の監視役だ。孫悟空には物資補給という名目にしてある。
蓉子の策は上手く功をなし、孫悟空はやっきになって大妖怪を探す。そして寝ずの番も行うので、俺と葵衣も十分に休めた。流石に罪悪感もあるが・・・
「悟空。今日もありがとうな」
俺は常糧袋から桃を三個取り出して渡す。
「いえ、兄貴のお役に立てず。面目次第もありません」
「あのさ、悟空。お前は桃だけでいいのか?他に食べたいものとか?」
「そうですね・・・本心で言えば酒を呑みたいですが」
「それは、やめておきな」
「はい」
この情報は蓉子に知らせるべきか。まぁ蓉子の事だから、嫌味で呑むことはしないだろう。
「なぁ悟空。お前の居た世界と、今いる世界は違うと思うが、どうだ?」
「流石は兄貴。俺も妖怪を探していたのですが、この森の動物や、人の生活が違うと思いました。永い間、地を離れていたせいかと思っていたんですが・・・」
「なるほどね。それで悟空は、今まで何をしてきたんだ?」
「聞いてください!俺の武勇伝を」
孫悟空は、自分の生い立ちから話し始めた。
花果山の岩から石猿として誕生。山にいた猿を束ねて王となった。数百年後に不老不死の話を聞き、須菩提祖師という仙人を探して、弟子入り不老不死の術、変化の術、觔斗雲と孫悟空の名を得る。
理由は言わなかったが破門になり、花果山に戻るが妖魔に占領。それを倒して取り戻す。東海を含む四海の竜宮城。それぞれから、武具を強引に譲り受けた。そして、戻ってきたら俺たちに出会ったという。
つまりは、まだ三蔵法師と出会っていない。しかし、技はすべて修得しているようだ。
「じゃあ悟空。これから、また頼むな」
「はい兄貴。俺のメンツにかけて探し出します」
孫悟空は再び飛び出していく。
「何か。何か、きっかけさえ見つかれば」
「悟空さんと同じ、異界から来ている者が解ればいいのですが・・・」
「ただ、羿さんの時は一柱でしたよね?」
「そうなんだよな・・・」
「兄貴ー。怪しい物を見つけました!」
孫悟空が嬉々と戻ってくる。嘘から出た真なのか?
「それで、何を見つけたんだ?」
「上手く説明できないんですが、とりあえず見に行きませんか?」
「わかった。葵衣、朱莉、蓉子行こう」
俺たちは、孫悟空が見つけたという何かを見に行くことにした。




