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第二章 第十四幕 葵衣の反攻

 茂玄(しげはる)の仕えていた、笠原氏の志賀城は陥落した。

 城主笠原様、援軍の高田様も討死。奥方様も恩賞として与えられる始末であった。


 城にて捕虜になった男たちは鉱夫として、女子どもは奴隷として奴隷商に買われていく。俺としては見るに堪えられない惨状であった。



 流石の蓉子(ようこ)も目を逸らしていた。朱莉(あかり)も両手で顔を覆う。

 ただ一人、葵衣(あおい)だけは薙刀を片手に仁王立ちで城を見下ろす。しかし、その顔には怒りが満ちていた。

 「同じ人間なのにね・・・」

 人権のある国では信じられない光景なんだと思う。



「みんな、これから甲州勢に一泡吹かせに行くわよ」

葵衣が俺たちを見て、強く言い放った。誰しもが、顔色が変わる。


 奴隷商は二百人ばかりの縄で繋がれた商品を運んでいる。一応、護衛の武士もついてはいた。

 武田の主力は、後処理に追われて兵は動かせずにいるようだ。


 二百人の繋がれた人々の行列は足が遅い。

 その間に、俺たちは山道を急ぎ、志賀城から南に十五キロ程のところにある海瀬村(かいせむら)付近の山に潜む。

 一行はあと二時間ほどで到着するだろう。



 息を整えたところで、葵衣が作戦を話してきた。

 海瀬村の入り口付近に着く頃はもう夕方。

 奴隷商や護衛の侍も疲れている。そこを急襲して、みんなを助ける。

「蓉子さんと朱莉ちゃんには思いっきり暴れてもらって混乱させてもらえるかしら。茂玄さんは捕まった人たちを先導して西側の山へ逃げ込んで。殿(しんがり)は私が務める」

「蓉子さんには続けてで悪いけど、山全体に結界を張ってもらえないかしら?」


「人使いが荒いわね」

と言いつつも、蓉子は快く返事をしてくれた。


「朱莉ちゃんも、無理だけはしないでね」

葵衣がお願いする。




 約二時間後、奴隷商一行が意気揚々とやってきた。

 ほら、速く歩けなどの惨たらしい言葉も聞こえる。


「作戦開始」

 葵衣の言葉で油断していた行列に奇襲をかけた。

 蓉子の精霊魔法が派手に縦横無尽に飛び交い、人々が混乱する。

 朱莉は護衛や商人に糸を巻き付け、雷獣で邪魔をする。

 俺は、奴隷にされた人たちを山に案内する。幸いにも縄で繋がれていたので、迷子も出さずに誘導できた。一部混乱はあったが、葵衣のはったりで神の助けと喜んでついて来てくれた。



 捕虜にされた人たちを山中に隠し、すっきりとした顔をした蓉子が結界を発動させ、霧が立ち込める。朱莉も一応と言って、五芒の陣を張ってくれた。お互いのプライドもあるのだろう。

 捕虜にされた人たちは、生きている事、無事だった家族がいることを素直に喜んでいた。



 ひとまずの奪還作戦は無事に終了する。

 家族が心配ではあったが、葵衣たちがまだ緊張を解いていないので後回しにする。



「朱莉ちゃん、本当にいいのね?」

 葵衣が心配して聞いている。

「大丈夫、やってみせる。ご先祖様から伝えられたこの力を持って」

「あたしの方は、持って二日よ」


 今回も、俺は蚊帳の外か?

 蓉子を護衛と結界維持に残し、俺、葵衣、朱莉は諏訪湖に向かう。


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