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23 後悔



あれから2日が経過した。魔の月曜日を耐えきり、放課後は図書室で図書委員の仕事と勉強会。それが終わると、そのまま市民プールに向かう生活。


そのため水着は、毎日学校に持って行っていたのだが、カバンに入れていたのが海知にバレて、


「は?なんでお前、水着持ってんだよ。気が早すぎw」


など、散々な誤解をされてその時はかなり恥ずかしかった。


1日目の水泳のレッスンは、ビート板を使ってバタ足で泳ぐ練習。昨日でかなり上達していたけど、いきなりクロールやビート板なしで泳ぐのは難易度が高いと思ったので1日目は、ビート板を使ってなるべく長い距離を泳ぐ練習を重点的に行った。


そのため、未来さんはその日だけでビート板バタ足25メートルをクリアできた。

あの水を怖がっている頃から比べたら凄い上達であった。


2日目は、ビート板を使って50メートル泳ぐ練習。これは、ただひたすら練習するだけだった。俺も隣で声をかけながら、進んで一緒に練習した。

未来さんは無事に50メートルを泳ぎきることができた。


あとは、ビート板を外してクロールを教えればいい話。最初はゴールなんてあるのか?と思っていたが、もしかしたらゴールできるかもしれない。

これも全て頑張ってくれる未来さんのお陰であった。





3日目、つまり今日、この日はこの季節では珍しく朝から雨であった。傘をさして学校に向かい、授業を受けて、放課後に図書室でいつもの勉強会やら図書委員の仕事をしたのち、市民プールに向かった。

外は、曇っていたが奇跡的に雨は降ってなく傘をさすことなく市民プールにたどり着いた。


今日はビート板を外した泳ぎの練習。

少し未来さんには難易度が高いかもしれないが取り敢えずやってみた。

未来さんはビート板がないため、水に入るのも少し怖がっていたが、俺がしっかりと未来さんを離さなかったので、割と早く水に入ることができた。


次に行うことは、壁を蹴って手をピーンと伸ばして何もせずに水の中を進んでいく練習。これは、どれだけ壁を蹴れて綺麗な姿勢で進めるかという、基礎のところだがここがなかなか上手くいかなかった。

未来さんは、手をピーンと伸ばしながら浮き続けることが怖いらしい。確かにビート板は使っていないから無理もない。


そこで、俺は「やっぱりビート板ありでやってみますか?」と言うと彼女は首を横に振った。


「私、ビート板なしで頑張ります!」


彼女の熱意がそのまま伝わってきたのでビート板なしで練習を続けたがどうしても上手くいかなった。


「やはり、長い時間そのままだと沈んでしまうという恐怖があります……」


彼女は悔しそうにそう言った。


なるほど、未来さんは、やっぱりそれが怖いのか……

なら、それにならないようにする方法は………


そうだ……これなら……


「あの、未来さん。俺が未来さんの身体を支えますからそれでやってみませんか?」


「えっ……」


「あっ……」


彼女の反応を見た瞬間にしまったと思った。


そうだよな……未来さんはそういうのが一番嫌い……

これは、やっぱりやめよう……


「すみません……これは、やめましょ――」


「いいですよ?」


「え?」


「名案だと思います。是非お願いします!」


「でも、いいんですか?」


「…………はい、……わたし………上手くなりたいですから!」


少し、俯いて彼女がそう言った。彼女は自分の身体が触られるのが嫌だけどそれよりも水泳が上手くなりたいんだ。そうに違いない!

俺がちゃんとしなきゃ!


「わかりました」


冷静を保って、俺はそう言った。そして、未来さんが壁の近くまで行って、


「では、行きます!」


と言って、空気をいっぱい吸い込んで水に潜った。そして手をピーンと伸ばして壁を蹴る。これで7メートルいけば合格点。俺は未来さんの身体を支えて前に押し出した。


すると、先ほどよりも距離がのびて7メートルに到達した。これは未来さんも喜ぶに違いない。


そう思って、水から出た未来さんに教えた。


「未来さん!凄いです!到達しましたね!」


これで喜んでくれる。


そう思っていたのだが、


「凪くん。どうしてですか?」


彼女から返ってきたのは、疑問だった。


「え?ど、とういうことですか?」


「凪くん、私のことしっかり押してくれませんでした……」


その言葉を聞いた瞬間、俺はドキリとした。自分も考えないようにしていたことを未来さん本人からそう言われて。


「別にそんなことありませんよ」


「嘘です!とってもソフトタッチでした。凪くん、私に触れるのがきらいなんですか?」


俺が誤魔化してそういうと、かなり確信のつく疑問が返ってきた。


いやな、わけではない。

全然そんなことはないのだけど………なぜか、意識してしまうんだ………


けど、そんなことは言えない。


「別に嫌じゃなないですよ」


だからこれしか言えなかった。


「嫌じゃないって…………そうですか……凪くんは、私に仕方なく触れているんですね…」


「いや、そんなつもりは……これは言葉の綾というか……」


「言葉の綾というなら、しっかり説明してください!!」


「未来さん、なんで怒ってるんですか?」


「おおお、怒ってないです!!」


「いやでも……」


「そうやって茶化して!!もういいです!!凪くんの力を得ずともこれを一人でやってみせますから!」


そう言うと、彼女はズカズカとまた壁の方向に行って一人で練習をし始める。


これは明らか怒っている。そして、怒ったら理由もわかる。完全に俺が悪い。彼女を避けていると思われて当然だ。俺は真剣な未来さんにひどいことをしてしまった。


当然、後悔した。今すぐ謝らなければと思い、未来さんに近づくと未来さんは逃げてしまう。


その後も結局、口を聞いてくれなかった。


ああ、俺がちゃんと言っておけば……よかった。


素直に、


――ドキドキして緊張してたんだって……

本来の水泳のやり方と異なるところがあるかもしれませんが、凪くんの自己流なので目をつぶって頂けると嬉しいです。


評価、ブクマ、よろしくお願いします!

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