22 市民プールの帰り道
遅くなって申し訳ありませんでした。
「凪くん。今日は本当にありがとうございました」
すっかり日は沈み、辺りが真っ暗になった帰り道で未来さんが隣に歩いてる俺に向かってお礼を言った。
「いえいえ、俺も楽しかったです。未来さんが、頑張り屋で教えていてとっても楽しかったです」
「ほ、ほんとですか?」
「はい。楽しいです」
「そ、そうですか」
辺りは暗く所々に街灯があるだけ、ここで彼女の表情を確認するのは、難しいのだが彼女の声が少し跳ね上がった。
俺が言った言葉が影響しているのだろうか?
顔も確認したかったがちょうど街灯を過ぎたところで、それは確認できなかった。
「それで、本題に入るんですけど、未来さんは具体的にどこまで泳げるようになりたいんですか?」
教えるとは言ったが具体的にどこまで泳げるようになりたいかは聞いていなかった。
未来さんはどこまで泳げるようになりたいんだろう。それによって練習メニューも色々と考えなければならないから是非どのくらいか聞いておきたかった。
「そうですね………他の人と同じくらい………平均レベルにはなりたいです……」
「平均レベルですかぁ……」
高校生だとまず、クロール50メートルはできた方がいいのではないのか。去年はそうであった。他の泳ぎができなくても取り敢えずクロール出来ればなんとかなる。
だけど、クロール50メートルか………
俺がそんなことを考えながら歩いていると、、、
「やはり、わたしには無理でしょうか……」
隣で歩いていた彼女が少し声を落としてしょんぼりしながらそう言う。
「いや!未来さんは、ちゃんとやればできる人です!」
「そ、そうですか?」
「そうです!今日だってすごい成長でした。この調子で頑張れば………」
「私、頑張りたいです!だけど……どうすればいいですか?」
「うーん。そうですね……やっぱり継続して泳ぐことが大切だと思います……」
「継続して泳ぐ………………」
未来さんは、そう言葉を発しながらしばらく考え込んだ後、何か結論を出したのか、一回頷いて俺の方を見つめてきた。
「あ、あの…………な、凪くん。よろしければ………本当によろしければでいいんですが………明日からも水泳のレッスンをしてくれませんか?」
「あ、明日もですか!?」
俺は驚いた。まさか、彼女が本気でそう言ってくるとは思ってなくて、、、
「だ、ダメですか?」
俺が驚愕していると、その反応を見た未来さんが少し声を落として残念そうにそう言った。
「いや、別に!全然大丈夫ですけど……どうしてそんなに本気になれるんですか?」
「せっかく、レッスンしてもらっているんです。私は中途半端に終わらせたくありません!」
彼女は力強くそう言った。
「ですから、迷惑を承知でお願いします。凪くん。私に水泳を教えてください!」
二人同時に街灯の下で立ち止まり、未来さんが深く頭を下げる。彼女の努力する姿。それは今日一番近くで俺が見てきた。だから、断る選択肢なんて、最初からなかった。
「いいですよ……むしろ俺でいいなら……」
「はい!ありがとうございます!私は、凪くんがいいんです!!」
「は、はい………」
何故か彼女のこの言葉が耳に入った瞬間に胸の鼓動が止まらない。一体、今日はどうしたんだ。こんなことは………今までなかったのに……
彼女の姿、声を聴くと、何故か撃ち抜かれたような感じがする。
このよくわからない感情はなんなんだ。
俺にはこれがなんだかわからなかった。
結局、俺は未来さんの申し入れを受けて、明日からまた水泳のレッスンをすることになった。
明日も更新致します。
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