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【 Ep.2-028 その灯りに別れを告げ 】

総合評価が250を越えました。

ブックマークや評価等々ありがとうございます。

次回更新分が第二章のラストパートになると思います。

予定では12月22日の投下予定ですが、若干ずれ込むかもしれません。

※眠い中で投稿したので手直しする箇所が出てくるかもしれません。



 ――6日目の朝がやってきた。


 村の中は大分落ち着いてきた雰囲気となり、元プレイヤー達も転移したんじゃないかとどこかで感じながらも、運営による事故対応からの救出を心の支えにして日々の生活に向き合っている。


 農地開拓の依頼を受けた冒険者達はそれぞれのグループで開拓村南部の開墾地へ向かい、討伐依頼を受けた冒険者達はパーティを組んで依頼の対象がいるであろう村の出口へと向かう。

 わずか数日しか経っていないにもかかわらず、この開拓村を中心とした生活に慣れ始めている光景がそこかしこで窓越しに見る事が出来た。



「お姉ちゃん達この村出ていくの……?」


 日が暮れるまでには村を発つ予定なので、部屋を綺麗に片して昼前に宿の主人にチェックアウトを告げるとそれを聞いていたベスちゃんに袖をギュっと掴まれ上目遣いで尋ねられる。

 ベスちゃん自身のかわいさもあって精神的ダメージはクリティカルヒットに近いダメージを出しているが、それは顔に出さないというのが大人の貫禄というものだろう。


 これまで多くの冒険者達が利用したであろうこの宿で、ベスちゃんがセラにここまで執着する理由は簡単だ。

 同じ獣人族(アニール)であり女の子である事。そして身長も低く自分とそこまで大きく変わらないのに、それでいて自分よりも強く、この村では有名なファミーリアのマスターであると言う点。

 同年代の子供達の中にも、これまでこの宿を利用した冒険者達の中にも居なかった親近感を覚えつつも憧れる相手がセラだったのだ。

 どこか別の世界の人種だと思っていた冒険者達の中に、自分を重ねて見たくなる夢物語の様な存在と出会ってしまったベスちゃんがセラに執着してしまうのは、この時期の子供としては当たり前の反応だと言えよう。


「うん、今までありがとうねベスちゃん。」

「随分と嬢ちゃん達に懐いちまったなぁ。ほらベス、お客様に迷惑を掛けちゃぁいかん。」

「またいつか戻ってきてね?……グスッ……。」

「うん、いつかまたこの村に戻ってくるよ。だからベスちゃんもその時まで待ってて。約束……ね?」


 そう言って小指を立ててベスちゃんの前に突き出し指切りげんまんをしようとする。だけどベスちゃんはその行為が何であるのか分からないらしく首を傾げる。


「それは?」

「これは指切りげんまんって言ってね、ボクの故郷で約束をする時に行う"まじない"みたいなものなんだ。」

「私も小指を出せばいいの?」

「うん。小指同士をこうやって絡めて……指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ます、指きった!」

「な、なんか怖いね……?」

「それ程強いペナルティを負ってでもする固い約束って事なんだよ?だから、信じて欲しいな。」

「うん、信じる。信じて待ってるね!」


 歌い言葉に若干引いた反応を見せるベスちゃんに、適当な説明をそれらしく云う事でそれを信じたベスちゃんは後ろに見える尻尾をぶんぶんと揺らしてすっかり上機嫌になった。

 そんなベスちゃんの頭に手を置いて宿の主人が声を掛けてくる。


「すまねぇなぁ嬢ちゃん。戻ってきた時にゃあサービスするからよ、それまで達者でな!」

「此方こそお世話になりました。戻ってきた時にはまたこちらに顔を出します。」

「お姉ちゃん、これお弁当。元気でね!!」

「ありがとう、大事に食べるね。――それじゃ、行ってきます。」


 宿の出口で人数分のお弁当を受け取り、一応冒険者ギルドへと向かう。一応は向かう方向に関する依頼がないかは確認しておいて損はない。

 お決まりに近い視線を感じながらも依頼掲示板をじっくり見ていき、幾つか良さそうな依頼を見つけた。


・領都エイブラムの防具屋「ガザンの仕立て屋」への荷物配達

・マルサック村への配達依頼

・下級回復ポーションの素材採集


 上の二つはインベントリに配送物を収納して配達をするだけ。容量には余裕があるので問題なく受注する事が出来た。期限は厳しく設定されているわけではなく、一週間程度で配達できればそれでよいとの事。

 マルサック村とは領都へ向かう道中にあるそれなりの規模の山中の集落であるらしく、これもこれから辿るルート上に位置している村なので都合がいい。

 下級回復ポーションの素材採集は開拓村で受注はしたけども、精算は各冒険者ギルドでできる共通依頼らしいのでこれも都合が良かった。素材そのものは植物学の知識補正があるエルフのリツとクロさんが居るので見つけること自体は楽だろう。

 他にも採集できそうなものは後々の事を考えて採集しながら向かうつもりだ。インベントリをギッチギチにするのも良くはないけど、収納空間を余らせておくのも勿体ない。


「はい、ではこちらの三つの依頼を受注されるという事でよろしいですね?」

「はい、それで手続きお願いします。」


 恐らくカサネさんから話を通しておいたのだろう、最後の受付もリントさんが担当してくれ、目配せで別れを告げてきたところはやっぱりプロだなぁと思う。


「お待たせしました、受付手続きはこれで問題ありません。配達依頼の二件につきましては、配送先からの受領連絡が来てからの評価となりますので、精算処理が若干遅れる事がありますのでその点注意して下さいね。また報酬の受け取りは各地の冒険者ギルドの窓口で可能です。下級回復ポーションの素材の精算は各地の冒険者ギルドの窓口にて可能です。他に何か質問はありますか?」

「いえ、大丈夫です。ありがとう、リントさん。」

「ふふ、どう致しまして。では皆さん、いってらっしゃいませ!」


 リントさんの明るい笑顔と声に見送られ冒険者ギルドを後にし、その足で村の東出口へと向かって出口を出てすぐに見慣れた顔が待っていた。


「よう、お前達は今日出るんだってな?」

「予め伝えておいてほしいわぁ、貴方とはそれなりに付き合いがあったと思っていたのに。」

「ベック、ホイミさん?!二人ともここに居て大丈夫なの?」

「野暮用って言って俺一人だけで抜けてきたから問題ねぇよ。」

「私は今休憩時間中なの。別に常に集団でいるわけじゃないからねぇ。」


 そこに居たのはフロントラインのベックと戦場の看護師(ナイチンゲール)のホイミの二人だった。彼らもまたカサネさんから情報をもらって周りにそうと気づかれずに見送りに来たのだろう。


「態々見送りになんて……なんかごめん。」

「謝るこたぁねえよ。俺達がそうしたいから来たってだけなんだからよ。」

「そうですよ。仮にも同じ"共犯者"仲間でしょぉ。せめて見送りにっていうのは当たり前じゃないかしら?」

「どっちかっていうと、明日の事を考えて出たごめんなんだけど……。まぁ、ボク達はパンドラから託された願いを叶えるって目的もあるけど、何よりもこの世界を仲間達と見て回りたいんだ。プレイ前に画面の隅々まで見て夢想したこの世界を。だから言い方は悪いけど他の一般人の事は二の次なんだよね。ボクが大事にしたいのは共に生きる仲間だから……。――そっちはそのまま残るつもりなの?」

「乗っかっちまった舟だからなぁ。なんだかんだメンバーも増えてきたし、出ていくやつを追うつもりはねぇが、もう少しカサネさんのサポートは必要だろう。俺達は警護メインでの協力だったしな。」

「私の方も似た様な感じね~。ある程度プレイヤーが成長して簡単に死なない程度の腕になるまでは手助けするつもりよぉ。聞いたんでしょ?昨日までの死亡者数。少なくとも私は私の矜持として人を死なせたくないの。だから独り立ちできるまでは見守りたいのよ。」


 二人ともそれぞれ自分達だけじゃなく、明日真実を知るプレイヤー達の事を考えている。その考えは立派だし尊敬できる。恐らく人としてはそれが正しい思考で行動なのだろう。

 一つ間違えば命を落とすこの世界で、ボクが優先するべきは自身と仲間の命だ。同じ境遇だからと、良く知りもしない大多数のプレイヤーを救おうなど分不相応の傲慢な考えだろう。かつては何度か彼らと似た様な事を行動に移したが、結局大多数の人々はそんな行動に感謝もしなければ覚えもしない。あまつさえ文句を言い始めて批判する――そんな経験したからボクはその道を選ばない。

 みんながみんなそう言う奴だけではないのは理解しているが、自己を犠牲にして得られる評価等たかが知れている。口だけ動かす奴が行動した奴に文句を言い、あまつさえ批判するなんてナンセンスだしその権利すらない。予想される不快な思いをするくらいならば、ボクはいくら叩かれ様が切り捨てる。情だけでは生きていけないのだから……。

 ベックとホイミさんの姿勢を批判するつもりは無いけども、ボクはボクの取るべき道を往き、彼らは彼らの生きる道を往く。それでいい。


「何か言いたそうな(つら)してんな?……ま、言いたい事は大体分かるけどよ。集団のトップとしたら多分お前の方が正しいと俺は思うぜ。俺が取ろうとしてる道は半分は俺のワガママだ。性分ってやつだ。だからお前が気に病むことはない。」

「そういう事。私はどちらかって言うと、リアルで慣れきってしまったから……きっとそのあたりの感情が少し壊れているのね。そうだ、シオンさん。」

「は、はい!」

「貴方にこれを。其方のパーティを戦闘面で支えるのは間違いなく貴方よ。これは私からの餞別……と言っても大したものじゃないんだけれど、貴方のこれからの支えになると嬉しいわ。」

「あ、ありがとうございます!」


 そう言ってホイミさんがシオンに手渡したのはハートに赤十字が刻まれたアミュレット。何か特殊な効果が付与されているかまでは判らないけども、同じ回復職をこれまでずっと続けてきたシオンが目標としているホイミさんから贈られたそれは、特殊効果が付与されていなくともシオンにとっては掛け替えのない魔法が掛かった特別なアイテムになるだろう。


「さ、これ以上引き留めて他のやつが来ると面倒だ。いつかまた生きて再開しようぜ。」

「貴方達の旅路がどうか良いものでありますように。また生きて会いましょう。」

「ありがとう二人とも。またいつか、どこかで!」

「じゃあな、ベック。また生きて会おうぜ!」

「ホイミさん、これ大切にします。いつかまた、貴方の隣に立っても見劣らないレベルになって会いに行きます。」


 言葉を交わさない者は頭を下げ、それぞれ思い思いに別れを告げて道を歩き出す。"生きてまた会おう"、この言葉に込められた意味の重さをそれぞれ噛みしめながら村を背にして最初の目標である三つの大岩を目指して足を運んだ。


 

*****



「俺はよ、正直アイツらが羨ましいぜ。」

「……お互い、あちらでは歳を取り過ぎたのかもしれませんねぇ。」


 セラ達天兎が村を出てその背中を見送ったベックは誰に言うでもなく口に出す。だが隣にいたホイミは当然その言葉を聞いており自分自身の想いを彼に続けて語る。


「ッは!言ってろ。……そうだな、あいつらの背中見た時思い出しちまったよ。」

「何をですか?」

「忘れてたんだよ。俺がゲームをやろうと思ったきっかけをさ。」

「聞いても?」

「なんて事はねえ話しさ。今だから言えるが俺はあっちでは六十近い爺だ。若い時夢見てた別世界への憧れを引き摺ったまま齢だけどんどん重ねていって、そんな自分の想いすらどこかへ忘れてきちまってさ……。体調崩して家に籠ってネットしてた時偶々目にしたオンラインゲームを冗談半分に始めたらえらい楽しくてよぉ、気が付けば年齢もバラバラなのに気の合う連中が周りに出来て……そんなやつらと日夜ダンジョンやらボスやら攻略したりするのが楽しみになっていた。あの時間違いなく俺は若い頃の自分になれていた。」


 一度話を切りベックは空を仰ぎ見、深く一息をついて話しを続ける。


「……それでも、始めたばかりの新鮮さは色を失っていき、現実世界と同じく惰性で続けている自分がいた。――多分どこかで気付かれていたんだろうな、そんな俺にゼノフロンティアを紹介した理由はよ。それなのに俺は、こんな世界になっちまってあいつらの背中を見るまで俺を誘ってくれた連中の想いを、俺自身の想いも忘れていた。忘れちまっていた……。だからよぉ、この村の事態収拾にケリが付いたらもう一度ゼロからあいつらと始めてみようと思ったんだ。」

「……。」


 ベックの想いの吐露にホイミも空を仰ぎ見てゆっくり目を閉じる。暫くそうした後、隣にいるベックに向き直り彼女が口を開く。


「――私も似た様な感じです。齢は貴方よりかは少しは若いですけどね。」


 ホイミの発言にベックは目線を彼女に向け腕を組んだまま続きを促す。


「私の場合は、日々の業務の中で心がどんどん擦り減っていき、これではいけないと自身の抑圧の捌け口を作る為にオンラインゲームを始めました。現実世界での患者側のクレームや聞きかじりの情報だけでの医者批判、医療側の横柄な対応や患者を人としてではなく単なる金の詰まった袋としてしか見ていない医師。医師と患者に板挟みにされ職場から姿を消していく看護師。双方の嫌な部分を目にする日々の中、ゲームの世界だけは私の心に安らぎをくれました。」

「それはまた……。噂にゃ聞くがとんでもない環境だったんだな……。」


 ベックの言葉に一度頷き、ホイミは再び口を開く。


「ええ、ドラマの"白い魔塔"なんて可愛いくらいよ。……私も貴方と同じ様に気付けば周りに仲間が集まっていた。回復職(ヒーラー)ギルドだからか看護師や准看護師の子、将来医療機関に就く為に勉強してる子とかも多く在籍していてね、互いに愚痴を言ったり聞いたり……今にしてみれば傷の舐めあいよね。それでも私は癒された。そうやって互いに言葉を交わすだけで壊れていく自分を留める事が出来たの。そんな彼女達に誘われたからこの世界に来る事も決めれた。一緒に歩む事の出来る、誰かの命を救いたいという純粋で高潔な想いを共有する仲間。だから……そう、だから私はこの世界でも救える範囲の人を救いたいのだと思う。」


 普段のふんわりとした話口調が消え真剣に語るホイミの目は村の中へと向けられ、その言葉の重さはベックの心にも深く沁み込んだ。


「……見た目はお互い若いのに、変にあっちでの記憶があるからか固定観念があったのかもしれねぇな。あいつら見て思い知ったよ、もっと純粋に生きていいって事によ。」

「ですね……。生きる世界は変わってしまったけれども、自身に宿るこの想いは何一つ変わらない。なら、あの子達みたいに私達も生きていくべきなのかもしれませんね。」

「ああ、そうだな。」


 そう言ってベックは村へと体を向け、ゆっくりと歩き出す。


「ったく、風邪でもひぃたんじゃねぇかってくらい身体が火照ってやがる。そろそろ戻らねぇとあんたも休憩時間がそろそろ終わりじゃねぇのか?」

「少しの見送りだったはずが、結構時間を取ってしまいましたねぇ。――お互い、頑張りましょうね。」

「フンッ、言われるまでもねぇ。」


 二人は揃って村の中へと消えていく。――この開拓村でやり取りした時間は短くはあったが、その限られた時間の中でセラ達天兎が二人にもたらした影響は決して小さくはない。

 考え方や思想は違えども、それぞれ仮想世界に夢を見た事は共通している。ベックは何よりも仲間を大切に想うセラを見て、ホイミはそんな仲間達と前を向いて進もうとするセラを見て自分達の中に眠っていた何かに再び温かい灯が燈った事を感じた。



 当面の期間この開拓村を支える事となる二大ファミーリアのトップ二人に、そんな大きな力を分け与えたなどとは知らずセラ達の姿は丘の向こう側へとその姿を消したのだった。




*****




 ――ベックとホイミの両名からの見送りを受けた後、スィーダ平原の北縁をなぞる様な薄っすらとした街道を辿り三つの大岩を目指し、道中時折襲い掛かってくるジャイアントロリポリやキラーアント等を倒しながら最初のランドマークを目指した。

 大岩に着くとそこでベスちゃんからもらったお弁当を広げて皆で食べた。インベントリポーチは便利なもので、収納した時の状態を保つので作ってまだ時間の経過していない暖かな食事を口にする事が出来た。

 食事を取りながらこの後のルートを地図を広げて再確認し、その方向を見やると中々に大変そうな山道が渓谷沿いに沿ってはしっているのが目に出来た。陽は既に頂点を通り過ぎ、後一刻も経てば山道という事もあって薄暗くなるだろう。


 食後は直ぐに出発し、渓谷沿いの山道を天兎の面々はいつでも戦闘できるように武器を携えて登って行った。

 山道に入るとそれまでとは出没するモンスターが変わり、フォレストウルフやワイルドボア、稀にクルーエルゴートが襲ってくるようになったがせいぜい三匹程度の群れが出る程度で総勢十一名からなる天兎の前には今夜の食材になるという運命以外なかった。



 ザンッ!ドシュッ!!


「ふぅ……比較的安全なルートとは言えやはりモンスターは出るには出ますね。」


 ドサッと倒れるフォレストウルフの血を拭いながらチグサがこぼす。フォレストウルフの襲撃はこれで三回目だが、その全てを払いのけ素材としてインベントリの中へ放り込まれている。


「まぁでもこの人数だから余裕っちゃ余裕だし問題ねぇっしょ。」

「そーんな事言って気ぃ抜いて怪我してもあたしは治療しないからね?」

「じゃあその時はセラやリツに治してもーらおっ。」

「え?やだよ。」「私もお断りだねー。」

「えぇ?!なんでだよ?」

「しっかりやってた結果怪我したならそりゃ治すけどさ、今の話だと単純にケントが慢心した結果怪我するって話でしょ。そんなの自業自得だよ。」

「そー言う事。」

「マジかよ~……。」

「喋ってないでしっかり歩け。今日は野営するとは言ってもある程度旅程は進めておきたいんだろう?」


 フォレストウルフをそれぞれの素材へと解体し終えたベネの言葉を受け、再び一行は黙々と渓谷沿いの山道を登っていく。傾斜はきつくはないが、長い上り坂で道幅も狭いので横に三人も並べば道幅いっぱいとなる。カサネさんの情報通りこの道だと大型の馬車は通れそうにない。


 一つ目の集落は地図で確認してもまだまだ距離があり、ベネの言葉通り今夜はこの世界へ来てから初の野営となるのは確実だろう。

 山の間を縫う様にはしる道を歩きつつ、時折襲い掛かるモンスターを狩りつつ進むとふと道沿いの樹々が開けた場所があった。


「なぁ、あれって開拓村の灯りだよな……?」

「結構暗くなってきたけど、方角的にはうちらが出てきた村の方で間違いないなぁ。」

「こう見ると結構綺麗っすね。」

「あそこにはまだ一万人近いプレイヤーが居るんだね……。」

「リツはあそこに居たかったか?」

「まさか。モーリィこそ製作施設に未練があったんじゃないの?」

「それこそまさかだ。場所は悪かなかったが、お前らが居ないんじゃ仕事に身が入らねぇよ。」


 開拓村の物であろう魔導灯の明りがポツポツと群れて燈る場所を見ながらケントやマリー、シキにリツとモーリィが思い思いに言葉を繋げる。


「まだあそこでホイミさんは頑張っているんだよね。」


 シオンはホイミさんからもらったアミュレットを片方の手で握りしめ、あの灯の中に居る憧れの先輩の事を想っているのだろう。

 それぞれ開拓村の灯りを見ながらどんな想いを抱いているかまでは判らない。でもきっとそれは、決して暗いものではなく、これからの旅路への決意に繋がるものなのだろう。


「綺麗ですね……。」

「ああ。陽が落ちきったらもっと綺麗に見えそうだが、そうなる前に今日の野営地を決めないとな。」

「ですね。できれば少し開けていて水場が近い方が便利ですが。」

「さ、みんな。陽が落ちきる前に今日の野営地に適した場所まで進んで野営準備するよ。」




 開拓村の灯りに別れを告げ、天兎の面々は今夜の野営地を探しに更に足を進めるのであった。





明かされるベックの実年齢。

割と最近では歳を召された初老のプレイヤーとかも時折見かけますよね。

大体そういった方に共通しているのは"心が若い"というのでしょうか、齢を重ねても尚自身の好奇心や探求心、冒険心といったものを心の中に持っている方が多いように感じます。

そして同じく少しだけ明かされるホイミの現実での状況。

医療系に従事する方の心労はこんな拙い文章で書き表すには物足りないものではありますが、少しでも表現できていたらいいなぁ。

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