表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/94

【 Ep.2-023 森の闇を支配する者 】



 ――森の中を荷馬車の隊列が慎重に、それでいて速度を落とさずに突き進む。


「マリー、右から蛾が二匹!」

「任せときぃ!――炎よ炎、その力矢と成し敵を穿て……!<火矢(ファイアアロー)>!!」


 マリーの詠唱後、構えた両手杖の先端から二本の燃え盛る矢が形成されて飛翔して襲い掛かるヒュージストレンジモスに直撃。翅へと火が燃え移ったモスはフラフラしながら森の中へとその姿を消した。


「セラ、そっちに蜘蛛が流れたよ!」

「りょーーーかいっ!!」


 シオンに返事を返しながらジャイアントスパイダーの片側の脚を全て斬り飛ばす。先発組が痛めつけたモンスターもこちらへ流れてくるので負担はそれなりにあるけど、今のところは問題なく進行できている。

 先導する形でベネが先頭を行き、クロさんは1台目の馬車に乗り込み御者台からベネのサポートに当たっている。2台目の馬車の幌の上にマリーが固定砲台のように座し、3台目の幌の上にはシオンが全体を支援できるように位置取っている。

 車列の右翼にはシキが、左翼にはセトが位置取り、マリーが撃ち漏らして接近を許したモンスターを迎撃している。ボクは最後尾、所謂殿って役目だ。


 聖火灯篭の安全エリアで少しずつ休憩を入れながら、ようやく森の半分ほどの道程を進めたが、陽はまだ沈みきっていないものの森の中という事もあり辺りは既に闇が支配しかけている。

 ペースは悪くはないが、このままだと森を抜け切る前に陽が沈む事になりそうだ。先発組は無事フロントラインと合流して今頃はトリガーとも合流できているだろうか……。


 出発してから徐々にではあるが何者かの気配を感じるのだ。それが単一の存在から発せられているのか、はたまた複数の存在からのものなのかは不明だが、なんにしても首筋に薄っすら感じるヒリリとする感覚は何かしらの警告の様に思えた。


「次のセーフゾーンまでまだかかるぞ。しっかりついて来いよ!」

「セト、左前の方向から蛾が五匹!マリ姐も援護して!」

「ちょっと待ってぇ!右からも蛾が二匹と蜘蛛が二匹きとるねん。」

「蛾は任せます!こっちは蜘蛛を相手させてもらうっす!」


 ビシュッ! ギギッ…… ビシュッ! ギィ…… ビシュッ!


 セトはモーリィから手渡された特製のボウガンを用いて接近される前に三匹のヒュージストレンジモスを戦闘不能にし、近接を許した二匹にはダガーで応戦して対応しているので問題はなさそうだ。

 右手側の敵もマリーが魔法で遠距離から敵の数を減らし、接近してきた敵はシキが対応して凌いでいる。


「って余所見してる場合じゃないね、ハァッ!!」


 仲間の様子を気にしながら後方より迫って跳びかかってきた二匹のフォレストウルフ達を迎撃する。斬り払いはしたが、まだ無傷なフォレストウルフが五匹もいるのは厄介だ。だがそんな差もすぐに埋まる。


「<火矢(ファイアアロー)>!セラ、遅れんように付いてきぃや!」


 マリーの放った<火矢(ファイアアロー)>に一歩引いたフォレストウルフの隙を見逃さず、少し遅れる事になるが後方の狼達に斬りかかって手傷を負わせてすぐに戻る。


「サンキュ!そこから見て何か変わったところない?マリー。」

「いや、よーわからんわ。ただ……さっきからなんかジトーっとした嫌な視線は感じるんやけどね。」

「気のせいかもしれないんすけど、半分を超えたあたりからよくわからない匂いが少しだけっすけどするんすよ。勿論そこのフォレストウルフとは別の"何か"っすよ?」


 出発してからボクが感じている気配にみんな薄々気づいているようだ。可能な限り気配を消しつつ、直ぐには襲ってこない存在となるとこれは厄介だ。少なくとも他のモンスターよりも知能が高く、狡猾であると言えるのだから。


(……襲うとすればそろそろ頃合いって所か。手負いの獲物は道中多く残してきたはずなのに、この嫌な雰囲気を出す存在はそれらに見向きもせずボクらを狙っている。)


 アオオオオオォォォォォォォォオオオオオンッ!!


 手傷を負った仲間が増えたフォレストウルフが遠吠えで仲間を呼ぶ。通常であればすぐにでも仲間が駆け付けるものであるのだが、荷馬車隊より手痛い攻撃を受けた個体が多いのか増援が来る事が無かった。


 グルルルルル……


 頼みの増援が来ない事に苛立ちを募らせるリーダーらしき個体が低く唸り、残り三匹も最大の警戒態勢で此方を睨みつけている。手傷を負った二匹はリーダー個体のやや後方へ下がっている。


 ガウッ!


 リーダーの鳴き声と共に、其々ジグザグに駆けながらボクの喉元を食い破ろうとフォレストウルフ達は襲い掛かってくる。既に手傷を負った二匹のフォレストウルフはそのタイミングで森の奥へとその姿を眩ませた。中々に巧い連携だ。

 一対四の状況で、他のメンバーも其々別のモンスターの対応をしている以上此方への加勢は望めない。

 両隣に一匹ずつ並走し、後方から一匹とリーダーが追ってくる。マリーの援護は馬車の死角を利用されて受ける事が出来ない。敵の頭を使った連携には舌を巻くしかないが、こんなところで簡単に死ぬ気はボクだってない。


「<暗闇霧(ブラインドミスト)>!」


 馬車の後部に向けて漆黒の霧を発生させて自らその中に身を投じて霧の向こう側へ出る。両隣を並走していた二匹は突如現れた黒い霧に戸惑ったせいでワンテンポ遅れて霧の中へ入り、霧の向こう側へと抜けようと走る。――だが抜けた先で待っているのはどちらかの確実な死だ。


「そこっ!!」


 ギャイン!!!!


 左側を並走していたフォレストウルフが黒い霧を抜けた直後、セラの正確な<刺突>により眉間を穿たれ全身を弛緩させてその命を散らすと、セラは即座に穂先を引き抜いて馬車の後方へと走る。


 ゴファウ!


 リーダーが再び鳴くと後方についていた一匹が左側面へ穴埋めするように動き、再び包囲されるような形で陣形を組みなおされた。


 グガゥッ!!!


 それが攻撃の合図だったようで、左右のフォレストウルフがクロスアタックを仕掛ける様に突撃攻撃を仕掛けてくる。――迎撃は出来る!だがここでその行動を取ると次に繋ぐ事ができない。

 馬車列より離れて後退する事になるが、二匹のクロスアタックを回避しながらリーダーのフォレストウルフへ斬り込みを掛けると、相手も此方に向けて飛び掛かってきた。

 相手は踏ん張りの利かない空中。地に足を付けているボクの方が踏ん張りが効く分膂力を活かせる上に武器のリーチで有利だ。


(このまま先にリーダーから仕留める!)


 フォレストウルフリーダーの空中からの噛み付き攻撃をされる前に斬りつけようとやや深く構えた瞬間、リーダーの喉笛を突き破って黒い何かがセラの左脇腹に刺さった。


「グッ?!」


 何が起きたのか――鋭い痛みを発する部位に目を向けると、黒くうねる触手状の先端についている両刃の短剣のようなものが自身の脇腹に刺さっている。

 ウネウネと動く触手が縮み、刺さっていた鋭利な刃が引き抜かれると同時に喉笛を貫かれていたフォレストウルフリーダーがドサリと力なく地面に落下した。

 リーダーを失ったフォレストウルフ達は激しく動揺してその場で固まると、もう一本の黒い触手がうねった後先端の刃が二匹を同時に貫き、少しの時間身体を痙攣させ呆気なく斃された。

 痛みに足が止まり左手を傷口に当て<治癒水(キュアウォーター)>で自身で手当てをするが、焼けるような痛みの為にまともな効力が発揮されない。それでも幾分か回復はするのでそのまま手当てを続ける。

 この傷を与えた相手を確認しようと進んできた道に目を凝らすと、そこにはフォレストウルフよりも大きな体躯に漆黒の体毛、頭部らしき位置には四つの鋭く裂けた赤く光る眼があり、首元からボクやフォレストウルフ達を貫いた先端に両刃短剣が付いた触手を伸縮させているモンスターが居た。


(……ナイトハウンドだ。気配からして出発してからずっと追跡してきていたのはこいつで間違いない。ダメージを与えて放置してきたモンスターに目もくれず、ずっとボク達を追いかけてきてきたって事はコイツの狙いは荷馬車隊では無く、ヒト目当てか?!)


 問いかける様なボクの視線に気付いたのか、ナイトハウンドはその口元にボクを貫いた先端部を持ってくると、付いていたボクの血を舐めとりこちらに四つの目を向けたまま口を器用に歪ませてみせた。


「!!」


 今の反応からして間違いない。コイツは、獲物としてボク達をロックオンしている。相手の動きを注視しつつ魔法で傷を癒す。その間にも荷馬車からの距離はどんどん開いて行く。


「セラッ!!」

「止まるな!先に行ってて!コイツはここでボクが相手する。」


 シオンが気付いて声を掛けてくるが、今ここで荷馬車隊を止めるわけにはいかない。少なくともここでボクがコイツの相手をしている間、荷馬車隊の連中の安全性は稼げる。

 それに人数が多く居たとしても、この狭い街道上であの触手短剣の動きから多人数を守りつつ、他のモンスターの相手もしながら戦う事は無理だ。そもそもそれだと荷馬車隊の護衛がいなくなる時点でダメだ。


 ガラガラと荷馬車の車輪の音が後方へと流れていく……。目の前のナイトハウンドは荷馬車には一切興味を示さず、目の前に立つボクを舐め回す様に睨みつけながら二本の触手を動かし此方の出方を窺っている。

 ――フォレストウルフリーダーの喉笛を貫いて当ててきた最初のあの一撃、あの時の状況からして灯りの届かない暗闇の中から触手を伸ばして攻撃してきたのは間違いないが、その攻撃の正確さが腑に落ちない。


 ビュゥン! キンッ!! ドドスッ


 一瞬の思考を隙と見たのか、左右からそれぞれ別の軌道を描いて触手短剣が襲い掛かってくる。先に攻撃範囲に入った右側の短剣を弾きその方向へとすばやく移動すると、今までいた位置に左側から迫っていた触手短剣が刺さる。

 ビュンビュンと空気を裂く音を鳴らしながら休む間もなく連続して触手短剣による攻撃がセラを襲うが、そのどれもを往なし、払いのけて攻撃の機会を伺う。


(マンハントハンギングとの戦闘で触手状の枝槍攻撃見てなかったら詰んでたなこれ……。)


 狐耳をピクピクと盛んに動かし、目と耳の情報を頼りに触手短剣の攻撃を防いではいるが、対峙するナイトハウンドに疲れの色は見られない。

 対してセラはというと、予てよりの体調不良と先程受けたダメージによってその動きは徐々に疲労の色が見え隠れしつつある。既に傷は回復魔法で癒せているものの、流れ出た血まで戻せるわけではないのだ。


 そうした精緻さを欠いたセラの動きに気付いたナイトハウンドは、似た様なパターンの触手短剣攻撃を三度仕掛けた後片側の触手を自身の後方へと引き戻し、もう片方を真っすぐ今までよりも早く突き刺す様に伸ばしてきた。


 ギャリリリリリリリリリリッ!!!!!


 直線状の攻撃であるが、その単純な軌道故に攻撃速度も今までより早い。咄嗟に先端の短剣部分に対して自身の得物を合わせる形でぶつけて軌道を逸らす。


 ビッ!


 それた剣先がセラの左頬を掠めて切り傷を作る。だがその痛みに浸る暇なくセラは嫌な予感を全身で感じて尻尾まで毛が逆立った。


(なんだ?!このとてつもなく嫌な感覚は!)


 ――全身で感じる嫌な感覚がセラの五感全てを鋭敏に研ぎ澄ませる。左頬を傷つけられてまだ5秒も経っていない時間が凝縮された世界で、セラの瞳は自身に迫るソレを確認した。

 伸びきった触手の奥側からもう一つの触手短剣が渦を巻きながら自分に迫ってきていたのだ。


(まずい……!!動けぇっっ!!!!!!)


 ――ハラリ。何本もの銀髪が暗い森の中の街道上に舞う。


「っぶな……!」


 喉笛を狙った下側からの触手短剣の突きを、大きく上半身を逸らせる事によりギリギリ回避したが、髪の毛の一部は綺麗に切断されていた。


 石突を地に突き立て、上半身が反った状態で後転を行って距離を取るが、緩急織り交ぜた触手短剣の波状攻撃に再びセラは防戦一方の状況に追い詰められる。

 ナイトハウンドはセラが攻撃を防ぎながらも近寄ると適度に距離を取り直し、得物の射程範囲外からの攻撃に終始して一つの隙も見せない。


「<暗闇霧(ブラインドミスト)>!」


 ナイトハウンドとの間に漆黒の霧を発生させ、敵の攻撃精度を落とそうと試みるが、触手短剣の正確無比な攻撃は一切影響されたようには見えなかった。


(これは視覚以外でもボクの姿を捉えている。……そうか、血だ!最初にボクが狙われたのも月の物の血の匂いで狙ってきたんだコイツ。)


 ナイトハウンドの触手短剣による攻撃精度の秘密はこれで解明されたとはいえるが、だからと言って状況を覆せるほどのアドバンテージの差を縮められたわけではない。

 相手を疲弊させ、確実にトドメを刺そうと狙う。どうやらこのモンスターは想像以上に狡猾なようだ。


「ハァハァ……。」


 攻撃を捌くのに集中しているセラだが疲労は蓄積しており徐々に息も上がって来ている。


 ビュオォン!!  ザッ キィーン      ドスッ! ドスッ!


 再びセラに向けて触手短剣が二本同時に襲いかかる。片側によって森羅晩鐘の穂先を"合わし"、アックスブレード部を触手短剣に当てて軌道を逸らす事で直撃を避ける事に成功したが、往なし方に無理があった為大きくバランスを崩してしまう。

 だがナイトハウンドはそのまま連続攻撃には移らず、触手短剣を収縮させずにそのままセラの後方の大木へと先端部を突き刺した。


――瞬間


 ギュン!という表現がぴったり当てはまる様な挙動で、突き刺した触手をアンカー代わりにしてナイトハウンドは自らの肉体を猛速度でセラへと迫らせた。

 恐ろしい勢いで迫ってくるナイトハウンドを目にし、どうにか体勢を整え迎撃しようとするも、無理に往なした反作用で手先は痺れて感覚が薄く、力を上手く入れる事が出来ない。

 目前に迫ったナイトハウンドは大口を開けて牙を剥き、前脚からは鋭い爪が伸ばされている。


(駄目だ、間に合わない!)


 既にナイトハウンドとの距離は10メートルを切っており、魔法でどうこうしようにも詠唱時間も足りず、<刺突>を合わせようにも予備動作が取れない為にスキルは発動できない。

 迫るナイトハウンドの開かれた口の中、二重に並び生えている剣山のような鋭い牙を目に焼き付けながら辺りの時間の流れがスローモーションの様に感じる。

 あぁ、これが死ぬ前に体験する走馬燈がどうとかいう奴か……などと自身の身に迫った"死"を前に悠長に思考していると、突如その"死の形(ナイトハウンド)"が視界から消えた。


「は?」


 突然の事態に脳の処理が追い付かない。眼と鼻の先にまで迫っていた漆黒を纏った影はそこにはなく、それとは全く似てもいない影が目の前に立っていた。


 ぼんやりとした灯りに照らされ、すらりと伸びた脚に白い肌、白緑色の長い髪に普段は垂れ目がちな瞳が今は大きく見開かれ、真っすぐ前を見据えているのが見える。


「クロ……さん?」

「無事ですか?セラさん、直ぐに回復魔法と強化魔法を掛けますね。」


 クロさんはワンドを此方に向け<回復(リカバー)>、<防御強化(エンハンスドディフェンス)>、<攻撃強化(エンハンスドアタック)>、<持久力強化(エンハンスドインデュランス)>、<速度強化(エンハンスドスピード)>を続けざまに掛けてくれた。

 リジェネレイトタイプの<治癒水(キュアウォーター)>とは違い、回復職のクラススキルに該当する<回復(リカバー)>は、<治癒水(キュアウォーター)>と比較すると総回復量は劣るものの即効性があり、強化魔法の効果もあって見る見るうちに自身の肉体に力が蘇るのをセラは実感した。

 念の為、自身に<治癒水(キュアウォーター)>を掛けてクロさんと並び立ち、彼女の視線の先に居る吹き飛ばされたナイトハウンドへと対峙する。


「もう、大丈夫ですか?」

「ありがとう、クロさん。おかげで大丈夫だよ。……でもどうやってあいつをあそこまで拭き飛ばしたの?それにどうしてここに……。」

「その……実は、セラさんを助けるために無我夢中で自分で一体何をしたのか覚えていないんです……。気付いたらあの敵を突き飛ばしていたみたいで……。セラさんの加勢に来たのは私の独断です。ですが、ベネデクトさんをはじめ、みなさんセラさんが心配だったみたいで"よろしく頼む"って言っておられました。」

「そっか。しかしまぁクロさん……なんだかボクよりよっぽど狂戦士(バーサーカー)っぽいね。」

「恐縮です……。」


 顔を赤らめながらクロさんは応えてくれる。どうやってナイトハウンドを吹き飛ばしたのかは結局分からないけども、彼女が助けに来てくれたおかげでどうにか命を繋ぐ事が出来た。


 目線の先の黒い影がゆらゆらと蠢く。


「セラさん!」

「あぁ、わかってる。クロさん、ボクは自身の防御で手一杯でそっちを守りながら戦う事は出来ない。……それでも一緒にあいつと戦ってくれる?」

「勿論です。私はいつも貴方と共にありたい。いつまでも守られるだけの私じゃなく、他の方々の様に貴方と並んで戦える私になりたいんです。だから……、だから支援(サポート)は私に任せて下さい!」


 ――驚いた。ラインアーク時代は対人戦に参加こそすれ、どちらかと言えば庇護されるばかりだった彼女が……いつも控えめで慎ましやかなイメージを保っていた彼女がここまで力強い言葉で自身の意思を表明するなんて。

 隣に並び立つ彼女はこれまでの少し頼りなかったクロノスレイではなく、背中を任せても大丈夫だと、そう思える信頼できる強い戦友に成長していた。

 それでもこのナイトハウンドを二人で倒す事は難しい、それほどの敵であるのは間違いない。だけど、ボク達二人なら他の仲間達が救援に駆け付けるまでの時間程度は凌ぐ事は可能だろう。


 突然の奇襲により吹き飛ばされたナイトハウンドは頭を振りかぶって気を取り戻し、すぐさま此方へ視線を向け四つの赤い瞳で此方を睨む。その目からは後少しで食えたのに邪魔をしやがってという明確な強い怒りを感じる。

 触手短剣を激しく地面に打ち付けながら二人に増えた捕食対象を睨みつけ、ナイトハウンドは攻撃姿勢を取った。


「あいつらが戻ってくるまでは凌ぎ切ろう!」

「はい!」


 ――斯くして、宵闇が迫るベタンの森の中の街道での戦闘は再開された。





ナイトハウンドはラフですがこんな感じのモンスターです。

→ https://pbs.twimg.com/media/DpblwftU8AEl13d.jpg:large

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ