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【 Ep.2-022 ベタン通過護衛任務開始 】

累計30,000アクセスが近づいてきました。

投稿ペースが安定しませんが、今後も長い目で見て頂ければ幸いです。



 前日遅くまで続いた話し合いのせいか、転移後三日目にあたる今日はみんなお昼近い時間まで寝ていた。といってもチグサは染みついた癖なのか決まった時間に起きていた様だけど。

 朝食兼昼食を宿でとった後、それぞれ夕方の護衛任務に向けて村の商店で必要な物を購入してから冒険者ギルドへ顔を出すと、此方に気付いたギルド職員が二階へと案内してくれた。


 一階の受付窓口が混雑している時などにしか使用されない様なフロアであるが、案内された先には見知った顔の面々と初めて見る一団が居た。


「よぉ。今日の任務はよろしく頼むぜ。」

「ベック!」


 その見知った顔の面々の一人、パーティ"フロントライン"のリーダーであるベックが此方に気付き声を掛けてくる。


「荷馬車の護衛依頼な、あれ俺達も受けたんだよ。パーティメンバーのランクも受注可否の査定に入ってるみたいでよ、受けれるパーティがあまりにも少ねぇって状態だったから"相談"されてな?」

「あぁ、なるほど……。」


 言外に彼らもカサネさんと取引したという事だろう。


「ところで彼方は?」

「ん?あぁあいつらは――」

「はじめまして天兎の皆さん。パーティ"トリガー"のリーダーをしています、トッシュです。」


 気になっていたもう一団の方へ話の矛先を向けると、此方の会話を耳にしたその集団「トリガー」のリーダートッシュと自称した鷹の頭をした男性が歩み出てきた。

 トッシュはアニールでキャラメイクするプレイヤーには珍しい鳥獣人(バーデル)タイプの中でも動物ベースの頭部をしている変わり者の様だ。鷹の頭部は格好いい方だとは思うけど、正直感情が読み取りづらい。だが口調からしてしっかりした大人の雰囲気を感じる。


「こちらこそよろしく。天兎のセラです。」

「おぉ、やはり貴方が。今回は貴方の指示を仰ぐようギルドから通達されています。作戦があれば是非とも自分達もそれに加えて下さい。」

「え、そうなの?」

「はい。こういった合同での受注では一番ランクが上位の者に従うのが決まりらしいです。」

「そういうこったな。俺達もその心構えでいるから遠慮なく指示を出してくれ。」


 そう言われてこの場に集まった面々を確認する。天兎メンバー11名。フロントラインは6名の参加、トリガーは8名。合計で25名。それぞれ最下級のFランクから抜け出し、Eランクへ昇格している。

 昇格するには相応の数のモンスター討伐数、依頼達成数等査定される部分は多く、デミゴブリンをはじめとする雑魚モンスターを只管狩っていても簡単に上がったりはしない。そういった点を踏まえると彼らもまた相応の実力を持つ者達であり、その技量も天兎メンバーに匹敵すると考えてもいいかもしれない。

 今回の作戦は主軸となる対応策は天兎だけでもこなせるように考えているので、その補強となるように彼らに協力してもらおう。何しろ人数が多い方が護衛の成功率は上がるのだから。


「分かった。なら今から今回の作戦と各々の布陣箇所、役割を説明していくね。」



*****



 ――冒険者ギルド二階での顔合わせと作戦内容の説明を終え、天兎、フロントライン、トリガーの三パーティはベタンの森へ分け入っていた。

 天兎はセラ、ケント、リツ、クロノスレイ、モーリィのA班とチグサ、シキ、セト、シオン、マリー、ベネデクトのB班に分け、ベタンの森の街道沿い50m程度の場所を左右に別れて足を進めてモンスターに対してローラー作戦で排除していっている。

 排除と言っても逃げる様子のモンスターはそのまま逃がし、極力止めを刺すといった行動を取っていない。周りの冒険者から見れば傍迷惑な狩り方ではあるが、これは怪我を負ったモンスターが安易に街道沿いに現れないようにするための威嚇行為や威力偵察のようなもので、知能の低いデミゴブリンでもしばらくは付近へ現れる事はない程度には効果がある。


 そうして街道沿いをローラーしながら進行し、スパイラルオークの巨木群が捻じれながらも林立し、森がその濃さを増やすエリアに突入するとジャイアントスパイダーやフォレストウルフがその姿を見せ始める。


 フロントラインとトリガーの二パーティは街道をそのまま進み、二つ目の聖火が灯されている灯籠の場所でトリガーはその場に残り、フロントラインは更に街道を北上して五つ目の灯籠の場所まで進むとそこに留まった。

 トリガーはコアメンバーはEランクには昇格しているが、まだFランクに留まっている者もいる。モンスターが活性化し始めるこの時間帯にベタンの森の中央付近へは連れていくのはリスクがある為比較的深度の浅い部分での待機となっている。逆にフロントラインはその実力を買われ、中央付近での待機とされたのだ。


「俺達はここで時間まで待機だ。合図が上がるまではこの灯籠の周囲なら好きに休憩しておいていい。」

「「「「「はい!」」」」」


 ベックが声を掛け、フロントラインメンバーは各自通行の邪魔にならない思い思いの場所へ腰を下ろし来るべき時間を待ちながら武器の手入れをしたり、携行している消耗品のチェックをし始めた。


(さて俺も少し休憩しておくか……。どっちにしろ俺達がやれる役割はあいつらのサポートにすぎんが……。)


 ベックはそう思いながら腕を組んで巨木にその背中を預けて目を閉じた。



 ――先遣隊との合流地点である"ツイストゲート"には予定の時間少し前に到着した。街道沿いからそれぞれ別れた二組が合流し、互いの無事を確認した後各自装備品のチェックと作戦の再確認を終えると護衛対象となる先遣隊の馬車が近づいてくるのが見えた。


 先頭の馬車がボク達の前で止まると、荷台の中から黄金の交易路(シルクロード)のメンバーが出てきて、後方の馬車の傍についていた護衛の冒険者パーティのリーダーも此方へ来た。


「話は伺ってます。黄金の交易路(シルクロード)のレジャーです。」

「領都からの護衛に当たっていたパーティ"奔る風"のバランテだ。冒険者ランクはEランク、俺達のパーティの人数は6人。ここまでの道中で数度モンスターからの襲撃はあったが被害はない。ここからの護衛はそちらが指揮を執ると聞いている、よろしく頼む。」

「此方はファミーリア"天兎"のセラ、冒険者ランクはDランクです。一応念の為にボクの冒険者タグを見せておくね。」


 パーティ奔る風のリーダーバランテとサブリーダーのモナイ、黄金の交易路(シルクロード)のレジャーを交えてここからの作戦を説明する。


「ここからはそれぞれ4台ずつに分けて進行します。先を行く方に此方の[盾使い(ガード)]を付け先導します。数百メートル単位で聖火の灯籠があり、その周囲30メートル程度が安全エリアになるので先発組がまずそのポイントを目指します。先発組が到着次第合図を上げ、その合図と共に後発組が後を追っていき、後発組の姿を捉え次第先発組はそのポイントを出発。以降同じ手順を繰り返してこの街道の最も危険なエリアの突破を目指します。」

「俺達はどの様に別れればいい?」

「奔る風のメンバーは先発組の馬車の護衛へ。最後尾の四台目の馬車へは遠距離攻撃が可能なメンバーを最低でも一人は乗せて後方の警戒を。先頭車両は此方のメンバーが受け持つので、残りの3台を2名ずつ護衛する形で。通過する事が最優先事項なので敵を倒す事は二の次で構いません。倒したところでドロップ品を回収している暇はないので。」

「そうだな。俺達の目的は荷馬車の護衛であってモンスターの討伐じゃない。」


 バランテの言葉に頷きセラは話を進める。


「先発組へは此方から[盾使い(ガード)]のケント、[侍祭(アコライト)]のリツ、[浪人(ローニン)]のチグサと[細工師(クラフター)]のモーリィを付けます。中間地点付近にパーティ"フロントライン"の6名が待機してますので、そこからはうちの4名と入れ替え。フロントラインのリーダーのベックが先発組を指揮します。中間地点通過後は後発組みを待たずに先発組は灯籠間を開拓村方面へ向けて駆けて下さい。街道でも最も深いエリアを抜ける近辺の灯籠付近にパーティ"トリガー"が控えてます。そこまでくれば後はほぼ一直線に近い状態なので、奔る風とトリガーで先発組を護衛して村へ。フロントラインは後発組の護衛へと戻ります。」

「了解した。とにかく俺達は先発隊の護衛に専念すればいいわけだな。」

「此方も了解しました。直ぐに全員に伝達します。」

「準備が出来次第行動に入るからよろしくね。」


 すぐさま各パーティに作戦の内容が伝達され、それぞれが持ち場へとテキパキ動いていく。

 奔る風は領都側で雇われた護衛パーティで全員ヒューム。リーダーのバランテが[剣士(ソードマン)]で他の5名が[槍士(ランサー)]、[侍祭(アコライト)]、[斥候(スカウト)]、[魔術師見習い(ウィッチ)]、[軽戦士(フェンサー)]とバランスの良い構成だ。

 彼らのやり取りを見ているとどこか同じ村か町で育った間柄で、恐らくこの世界生まれの冒険者たちだろう。あの様子を見る限り決してランクは高いとは言えないが、地力はしっかりと有るパーティだと思う。

 レジャー達も手慣れたもので此方の指示内容を全員に伝えた後は荷馬車の編成を少しだけ整え、いつでも出発できる態勢に入っていた。


「こっちの準備は大丈夫だ。いつでも出発できる。」

「こちらも問題ありません。いつでもいけます。」

「よし、じゃあモーリィ合図を打ち上げて出発しよう。」


 バランテが片手を大きくあげて此方に伝えてきたので、先発組の一番後ろの四台目に乗っているモーリィに声を掛けて出発してもらう事にした。こうして時間を掛ければ掛けるほど陽が落ちるまでの時間が減る以上迅速に行動へ移す方が良い。


「んじゃあ合図を打ち上げるぞ。……途中までそっちの援護はできねぇがセトの野郎に渡したボウガンを使えば幾分か楽は出来るだろう。まだ本調子じゃねえんだから無理はすんなよ、セラ。」

「わかってるよ。」


 二、三やり取りをした後モーリィはゴソゴソとインベントリポーチをまさぐった後、短く切り詰めた独特な形状をしたボウガンを取り出し、そこにこれもまた特徴のある飾り羽をしたボルトを番えると弦を引き絞ってから二発空へと撃ち放った。


 ピュウウウウウウウウウウウウウン―― ピュウウウウウウウウウウウウウウウウウン―――


 撃ち放たれたボルトはその飾り羽から甲高い音を鳴らし空へと消えていく。この音を二回鳴らす事により離れた場所にいるフロントラインとトリガーの両パーティに行動開始の合図を知らせるのだ。

 これ以降聖火灯籠を通るたび合図を出すのだが、一回であれば異常なし、三回であれば問題発生と取り決めている。


「出発だ!」


 バランテが声を上げ、先発組の馬車隊がより深い森の中の街道へと徐々に速度を上げながら突入する。先頭を盾を構えながらケントが先導し、それぞれの馬車の両脇に一名ずつ並走しながら森の中へとその姿は溶けていった。

 荷馬車と言えどかなりの速度は出せるが、この森の中の街道は足場が悪く、また細かくうねっている為平地を走る速度は出せない。それゆえに馬車の脇について並走しながら護衛を行うのだ。その為走りながらの戦闘になるわけだけど、元々の身体能力が上がっている事に加えて強化魔法(バフ)を掛けた上で戦うのでスタミナは問題ない。その上倒す事が目的でない分、例え襲撃があったとしても敵が追ってこれなくなる状態にさえすればそれで済む。



 先発隊が深い森の中へ入ってしばらくすると、俄かに森がざわつき始めた。恐らく馬車に積んである食糧を目的にした襲撃が発生したのだろう。


「こっちもそろそろ出る準備を。全員臨戦態勢で!」


 キシャアアアアァァァアアアアアアアアッ!!!!!!

 グルロロロロロロォォォォ……

 

 言うや否や、先発隊が入っていった方向よりモンスターが数匹飛び出してきた。脚が二本斬り飛ばされたジャイアントスパイダーと手負いのフォレストウルフ三匹。

 襲撃相手に返り討ちにされ、ならばともう片方の此方を狙ってきたのだろうけどそれは読みが甘い。即座に後発組の護衛に回ったメンバーは迎撃に動き、相手に機先を取られない内に素早く倒す。

 遭遇時点でこちら側にアドバンテージがあるが、窮鼠猫を噛むといった危険がある以上は手早く処理した方が良い。


 倒したモンスターの死体は街道の脇へと捨て放置する。こうしておけば死骸を啄もうとするモンスターの意識から馬車の存在を一時的に消す事が可能だからだ。

 ゲームであれば倒したモンスターは時間と共に消滅していくのがよく見る光景ではあるけど、既に現実の世界となったここでは普通にモンスターの死骸は消えない。ダンジョンであればダンジョンコアが再利用する為なのか一定時間で吸収して死体は消えるらしいが、少なくともダンジョンではないここでは死体はそのまま残るのだ。

 残された死体はそれを餌とする微生物や小動物、それだけでなく普通に同種のモンスターでも餌として喰らう。それは間違いなくこの世界の食物連鎖である。


 ピュウウウウウウウウウウウウウン――


 倒したモンスターの処理をしたところで先発組から合図が鳴らされた。


「合図だ。こっちも出発するよ!」

「先導は任せろ。遅れるなよ!」


 セラの出発の掛け声に後発組の先導をするベネデクトが応え、後発組の荷馬車隊も深い森の中へと速度を上げながら突入した。






更新が遅れました。

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