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職世界冒険録  作者: ハスキーひやま
フォレストの章
9/12

戦闘、魔王軍

俺達が帰ってから聞いたのは、サラが倒れたという事実だった。勝手に修行部屋に入り高レベルの魔物と戦い、倒れたらしい。

レベルが突然一気に上がったのをマスターが気付き部屋に向かうと既に彼女が倒れていたそうだ。魔物は黒焦げになっていて倒されていた事から魔力切れによる疲労で倒れたのではという事。しかし身体には無数の傷があり、毒も少し受けているそうだ。その後すぐにリジェルの街の治療院に送られた。


「だからあの部屋には行かないように言ったのに……サラは職が生産だから前に出る必要はないのよ?」

「……」


サラは少しムッとした顔をした後、あの時の事を話した。扉が何者かに閉じられ、重りを置かれたであろうという事。そしてその後に現れたデスプラントの事を全て。

リジェルがやったのではという疑惑を本人にぶつけた。しかしリジェルはずっとマスタールームに居たという。サラはそれ以上リジェルを疑うのはやめた。

マスターともあろう者がそのような姑息な真似をする理由も必要も無いからだ。もしマスターが犯人なら、自分から戦えばあんな怪物を放たくても自分でやればいい。そもそも理由がない。そう考えた。


「一体誰が……それにあの部屋にデスプラントなんて出ないはず」

「俺も犯人探しをしてみるよ。見つかったらボコボコにしてやらなきゃな」


そう言って部屋を出た。既にこの事件から4日経っている。犯人探しをするにも証拠は残っていないと考えるのが妥当だ。マスターの話では着いた時点でドアには封印魔法が使われていたらしい。しかし封印魔法が使えるメンバーは川崎さん位で、そもそも彼女は一緒に居たし封印魔法を使った所を見たことが無い。先生に至っては論外。封印魔法どころか何のスキルも持っていない。しかし12階の修行部屋に入るにはギルドのメンバーでなくてはならない。


「一体誰だ……?」


メンバーしか犯人にはなり得ないはずなのだ。とは言え、封印魔法を使ってまでサラを狙った動機もわからない。それに、倒された時点で連れ出されていない事から誘拐目的でもない。

完全に犯人の目的が不明なのだ。こんな時警察はどうやって犯人を炙り出しているのだろうか。一人で頭を抱えていると、ラークさんが隣に座った。


「ねえ、犯人はサラさんを消したかったんだろ?サラさんがいたら困るっていう人が犯人なんじゃない?」

「そりゃあ……そうじゃないですかね。でもなんで困るのか、なんで自分でやらなかったのかが分からないんですよ」


うんうん二人で唸っていると、アリサさんが俺宛に手紙が来ていると教えてくれた。

受け取って広げた手紙の内容を見て、俺は手紙を無意識にくしゃりと握り潰していた。

隣のラークさんが俺の顔を見て驚いていた。相当頭に来ているのは自覚している。手紙の内容はこうだ。

『河端サラの件は俺がやった。俺に仕返しがしたくば今夜12時に東の海の海岸へ来い。俺は魔王に仕える者也』

魔王に仕える者だと?ふざけてるのか!文章から怒りしか湧いてこない。だが自分から来るとは好都合。絶対に叩きのめす。

俺はショートソード+5を装備してからマスターに手紙の事を伝えた。しばらくマスターが考えこむ仕草をすると、後で合流すると言ってくれた。


夜の海岸。波の音だけが響くこの場所にソイツは居た。彼は一人で海岸から海を見ていた。彼の職は『バーサーカー』。武器、防具等の装備によるステータス強化が軽減される代わりにその身体能力を限界を超えて引き出す戦い方をする。強力であるが故に武器や防具の恩恵を少ししか得られないのがバーサーカーという職である。


海岸に着いた時、海岸にいた丸腰のその少年はコチラへ振り向きニヤリと笑った。その笑みには不気味さを感じた。少年の顔は『狂気』に染まって居たのだ。


「来たか。異世界人」

「なんで知ってる……!犯人はお前だな!」

「そう睨むなよ……俺も『フォレスト』なんだぜ?」


奴の右手にはメンバーの証があった。しかしフォレストのマークには傷が付けられており、破壊不可の加護も即死回避の加護も属性強化の加護も無くなって輝きを失っていた。アレはおそらく破門されていると取っていいだろう。メンバーの証を外して捨てると少年は続ける。


「異世界人……河端サラだったか?アイツは魔王様直々の命でよ。未来で完全復活の邪魔をする奴らの一人だってんで、抹殺を頼まれた。が、あの女思ったよりやるじゃねーか」

「テメエ……!そんな事でサラを!」

「おー怖い怖い。今すぐって訳じゃ無かったから手出ししなかったが……殺ってりゃ良かったかァ……?」


俺は怒りに任せてショートソード+5を振るい、パワースラッシュから連続でファイアスラッシュ、ウォータースラッシュ、サンダースラッシュを少年にぶつける。手応えはあった。しかし少年は傷一つ付いていない。身体に着いた砂を軽く払い、少年はニヤリとまた笑った。


「なんだ?その剣は飾りか?蚊でも止まったかと思ったぜ」

「くっ……我が力を大地に還し、我に更なる力を授けよ!『パワーチャージ』!『ダブルスラッシュ!』」


攻撃強化魔法から続けてダブルスラッシュを放った。これなら効くはずだ!魔力が爆発し砂埃が舞う。しかし煙が晴れても少年は無傷で、つまらなそうな顔をしていた


「チッ……魔王様がコイツも邪魔だから殺れって言ってたからどんだけ強いのかと思ったのに、とんだ雑魚じゃねーか。興醒めだ、失せろ『パワーブレイク』!」


黒い魔力を纏った拳が腹に向かって打ち込まれる。それを間一髪ショートソードで防いだ。が、防ぎきった代わりにショートソードは真ん中からへし折れてしまった。アレをまともに受ければただでは済まない。最悪一撃で死んでしまうだろう。


「怖気づいたか?ハハッ!弱者は辛いなぁ?」


一歩奴が近づく度に本能的に後ずさりしてしまう。恐怖にも、コイツにも『勝てない』のだ。完全に負けている。コイツに挑んだ事を心のどこかで後悔している。だんだん恐怖で足が動かなくなり、遂に奴に目の前まで近づかれた。


「終わりだ、じゃあなァ!パワー……」


ブレイクと奴が言い終わる前に目の前に現れた光の壁に攻撃は弾かれていた。防いだのは川崎さんだった。いつの間にか来ていたらしい。おそらくマスターに話を聞いて来たのだろう。


「チッ。邪魔すんじゃねーよ!」

「いいえ、全力で邪魔をさせて貰います。我が力を地に捧げ、命を生み出せ!創命魔法・サンドゴーレム!」


川崎さんの真下に魔法陣が現れ、そこから人の物とは思えない程の巨大な砂の腕が姿を現した。そのまま砂浜が盛り上がりゴーレムが姿を現す。魔力によって擬似的な生命を作り出す魔法が創命魔法だ。サンドゴーレムは咆哮をあげながら巨大な腕で奴を攻撃する。

川崎さんの顔色が悪い。この魔法は召喚魔法と違い、使役する使い魔を召喚ではなく創り出すため、それだけ魔力を多大に消費してしまう。故に一瞬で魔力切れを起こすのだ。


「おいおい、なんだこの燃費悪い魔法は!顔色真っ青じゃねーかァ?」


馬鹿にしながら襲いかかるサンドゴーレムの拳や薙ぎ払いを全てかわしていく。魔法の適正値が常人を圧倒的に超えている彼女ですら擦り傷すら与えられない。レベルを隠蔽魔法で隠されていて読み取れないが軽く7、80以上はあると見ていいだろう。

パワーブレイクを食らってサンドゴーレムは一撃で崩れて無くなってしまった。彼女は建物の壁に寄りかかる形でなんとか立っている。


「私が、時間を稼がなきゃ……!我が力を天に捧げ……全てを縛る鎖とせよ、スレイブチェー……」

「遅せぇよ。『パワーブレイク』」


川崎さんがパワーブレイクをモロに食らって街の方へ吹き飛ばされていった。それは俺の目にスローに映っていた。

頭の中を自分の情けなさと怒りが支配していく。プツリ、という何かが切れる音が聞こえたような気がした。何かが心の底から湧き出てくる。身体から黒い魔力が吹き出している。


???の素質が開放されました

スキル

『狂化・バーサークスラッシュ』

条件・剣を装備しており、闇の魔力を使用時。

常時発動スキル

身体能力上昇A+

回復力増強B+


装備強制変更

ショートソード(破損)→???


???

解析不能


ドス黒い力が湧いてくる。現れた2つ目のステータス画面は少し歪んでいて、そのステータスは普段の数十倍の数値を表していた。


「あぁ?テメエ、その魔力は……!」

「お前は殺ス……!『狂化・バーサークスラッシュ』!」


黒い魔力が折れたショートソードの足りない部分を補い、禍々しい剣へと姿を変えさせる。そしてその禍々しい剣と化したそれを奴へ乱暴に叩きつけた。切り裂く手応えと共に血が飛び、そのまま砂と一緒に吹っ飛んだ。奴の身体にやっと傷が付いたのだ。奴は信じられないと言ったような顔でこちらを見ていた。


「くっそ……何故だ……何故お前がソレを使える!」

「黙れ!お前の声は2度と聞きたくない!狂化・バーサーク……!」

「待ちなさいッ!!」


突然現れたマスターが剣を素手で掴み、俺の攻撃を止める。素手で掴んでいるはずなのに、血が出ていない。何らかの力がバチバチと音を立てて拮抗している。

彼女も俺と同じ黒い魔力が出ており、更に彼女はそのまま俺の黒い魔力を押さえ込んだ。そして黒い魔力が消えると共に、禍々しい剣の闇の魔力が霧散して元の折れたショートソードに戻る。


「ハァハァ……コイツを仕留めるのはまだダメよ」

「マスター、どういう事ですか?」


マスターが傷が深いのか動けない奴の方を見て、黒い魔力を消し事実を告げた。


「コイツはギルドの……フォレストの初期メンバーだったのよ」

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