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369の世界 〜12冊の魔導書〜  作者: ダーク創造神
第一章 小学校低学年
24/25

第23話 マルオ達の修行

ーーーー 魔法教会 ーーーー


冬休み。


寒風の吹き荒れる道。

空から降る雪が、白く大地を覆っていた。


その雪の中を歩く四人の子ども。


マルオ。

ヒヨノ。

アカヤ。

十文字。


そして、その前を歩く一人の大人。


マルオの父。


彼らの前に現れたのは、巨大な建物だった。


洋風の石造り。

高い塔。

重厚な壁。


そして——


大きな扉。


まるで異国の宮殿のような建物だった。


扉の前には、黒いスーツの男が立っている。

男の視線は鋭く、雪の中でも微動だにしない。


マルオの父は、懐からカードを取り出し、

男に見せる。


男はそれを受け取り、静かに確認した。

そして頷く。


「ようこそ」


低く落ち着いた声。


「魔法教会へ」


重い扉が開く。

中は外とは別世界だった。


豪華な洋館の内装。

長く続く廊下。

壁には美しい装飾。

大きな窓から差し込む冬の光。


その光の中で、雪が静かに舞っていた。


ヒヨノが小さく呟く。


「……まるで違う国にいるみたい」


マルオの父が微笑む。


「確かに、そう見えるかもしれないね」


そのまま廊下を進む。


やがて——

再び、大きな扉。


案内役の男がそれを開いた。


中は広い会議室。

中央には大きな円卓。


そして、その前に一人の男が立っていた。


背の高い男。

細身の身体。


メガネをかけた、冷たい目。


案内役の男が深く頭を下げる。

そして、静かに扉を閉めた。


マルオの父が前に出ると、

深く、丁寧にお辞儀をした。


「彼は」


声が少しだけ誇らしげになる。


「我らが魔法教会会長」

「ロード・オブ・バーミリオン様です」


マルオ達は息を呑む。

マルオの父は、その隣に立つ。


「改めまして」


静かに名乗る。


「私は魔法教会幹部」

「丸尾 秀一です」


そして、子ども達にも頭を下げた。

敬意を込めて。


会長は静かに彼らを見ていた。

まるで機械のように感情のない目。


「話は聞いている」


低い声。


「幼くして魔法に目覚めたと」


マルオは思わず背筋を伸ばす。


「は、はい……」


少し震える声。


会長が鼻で笑う。


「雷か」


わずかに目を細める。


「魔力量も悪くない」


次にヒヨノを見る。


「雷」


そしてアカヤ。


「火と炎」


最後に十文字。


「影と闇」


会長は小さく頷いた。


「……面白い」


そのまま背を向ける。

そして歩き出した。


隣の部屋の扉を開く。


「ついて来い」


短い言葉。


マルオ達は顔を見合わせる。


マルオの父が手で促した。


「会長直々に」

「魔法の修行をつけてくださる」


穏やかな声。

子ども達を見る。


「行ってきなさい」


マルオは静かに頷いた。


そして歩き出し、

会長の背を追う。


マルオ。

ヒヨノ。

アカヤ。

十文字。


四人の子ども達は、

静かにその部屋へ入っていく。


扉が閉まる。


この日から——


彼らの魔法の鍛錬が始まった。


ーーーー 魔法の授業 ーーーー


広い講義室。


壁いっぱいに広がる黒板の前で、会長はチョークを走らせていた。


白い粉がわずかに舞う。


やがて書き終えると、振り向いた。


「召喚陣から出てくる魔物」


チョークで黒板を叩く。


「ゴブリン」


静かな声。


「それを魔法で倒す」

「単純なレベル上げだ」


教室は静まり返っている。


「それが、貴様らの主な修行方法になる」


淡々とした説明だった。

会長は続ける。


「魔力の質と量を増やすには」


黒板に簡単な図を書き加える。


「魔法を使用し、体内の魔力を刺激すること」

「そして——」


チョークを止める。


「レベルアップ」


振り向く。


「この二つが必須事項だ」


眼鏡の奥の目が冷たい。


「レベルが上がれば」

「必然的に、より強い魔法が使えるようになる」


教室は静まり返っていた。


その沈黙の中で、マルオが手を挙げる。

会長が横目で見る。


「……なんだ」


「質問があります」


「言ってみろ」


マルオは少し緊張した声で言った。


「魔物は、どこから来るんですか?」


誰もが一度は考える疑問。

会長は即答した。


「魔界だ」


短い言葉だった。


「人間が住む世界」


黒板に書く。


人間界


その横にもう一つ。


魔界


「人間が住む“人間界”」

「魔物が住む“魔界”」


会長は黒板に線を引く。


「そして、それ以外にも」

「それぞれの世界は実在する」


その時だった。

後ろから声がする。


「実際に行くことも不可能ではありません」


マルオの父、秀一だった。


「ですが——」


穏やかな声。


「やめておいた方がいいでしょう」

「命の保証ができませんからね」


会長の視線が静かに向く。

秀一は咳払いをして一歩下がった。


会長はマルオを見る。


「貴様らが将来、魔法教会に加盟すれば」

「いずれ分かることだ」


黒板を軽く叩く。


「そのために今」

「魔法について教えている」


静かな目。


「興味を持つことは良い」

「だが」


わずかに間を置く。


「首を突っ込まない方がいいこともある」


そう言いながら、

机の上にあったファイルを開く。


中から取り出したのは——


一冊の資料。

「レジスタンスの魔法研究資料」


ページをめくる。


「盗んだと聞いている」


会長の声は感情がない。


「レジスタンスは」


ページを閉じる。


「魔法教会執行部により」


一瞬の沈黙。


「捕縛、あるいは処理される」


教室の空気が凍る。


その意味は明白だった。

タカミザワ達が、そうなる可能性。


マルオは息を呑んだ。


魔法教会は、世界を守る組織。

秩序を守るためなら——


それも必要なこと。


その時。

後ろで手が上がる。


アカヤだった。


会長が言う。


「言ってみろ」


アカヤは少し首をかしげる。


「レベルって、なんですか?」


単純な質問だった。

会長は黒板を指す。


「レベルとは」


チョークを走らせる。


「強さの段階を示す指標」

「古代より、その概念は実在している」


そして少し視線を落とす。


「そして最近では」


眼鏡の奥の目が鋭くなる。


「“ゲーム”などを通じ」

「その概念を人間に植え付ける」

「プロパガンダを行う者も多い」


教室が静まり返る。


「それ故に」

「レジスタンスが存在する」


しばらく沈黙。

会長は深く息を吐いた。


「……疲れているのかもしれんな」


小さく呟く。


「つい仕事の話が出る」


眼鏡を掛け直す。

その時だった。


「あ、あの……」


ヒヨノが手を挙げる。

会長が視線を向ける。


「許可する」


ヒヨノは少し震える声で言った。


「レジスタンスが捕まったら」

「どこへ行くんですか?」


会長の目が細くなる。

答えは短かった。


「魔監獄」


教室の空気が冷える。


「世界各国から」

「最も危険とされる犯罪者が収容される施設」


会長の声は静かだった。


「そこへ送られる」


魔監獄。

極悪犯罪者の収容施設。


ヒヨノは思わず息を呑む。


もし——

もしミロク達が捕まれば。


そこに送られる。


会長は黒板を軽く叩いた。


「他に質問はないか」


誰も手を挙げない。

会長は頷く。


「ならば」


チョークを置く。


「実践に移る」


扉を開く。


「ゴブリンとの戦闘訓練だ」


静かな声。

子ども達は席を立つ。


これから始まるのは——


本当の魔法の修行だった。


ーーーー ゴブリン討伐 ーーーー


広い石造りの広間。


中央の床には、大きな魔法陣が刻まれている。


そして天井にも——

同じように巨大な魔法陣。


マルオ達は、その中央に立っていた。


会長が静かに言う。


「用事がある」

「ここからは任せる」


短い言葉。

マルオの父、秀一が一歩前に出る。


会長は静かに頷き、部屋を後にした。


重い扉が閉まる。


静寂。


秀一が説明を始めた。


「ここで、ゴブリンを召喚します」


床の魔法陣を指差す。


「床の魔法陣は召喚陣」


次に天井を指す。


「天井の魔法陣は捕縛陣になります」


子ども達は見上げる。

複雑な紋様が淡く光っている。


「召喚陣からは、弱いゴブリンが召喚されます」

「そして捕縛陣の力で、ゴブリンの自由を奪う」


秀一は続ける。


「その間に」

「君たちが攻撃魔法を行使して討伐する」

「そういう仕組みです」


淡々とした説明だった。


アカヤが眉をひそめる。


「動けない敵を攻撃するのか?」


ヒヨノも小さく言う。


「……なんか、可哀想」


秀一は二人を見る。

穏やかな表情のまま言った。


「ゴブリンは低レベルですが」

「知能のある凶暴な魔物です」


「捕縛が解かれれば」

「間違いなく攻撃してきます」


アカヤとヒヨノは黙った。

秀一は続ける。


「油断は禁物」

「注意して戦ってください」


そして少し微笑む。


「私がついています」

「大丈夫ですよ」


その言葉に、場の空気が少しだけ和らいだ。


秀一は魔法陣の前に立つ。


「では、召喚を開始します」


その瞬間。


秀一の身体から魔力が滲み出た。


黄色と白の光。

魔素が空気に満ち、魔法陣が反応する。


《ゴブリン召喚》


床の魔法陣が光った。


次の瞬間。

そこから現れたのは——


子どもほどの背丈。

痩せた身体。

緑色の肌。


醜い顔の小人。


十文字が小さく呟く。


「……あれがゴブリン」


秀一が頷く。


「はい」

「あれが、ゴブリンです」


次の瞬間。

天井の魔法陣が発動した。


光の鎖が落ちる。


ガシャン。


ゴブリンの手足を縛り上げた。


「ゲギャ!!?」


醜い悲鳴。

そして、必死に暴れる。


だが、鎖はびくともしない。


秀一が言う。


「最初は慣れないでしょう」

「ですが」

「それも最初だけです」


子ども達を見る。


「魔法を使ってください」

「攻撃してみましょう」


マルオが前に出る。


深呼吸。

緊張を整える。


そして呪文を唱えた。


《雷よ……拘束されし小鬼に雷を…》


震える声。

そして、掌を前に出す。


雷球サンダーボール


雷の球が生まれた。


青白い光。

それがゴブリンへ放たれる。


——直撃。


瞬間。


「ギャアアァァァ!!!」


耳障りな悲鳴。


ゴブリンの身体に電流が走り、

皮膚の一部が焦げる。


ヒヨノが小さく声を漏らす。


「ひっ……」


秀一は冷静に言った。


「四十ボルトほどでしょうか」


頷く。


「十分な電圧です」


だが。

ゴブリンはまだ生きていた。


秀一が言う。


「気絶しています」

「もう一度攻撃してください」


マルオの額に汗が滲む。


残酷だ。


だが。

攻撃手段がなければ"こちらが殺される"。


もう一度、深呼吸。


《雷よ……小鬼に雷を…》


呪文を唱える。


雷球サンダーボール


雷が再び落ちた。


ゴブリンは動かない。

声もない。


その瞬間。


捕縛陣が消えた。


焼け焦げたゴブリンの身体が

床へ崩れ落ちる。


ぺしゃり。


まるで、こんにゃくを落としたような音だった。


秀一が頷く。


「見事です」

「無事に倒しましたね」


その時だった。

マルオの身体が淡く光る。


驚くマルオ。


「……なに?」


秀一が微笑む。


「それが」

「レベルアップです」


マルオは呆然とする。

秀一は他の三人を見る。


「この調子で始めましょう」


マルオは少し高揚していた。


ヒヨノはまだ怯えている。


アカヤは唖然としていた。


そして——

十文字だけが静かに見ていた。


こうして。

彼らの魔法の修行が始まった。


ーーーー 十日後 ーーーー


それから、約十日。


年が明けて間もない頃。


魔法教会の執務室。


重厚な机の前で、秀一が報告を行っていた。


「少年たちは」


静かに言う。


「レベルが二十まで上がりました」


書類を机に置く。


「ステータスも申し分ありません」


会長へ資料を差し出す。


会長は無言で受け取り、

眼鏡の奥の視線が、紙面をなぞる。



丸尾 秀樹

Lv 1 → Lv 20


攻撃力 10 → 182

魔力 10 → 321

魔法適性 雷



小森 日和乃

Lv 1 → Lv 20


攻撃力 2 → 91

魔力 8 → 280

魔法適性 雷



赤谷 焔

Lv 1 → Lv 20


攻撃力 8 → 204

魔力 8 → 302

魔法適性 火/炎



十文字 白夜

Lv 1 → Lv 20


攻撃力 5 → 157

魔力 6 → 254

魔法適性 影/闇



資料を読み終えると、会長は机に置いた。


「……こんなものか」


低い声。


「伸び代は、期待するほどでもないな」


小さくため息を吐く。


秀一は苦笑する。


「まだ彼らは幼い」

「ですが、子どもとしては十分な成長率です」


どこか誇らしげな声だった。


会長が横目で見る。


「……親バカめ」


秀一は肩をすくめる。


「そちらこそ」


そして微笑む。


「娘さん。今年からでしたっけ?」


会長は一瞬、視線を逸らした。


「そうだ」


ぶっきらぼうな答え。


会長の娘は今年、小学一年生。

幼い頃から魔法の才能に恵まれた少女。


魔法教会内部ではすでに——


次期"大賢者"。


とまで噂されている存在だった。


秀一がぽつりと言う。


「息子さんがいたら」

「今頃は小学生でしたね」


その瞬間。


空気が凍った。

会長の目が鋭く光る。


「あの無能ゴミの話をするな」


低い声。

睨みつける。


秀一はすぐに咳払いした。


「……申し訳ありません」

「余計な一言でした」


会長は鼻を鳴らす。

そして顔を背けた。


「ふん」


しばらく沈黙。

やがて冷たい声が落ちる。


「我が家紋は」


机に指を置く。


「娘に継がせる」


それだけだった。


秀一はそれ以上、何も言わないことにした。


この話題は危険だ。


魔法教会でも、ごく一部しか知らない事実。


会長の息子は——

書類上、死んでいる。


だが。


それが真実ではないことも、

ごく一握りの人間だけが知っている。


そして。


その行方を知るのは——

会長ただ一人。


静かな執務室。

窓の外では、雪が降っていた。

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