97話 アーサーの確信:愛という名の統治
異変に気づいた国王アーサーが部屋へ駆け込むと、そこには降り注ぐ光の粒子に包まれ、静かに涙を流すリリアの姿があった。
アーサーは一瞬言葉を失い、ただその神秘的な光景――厳格な仮面を脱ぎ捨て、一人の女性として震える妻の姿に見惚れた。
「リリア……、これは一体、何が起きているのだ」
「アーサー様、ご覧ください。お姉様が……アリアお姉様が、世界の理に触れられたのです。わたくしたちがこの王都で守り抜いてきたこの国は今、真に救われました」
アーサーは促されるまま窓の外を見下ろした。
そこには、王城の庭園に突如として咲き乱れた黄金の花々と、天を裂くように架かる白銀に輝く虹があった。太陽の光が花びらに反射し、空気中の水滴が無数の光の粒となって舞い、王都全体がまるで生きているかのように輝いている。
街路に並ぶ石造りの建物も、瓦屋根も、木々の葉先も、黄金と白銀の光に染まり、まるで一枚の神聖なタペストリーのように眩しく輝いていた。風が吹くたび、花々はささやき、葉はそよぎ、遠くの鐘楼の鐘の音すら、この光に呼応するかのように清らかに響いた。
アーサーはリリアの細い肩を引き寄せ、その冷たかった手が、内側から溢れ出す微かな熱を帯びているのを肌で感じた。
「……アリア殿が失われた命を繋ぎ、未来を紡ぐというのなら、我々はその命が健やかに、そして誰にも脅かされることなく育つための盤石な家を築き上げよう。リリア、貴女のこれまでの厳格さは、これからは人々を育むための究極の優しさとして、末永く語り継がれるはずだ」
アーサーの力強い、迷いのない言葉。それは、これまで冷酷という誹り(そしり)を一人で受けてきたリリアの心を、これ以上ないほど深く、優しく肯定した。
リリアはアーサーの胸に顔を埋め、深く、深く頷いた。
窓の外には、黄金と白銀の光が王都の建物や街路を染め、まるで大地そのものが息を吹き返したかのような輝きが広がっていた。天空には虹が架かり、微風に舞う花びらと光の粒子が、街全体を柔らかく包み込む。
王都の夜明けは、秩序と生命が結びつき、静かに、しかし確実に新たな時代の幕開けを告げていた。
二人の瞳の奥には、秩序と慈愛、破壊と再生が織りなす完全な調和の景色が映り込んでいた。王都の夜明けは、ただ光に満ちているだけではない――それは、国と民、そして二人の魂の未来を約束する、永遠の福音の光でもあったのだ。




