天の剣
見渡す限り一面草花が咲き誇り、遠くには川が見える。空は雲一つない快晴で眠気を促す程の暖かさだ。
「ここが、アヴァロン…。」
「そう、私も来るのは初めてだけどね。とりあえず、早くマーリンを探さないと。アヴァロンは広いから見つけるのは大変だよ。」
「そうでもないよ。ほら、見つかったよ?」
突如後方から胡散臭そうな声が聞こえた。四人が振り返るとそこには風変わりな服装をした男が立っていた。
「マーリン!そっちから来てくれるなんて思わなかったよ。」
「やぁイヴ、久しぶり。そろそろ来る頃じゃないかなと思って待ってたんだよ。それで、聞きたいことは突如として現れた黒い浮遊物についてだね?」
「うん。あなたなら知ってると思って来たんだけど、どう?知ってる?」
「あぁ。全てではないけれど、ある程度なら知っているよ。」
四人はマーリンに着いていき、野原の中を歩いていく。
しばらく進むと綺麗な小屋が見え始め、そこに案内された。
「まぁ、狭いけど座ってくれ。」
四人は各々椅子に座り、マーリンは人数分のお茶を入れた。そのお茶は鴇色でほんのりと甘い香りがする。
お茶を一口飲みマーリンは話し始めた。
「あれはプロトタイプと呼ばれる生命体で、長い間仮死状態で宇宙空間を漂っていたんだ。ある時地球に落下し、その後大爆発を引き起こして地球を破壊した。
そして長い時間をかけて今の地球と月ができた訳だけど、その時にプロトタイプは月の内部で眠りについたんだ。
それをおよそ1万年前に蛇が発見し、利用して自分がこの世界を統べる計画を企てた。
そして蛇はプロトタイプに干渉することに成功するが、蛇の魂は吸収されてしまった。プロトタイプは他生物の魂を養分として活動していたみたいだね。
だが、取り込まれたはずの蛇の魂は寸前に分割し二つになっていた。残った魂はあらゆる手段を用いてプロトタイプの身体を掌握した。
その身体を動かすにはエネルギーが足りず、地球上の生物の魂を奪うことにした。
そして力は充分になり、今、最終目的に向け動き出したという訳だよ。」
「じゃああれが蛇の本体ということですね。ですがあの外殻は硬すぎます。ファムの矢でも無傷のあれは、僕の天の槍でも頑張って擦り傷をつけられるかどうかです。倒す手段はあるのでしょうか?」
「あるよ。このアヴァロンのとある場所に眠っている王ならば、あれを倒すことはできるだろう。でも、目覚めるまでもう少し時間がかかりそうなんだ。それまで時間稼ぎをしてほしい。僕はアーサーが早く覚醒できるよう努力してみるよ。」
「分かった、そっちは任せるよマーリン。私たちはアーサー王が目覚めるまでなんとしてでも時間を稼ぐよ!」
3人は強く頷いた。
そして天の馬に乗り、四人はハイドの国へ移動した。
「おっ、お早いお帰りで。で、どうなったの?」
「ハイド、留守番ありがとうね!とりあえず切り札が準備できるまで時間を稼ぐ!」
「なるほど、分かりました。となると早く手伝ってください。僕の盾でももうそろそろ防ぎきれなくなりそうです。あれ、徐々に力増していってます。」
「分かった。私はファムに伝えてくるから、ノアとアンマはここをお願い。風花よろしく。」
イヴと風花は天の馬に跨りファムの元へ移動した。
プロトタイプには天の弓の矢が降り注いでいる。それに構わず六つの鎌は攻撃を続ける。
「間近で見ると迫力凄いね。じゃあ早速、全開放の天の槍をお見舞いするよ。」
上空にはもう一つ影が増えた。それは富士山を軽く超える非常に大きな黄金に輝く槍だった。
凄まじい力を放つ天の槍の矛先はプロトタイプに向かい、突き刺さる。しかし、その黒い外殻は蝿が止まったかのようにものともしない。
「ファムの矢にアンマの槍、二つの神器で攻撃しても傷がつかないなんて。あの煙さえ無ければ俺も戦えるんだが…。」
「正直、今のあいつにはノアの攻撃も効かないかもしれないよ。攻撃力もだけど防御力も上がってきてる。時間をかけすぎると、その切り札も無意味なってしまうかもしれない。」
「攻撃をしているのが逆効果なのかもしれないな。しかし、それをしなければこの結界もすぐに壊されるだろう。少しでもエネルギーを防御に回させないと、こっちの負けだ。」
「マーリンさんに急いでもらうしかない。」
「ただいま、皆!もう少し耐えて!」
イヴと風花が合流した。風花は力を使いすぎたのかすごく疲弊している。本来ならたどり着けない地球の内側に移動したうえ、あちこちを飛び回るのは力をだいぶ消費するのだろう。
「待って!プロトタイプの内部に高エネルギーの集中反応がある!皆、絶対に防いでっ!!」
「イヴ様!あれを放たれたら盾はもう持ちません!」
「僕の槍とファムの矢で迎撃したとしても威力を1%削れればいいくらいですよ。」
「分かってる。ここにいる全員のエネルギーを天の盾に回しても防ぎきれないと思う。でも、なんとかしないと。今度こそ人類は滅びる。」
五人の覚悟も準備もできないまま、その高エネルギーは放たれた。眩い視界に耐えながら国中の生命が死を覚悟した。
「死んだ………。」そう誰もが思った。いや、思う前に本能が自覚した。
しかし、誰一人として命を落とす者はいなかった。
黄金の剣を携え結界の上に立つ蒼い瞳の青年は、黒いそれを睨み静かな殺気を放っていた。
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