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主人公に選ばれなかったヒロイン、要らないなら貰います  作者: 西藤りょう


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【個性爆盛り=普通に不審者】2


 玲奈からの提案を真正面から断ってしまった影響もあるのだろう。

 お互いに無言。なんとも言えない空気の中、二人は同じ傘を使って並んで歩いていると、結構な時間、玲奈と話していたからだろうか。


 片付けを終えたであろう他の生徒達が外に出てくるのが見える。


 中には同じ一年と思われる生徒もいて――チラチラと向けてくる視線が痛いが、気にしてもしょうがない。

 甘んじて受け入れるしかない。

 と、夕也は少し――いや、大分ウンザリしながら玲奈と歩幅を合わせて歩いていると、


「これ、実はヤバいこと……してる?」


 キョロキョロと周りを見ながら玲奈はそう言う。


「ん?」


「いやぁ、さっきから視線が……ちょっと居心地悪い」


 玲奈は被っていたフードをさらに深く被る。


(こうなるって分かっていたことだろうに……)


 夕也は考えなしで提案してきた玲奈に対して、ため息で意思表示をした。


「やめるか?」


「まだ平気。でも視線は気になるから、もうちょっと傘下げて」


「無理。身長差を考えてくれ」


「桐原が中腰になればいいんじゃん」


「嫌だよ。それ、違う意味で注目を集めることになりかねないし」


 そう言って、実際に中腰で傘を差す自分を想像する夕也。

 その無様な姿を思い浮かべただけで、げんなりした。

 

「っていうか、俺が言うのもアレだけど、相合傘あいあいがさしてる奴ら……多いよな」


 それは校門から出てすぐ。

 偶然気付いたことだった。

 

 玲奈の場合、傘を紛失――大方盗まれたか、間違えて持って行かれてしまったかだろうけど、傘が無いのにはちゃんとした理由がある。

 だから夕也と玲奈が傘を共有しているのは自然な流れだ。


 しかし他はどうだ?

 全員が全員、傘を失くしたわけでもないだろう。


 それなのに、多くの男女が相合傘をしていた。


 この梅雨の時期に傘を持ってこないという選択はない。

 事実、紫苑祭が始まる前までは、一人一本の傘を使っていたはずだ。


 夕也の頭上に疑問符が複数個浮かぶ。

 すると――


「あ、そっか。桐原は外部生か」


 何かに気付いたのか、右手をグー、左手をパー。

 合わせてポンッ!


 玲奈は閃いたポーズを見せた。


「そうだけど、それがどうした?」


「いや、紫苑祭には男女で相合傘をすると、結ばれる的なジンクスがあって、多分それだね」


「ふーん。そんなジンクスがあるのか。そっか、そっか――――この状況、ヤバくね?」


 気付く夕也。

 男女で傘を――それも人並外れた容姿を持つ玲奈と、相合傘なんてしようものなら注目の的になるのは必然である。


「だから傘を下げよって言ってんじゃん。今からでも遅くない。中腰でおねしゃす」


 玲奈は夕也が持っている傘の柄を手ごと握ると、下げるように促してくる。

 もしもこれが物語の一幕ならば、手が触れ合ってドキっとする展開なのかもしれない。


 事実、外からの見え方も、カップルがイチャついているようにしか見えないだろう。


 しかし、こと二人の場合は……いや、夕也に限ってそんなことはなくて――


(手、冷たっ!)


 文字通り、冷めたことを考えていた。

 その間も静かで下らない戦いが勃発していて……。


 二人はバタバタと傘の主導権を取り合う。

 すると、当然のように集まるのは周囲からの視線だった。

 

「手、そろそろ離して。見られてる」


「ふふ、もしかしてドキドキしてる感じ? いいぞー、もっとドキドキしろ!」


(コイツ! これが河野の本性か!)


 初めて見せた玲奈の新しい一面に、ムカつきを覚える夕也。


 これまでのやり取りを通じて、夕也は自分に下心的な興味がないことが分かったのだろう。

 彼女は夕也とのやり取りが楽しくて仕方ないといった様子だった。


 男子への警戒から作っていた壁はすでに崩壊。

 さらに調子に乗ると、ほぼ抱きつくような形で身体をくっつけてきた。


「おいっ! ちょ、ストップ!」


「はは、嫌だよ~! ほら、傘はうちが持つから中腰! 桐原は中腰で歩いて!」


 夕也の本能が警告音を鳴らす。

 第一に玲奈の体温、そして胸のダイレクトアタックが色々危ない。

 第二に周囲からの視線がとにかく痛い。

 そんでもって第三――これは非常に厄介な問題だった。


(あれ、クラスメイト……だよな)


 夕也のクラスメイト、つまりは玲奈にとっても同じクラスの生徒がそこに見えていたのだ。


 一人はクラスで中心的な人物である広瀬弘斗ひろせひろと

 もう一人は、同じくクラスの中で、弘斗と同様に存在感がある鳴海なるみまりん。


 少し先を歩いていた二人は、夕也と玲奈と同じように傘を共有し、相合傘をしていた。


 幸いにもアチラは気付いていないようだが、夕也たちの存在がバレるのは時間の問題だった。


「ちょっ、河野。一旦こっち」


 すでに手遅れかもしれないが、クラスメイトに直接見られるのは、色々と面倒なことが起こるだろうと予想した夕也は、玲奈を抱き寄せて、そのクラスメイトからの視線を遮るように傘でガードする。


「わわっ! 急になに――――あ」


 玲奈が先ほどまで浮かべていた楽しそうな笑顔。

 その笑顔は、弘斗とまりん――二人の姿を捉えた瞬間、跡形もなく消え去る。


 夕也は知らなかった。

 この世界が、恋愛シミュレーションゲームを模したような世界であることを。


 夕也は知らなかった。

 紫苑祭が主人公――広瀬弘斗が攻略するヒロインを選ぶ舞台であるということを。


 夕也は知らなかった。

 主人公が攻略するヒロインを選ぶ方法が、”一緒の傘で帰る”。というものだということを。


 そしてなによりも夕也が知らなかったこと。

 それは、”河野玲奈かわのれな”がこの世界に複数いるヒロインの一人だということを――夕也は知らなかった。


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