新年
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秋が過ぎて、冬がやってくると、やがて新しい年が明けた。
二〇二〇年——令和二年。
この年に開催を予定されていた東京オリンピックは、世界的に流行したウイルスの影響で一旦延期となった。
その他の各種イベントも自粛の動きが広がり、全国の学校においても卒業式や入学式の延期が相次ぎ、普段の授業においてもある程度の制限が課せられるようになった。
今年から六年生のクラスを担当することになった高原も、それらの対応に追われた。
同じく六年生を担当する狭野や他の教師たちと相談しながら、日々の業務をこなしていく。
「それで、今年の神楽はどうするの?」
仕事を終えて帰宅すると、高原は事あるごとに祓川に電話をかけた。
「あれは神事だからな。さすがに中止するわけにはいかない」
スピーカー越しに聞こえる彼の声も、心なしか疲弊しているように高原には感じられた。
日々の対応に追われるのは神社も同じだった。
不要不急の行事はことごとく中止に追い込まれ、毎年夏に開催されている花火大会も今年は取りやめになる可能性があるが、現時点ではまだわからない。
先の見通しが立たない中、しかし神事だけは怠るわけにはいかない。なんとか周囲の了承を得て、それだけは執り行う算段を立てるのが祓川の課題だった。
「神楽はできるだけ人を集めずにやる。拝観を規制して、舞台では俺と狭野の二人だけが舞う。お囃子も、今年は録音したものを使おうと思う。かなり簡素なものになるが、今回は仕方がない」
「そっか。じゃあ、今年は私も見に行けないのね」
二人の演じる神楽が見られないのは、心底残念だった。せっかく、幼馴染の二人が舞台上で舞う貴重なイベントだったのに。
本番までの練習も、このご時世でなければ何度も足を運んで応援しに行ったのだが、今回ばかりは我慢する他ない。
「高原」
と、電話の向こう側から聞こえる彼の声が、わずかに低くなったような気がした。
「君は今でも、狭野のことが好きなのか?」
「え……?」
唐突にそんな質問を投げかけられて、高原は言葉に詰まった。
なぜ今になって、またその話をするのか。
「前にも言ったが、狭野を追い求めることは、君を不幸にするだけかもしれない。いっそ忘れてしまえば、君は楽になれるかもしれない。それでも君は、これからもずっと狭野のことを想い続けるのか?」
残酷な現実を真正面からぶつけてくる、容赦のない指摘だった。
けれど、それが祓川の思いやりによるものだと高原は知っている。
「うん……。わかってるわ。あいつが私のことなんて眼中にないことぐらい。きっとこれからも、ずっと振り向いてもらえないことはわかってる。でも……笙悟のことを見ていられるだけで、私は幸せなの。時々でも一緒にいられるなら、私はそれでいい」
「なぜ、あいつにそこまで固執するんだ?」
スピーカーの向こうから、祓川の戸惑いが伝わってくる。




