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訳アリヒロインの娘ですが、お構い無く  作者: 宇和マチカ


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12/30

彼に似たひと

すみません、別の作品に投稿しておりました。

上げ直しお詫び申し上げます。混乱させてしまい申し訳有りませんでした。


ギリアムの話を聞くチャミラです。


「異世界種は、ですね。その、何故か。本人の意思に反して……パッと消えてしまうそうなんですの」


 ……え。

 消えるって。


「ど、どういうこと!?ギリアム、居なくなるってこと!?」

「い、今は分かりませんし、ギリアムさんが異世界種ってことが……間違いなのかもしれません、けど」


 ああ、シュラヴィさんの顔色が悪い。

 教えてくれただけの彼女責めても仕方ないのに。

 固い声しか、出ない。


「けど、何?」

「……断片的、に考えた結果で……わたくしの頭は良くないのですが。あの方が悪しきエセテ公爵に『キャリエル家の卵』を奪われたとショックを受けておられましたでしょう?」

「そ、そうだね。でも、それは……凄く前なんだよね?」

「はい。昨日考えましたが、確信に変わりましたの。調べた訳では有りませんが、ああもお若い方が『卵であったわたくし』の事情をハッキリと仰られると……実際見知ったように聞こえました」

「……見知った……。でも、計算が、合わないよ。

 シュラヴィさんが生まれたの、50年前で、孵化は30年以上掛かったんでしょ?その頃に、今15歳のギリアムが関わるなんて」


 否定してほしい。だけど、シュラヴィさんは困ったように首を振っている。


「詳しくは有りませんが、異世界種ならアリなのですわ。

 彼等はパッと消えてパッと現れるのです。10年前に消えた方が、その時の姿で明日現れることも有ります。逆も有るそうですわ……」


 ……そんな、お伽話みたいな種族が居るの?

 それが、ギリアムだなんて。

 ……普通、だったのに。そりゃ、ちょっと空から降ってきたりとか、お母さんを好きにならなかったりとか……変わったところはあったけど。


「……魔術とは、違うの?」

「異世界から紛れ込んだ……と言われていますので、魔術では無いと思いますわ」

「……異世界って、何なんだろう。え?」


 ……あれ?

 …………あれあれ?


 この、匂いは!!

 間違いない、ギリアム!!無事だったんだ!!


「良かったギリアム!追い付いたんだ!!」


 半年しか一緒に居なかったのに。

 それでも、やっぱり、ギリアムが居てくれないと……!

 そうだよ、王都で私の王女様疑惑が間違いだったら……ギリアムとえーと、ザブ……海の国に行こうって誘おう。

 前に行きたいって言ってたし、言語も習いたいって言ってたもんね。都会なら、本も買って帰れる……筈。

 少し、他の国にバカンス……位なら。


「……なんて嗅覚だ」

「え?」

「バグってんのか?よく見ろ、……狼王女さん」


 ……取った手は、ギリアムより大きい。

 見上げると……ゴーグルを下げて、暗い赤のマフラーを巻いた大人の男の人だった。

 ……長めの薄茶色の前髪から覗く、蜂蜜色の瞳……なのに。ギリアムと、全然、違う?


「……ご、御免なさい」

「……」


 い、嫌そう。そりゃ、そうか。無神経に腕を掴んで、覗き込むなんて……失礼過ぎた。


「……ちょちょちょっと!!貴方!ジュラン様にあれだけご心配をお掛けして、何シレッと戻ってますの!?」

「……首領に失礼なのは翼竜だろ」


 ……似てる、のに。匂いも、そっくりなのに……ギリアムじゃ、無い。

 何だか、鼻が詰まる……。アレルギー、かな。森の中を……走ったから、花の花粉を吸い込んで……。


「大体貴方が来るなんて聞いてませんわ!!そもそも貴方のご職業で護衛が勤まると思ってますの!?」

「……騒ぐと追手が来るぞ。おい、ボサッとすんな」


 ぶっきらぼうで、低い声。

 声変わりしかけの……ギリアムとは、違う声……。


「ちょ、ああもう!チャミラ様、あの者がご無礼を!!」

「あ、えと、うん……?その……グズグズしてたのは私だし……」


……さっさと先導する背中は、痩せてはいるけど……大人の男の人だ。

ギリアムじゃ、無い、のに。


急に人に会う日のようですね。

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