彼に似たひと
すみません、別の作品に投稿しておりました。
上げ直しお詫び申し上げます。混乱させてしまい申し訳有りませんでした。
ギリアムの話を聞くチャミラです。
「異世界種は、ですね。その、何故か。本人の意思に反して……パッと消えてしまうそうなんですの」
……え。
消えるって。
「ど、どういうこと!?ギリアム、居なくなるってこと!?」
「い、今は分かりませんし、ギリアムさんが異世界種ってことが……間違いなのかもしれません、けど」
ああ、シュラヴィさんの顔色が悪い。
教えてくれただけの彼女責めても仕方ないのに。
固い声しか、出ない。
「けど、何?」
「……断片的、に考えた結果で……わたくしの頭は良くないのですが。あの方が悪しきエセテ公爵に『キャリエル家の卵』を奪われたとショックを受けておられましたでしょう?」
「そ、そうだね。でも、それは……凄く前なんだよね?」
「はい。昨日考えましたが、確信に変わりましたの。調べた訳では有りませんが、ああもお若い方が『卵であったわたくし』の事情をハッキリと仰られると……実際見知ったように聞こえました」
「……見知った……。でも、計算が、合わないよ。
シュラヴィさんが生まれたの、50年前で、孵化は30年以上掛かったんでしょ?その頃に、今15歳のギリアムが関わるなんて」
否定してほしい。だけど、シュラヴィさんは困ったように首を振っている。
「詳しくは有りませんが、異世界種ならアリなのですわ。
彼等はパッと消えてパッと現れるのです。10年前に消えた方が、その時の姿で明日現れることも有ります。逆も有るそうですわ……」
……そんな、お伽話みたいな種族が居るの?
それが、ギリアムだなんて。
……普通、だったのに。そりゃ、ちょっと空から降ってきたりとか、お母さんを好きにならなかったりとか……変わったところはあったけど。
「……魔術とは、違うの?」
「異世界から紛れ込んだ……と言われていますので、魔術では無いと思いますわ」
「……異世界って、何なんだろう。え?」
……あれ?
…………あれあれ?
この、匂いは!!
間違いない、ギリアム!!無事だったんだ!!
「良かったギリアム!追い付いたんだ!!」
半年しか一緒に居なかったのに。
それでも、やっぱり、ギリアムが居てくれないと……!
そうだよ、王都で私の王女様疑惑が間違いだったら……ギリアムとえーと、ザブ……海の国に行こうって誘おう。
前に行きたいって言ってたし、言語も習いたいって言ってたもんね。都会なら、本も買って帰れる……筈。
少し、他の国にバカンス……位なら。
「……なんて嗅覚だ」
「え?」
「バグってんのか?よく見ろ、……狼王女さん」
……取った手は、ギリアムより大きい。
見上げると……ゴーグルを下げて、暗い赤のマフラーを巻いた大人の男の人だった。
……長めの薄茶色の前髪から覗く、蜂蜜色の瞳……なのに。ギリアムと、全然、違う?
「……ご、御免なさい」
「……」
い、嫌そう。そりゃ、そうか。無神経に腕を掴んで、覗き込むなんて……失礼過ぎた。
「……ちょちょちょっと!!貴方!ジュラン様にあれだけご心配をお掛けして、何シレッと戻ってますの!?」
「……首領に失礼なのは翼竜だろ」
……似てる、のに。匂いも、そっくりなのに……ギリアムじゃ、無い。
何だか、鼻が詰まる……。アレルギー、かな。森の中を……走ったから、花の花粉を吸い込んで……。
「大体貴方が来るなんて聞いてませんわ!!そもそも貴方のご職業で護衛が勤まると思ってますの!?」
「……騒ぐと追手が来るぞ。おい、ボサッとすんな」
ぶっきらぼうで、低い声。
声変わりしかけの……ギリアムとは、違う声……。
「ちょ、ああもう!チャミラ様、あの者がご無礼を!!」
「あ、えと、うん……?その……グズグズしてたのは私だし……」
……さっさと先導する背中は、痩せてはいるけど……大人の男の人だ。
ギリアムじゃ、無い、のに。
急に人に会う日のようですね。




