小舟にて君を待つも
お読み頂き有り難う御座います。
無愛想な大人にアワアワするチャミラです。
隣村には来たこと有ったけど、川に来たことは無かったかも。
考えてみれば……お母さんが目立つからあんまりレジャーとか……したこと無かったな。
用事を終えて、パッと帰った事が多かった。
有るのは知ってたけど初めて見る川には……灌木の間に、見たこと無い器具のついた小さい船が係留されてユラユラ揺れてる。
「早く乗れ」
……ギリアムと似た匂いのマフラーの人が促してきた。
あ、これで……王都に。
で、でもまだ追いついて来てない……。ギリアムが、来てない。
「あの……」
「本当に申し訳御座いません。わたくしが子供なので、チャミラ様の心のご負担が少ないかとお迎えにあがったのですわ。なのに、あの男……!!」
いや、うん……。
そ、それも有るけど……。わ、忘れてるのかな?
「あの、ギリアムを待ちたい……んですけど」
「あっ!そ、そうでしたわ!!気付かず申し訳有りません!!」
シュラヴィさん、忘れてたんだ……。さっきまでギリアムの話をしてたのに……。……あんまり細かいことを考えるのが苦手なタイプ……?
ううん、謝ってくれたのにそんな失礼なこと考えちゃ駄目だ。さっきからとっても丁寧に接してくれてるのに……。
「その内会えっだろ。急ぐんだ」
「え!?い、いえ困ります。ギリアムは私を逃がす為に……」
「お前、追われてんだろ。助ける手段も無いのにガタガタ言うな」
「エストール!!貴方ねえ!!チャミラ様に何て無礼を!!」
な、何なの……この人……。
確かに、私……何の力もない小娘だし、だけど……。
……何か、昨日聞いたギリアムの名前のひとつまで似てるのに……全然違う。
「わっ!!」
ひょいって、体が浮いた……。
えっ、こ、この人に……抱えられて船に……乗せられたの!?
混乱しすぎて……声が出てこないよ!!
「大体……狙われてるのはお前なんだから、守られとけ」
「ちょっと!!だから不敬ですわよ!!大体未だ追い付かれてませんわ!少し位……」
「お前ら、ココホレハマレの兵士の戦法を知らねえだろ。
追い付かれてない?アイツら地下から現れるんだぞ。水か空の上が一番安全なんだ」
地底から。そんな。それは、怖い。
想像して……喉がヒッて鳴ってしまった。
……ココホレハマレの人とは話したこと有るけど、そんな……敵に回ることが有るなんて……考えもしなかったから。
「足元から地底に引き摺り込まれたいか?翼竜」
「うっ……い、嫌ですわ!」
「すみ、ません……。考え無しで……」
謝ったのに、面倒そうに見られてる……。……迷惑を掛けちゃった……。
「あの」
「未だ何か有るのか」
「……私、チャミラです。……ご迷惑を掛けると思いますけど……宜しくお願いします」
「似たような挨拶しやがって」
「……!?」
「エストール!?あんた、さっきから口が過ぎましてよ!!大体、自己紹介位なさい!!」
「い、いいよ。シュラヴィさん。気にしないで。急いでるのに……いいんだ」
……私、この人によく思われて無いんだな……ってよく分かった。早く、着けば良いのに……。
遠ざかっていく岸辺には、ギリアムが来てくれる事もなくて、誰の姿も無かった……。
「……!!!!?」
「は、速い!!速すぎますわ!!何ですのこの船物理的におかしいでしょう!落ちます!!落ちるううう!!」
「ハーッハッハッハ!!急いでんだから飛ばすに決まってんだろーが!!」
10秒後、余りの猛スピードで意識を失いそうになる迄は、静かだった……。
ハンドルは付いてないけど、乗り物を運転すると性格が変わるスピード狂みたいですね。
勿論フィクションですので、運転は落ち着いて穏やかに行ってくださいませ。




