22話:鴉と氷が出会ったとき
時は、大分遡る。
そう、これは、まだ、フウキが生まれてすぐの頃。
紫の髪をなびかせながら、女性は、狂った世界に訪れた。
「はじめまして」
そこに居た小さな黒い狂った少女に話しかける。
「貴方は、誰なの?何で、ここに?」
女性は笑う。
「狂った世界に閉じ込められて、狂ったように笑う貴方に逢いに着た物好きの【氷の女王】よ」
狂った少女は、聞く。
「何のために、会いに来たの」
「そうね、一つ教えてあげるためかしら」
女性は言う。
「こことは別の世界に、【始まり】を継いだ子が生まれたの。貴方は、その子が、【壊れた輪廻のセカイ】に触れた時、教えてあげて欲しいの」
「ここから出られないわ。無理よ」
狂った少女はそう言った。
「大丈夫よ。貴方の枷を私が外すわ。このくらいの狂いだったら私単体でどうにかできるもの」
女性は、宙に指で何かを書き記す。
狂った少女には、それがなんなのか分からない。
あっと言う間に完成する黄金に煌く魔法陣。
特殊なそれは、特殊な目を持つものか、女性のように人を凌駕した存在にしか見えない。
「そうね……。フウキが【壊れた輪廻のセカイ】に触れたら狂った呪いが解けるように設定しておいたわ」
「フウキ……?」
女性は笑う。
「言ってなかったわね。篠宮風希。希望を運ぶ風の子、と言う意味で私が名づけた孫よ」
「そう」
「ええ、そうよ」
女性は、光の扉を開く。
「また、機会があれば逢いましょう。【狂った悪魔】さん」
「ええ、また【氷の女王】」




