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665―ハーツ―  作者: 桃姫
光の星――Dazzling light covers the sky and can cover up the world――
20/33

20話:【帝華】

 シリウスが帰った。その頃には、すっかり熱が下がり、安定した状態になっていた。シリウスにはなんだかんだで感謝しなきゃならないな。

 しかし、秋の暮れだと言うのに、部屋に熱気がこもり暑い。一体何事だ。熱源は近くにないし。

 何が原因かは分からないが、シリウスが帰った直後からだ。何かないかと、部屋を探してみるが、特に何も見当たらない。他の部屋かと思い、家中を探してみるが、特に変った点は見られない。

 しかし、両親の部屋に入った時に、違和感を察した。母、父ともに、行方不明。なので、俺が触らない限り、部屋のものが動く事はない。シリウスも掃除をしたのは、俺の部屋だけと言っていたので、シリウスが動かした可能性はない。

 ふと気付くと、右腕が熱い。黒い呪印が、大きな渦を形成して闇色を纏っている。何だ、コレは。


 気づけば、俺の視界は、銀色に染まっていた。躑躅でも狂った黒でもない。光でもなく。煌く銀色。

 眩い世界。そこは、雪の降り積もる白銀の世界だった。そこにぽつんと浮かぶ、紫の光。

「はじめまして、かしら。それとも久しぶり?」

 その女性は、美しかった。

 長い紫色の髪に白雪のように白い肌。

 すらっと高い背にバランスのよい四肢。

 とても気品のある整った顔立ち。

 美人や美女と言う言葉では表しきれない美貌。

 発せられた声は迦陵頻伽のごとき美しさ。

 シリウスよりも美しいと思う。この世のものとは思えない美しさ。

「貴方は……」

「私は、そうね……。貴方の祖母、に当たるのかしら」

 母方の、と付け足す女性。

 祖母と言うには若すぎる。まだ二十代だろう。

「とってもそうは見えないんだけど」

「あら、若く見られるのは嬉しいわね。でも、本当に祖母よ」

 嬉しそうに微笑む女性。

「マジで祖母っつーかばあちゃん?」

「ええ、まあ、ばあちゃんなんていわれるのは新鮮だけれど、そうよ」

 どうやら本当らしい。

「ふふっ、その腕、もう熱くないでしょ?」

「あっ、そう言えば!」

 先ほどまで熱く滾っていた右腕は、冷え切っていた。

「それにしても【輪廻】ねぇ。フウキ。貴方、【輪廻】を分かってもらったわけじゃないでしょう?」

 この呪印、【輪廻】って言うのか。

「あー、そこから分かってなかったのね?【輪廻】と言うのは、ね」



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