12話:鴉の話
俺は、朝起きて、カーテンを開けた。すると、そこには、烏がいた。
学校へ向かう途中にも烏がいた。
教室の窓の向こうにも烏がいた。
居眠りする屋上にも烏がいた。
今日は、まるで烏が俺を監視するように、烏に見られていた。
一度も躑躅の世界に巻き込まれず安心していたのに、それは起こった。
烏だ。
一羽の烏が、俺の前に降り立った。
「なんだよ」
俺は、烏に聞く。答えを求めてなどいない。
「邪魔だなあ、どっかいけよ」
そういいながら、俺は、烏から目を離し、家へと歩き出す。
バサバサァっと羽ばたく音が聞こえたので、どっかいったのか、と振り返ると、そこには、昨日の少女が居た。
昨日は、一瞬過ぎて、よく見ていなかったが、よく見れば美少女じゃないか。見れば見るほど美少女じゃないか。
残念ながら、未発達過ぎて、俺の守備範囲外だが、専門家が見れば、興奮してしまうほどの美少女だろう。
まるで、先ほどまでいた烏のように漆黒の髪とギラリと光る黄色い瞳。前髪はぱっつんと切りそろえられ、腰まで伸びた髪。ゴスロリと言うんだったか、黒を基調とした服がまたよく似合っている。
頭には、カチューシャと言うか、メイドが頭にしているような黒いフリフリのついたやつをしている。
そして、それら烏のような見た目に反した白い肌。
「おい、お前は……」
俺は、子供に対して「君」ではなく「お前」と言う二人称を用いた。普段ならありえないことだ。
「お前は、なんだ……」
得体の知れない何かを、彼女からは感じる。
ハーツ……?
「ハーツなのか……?」
「答えは否よ」
否定する。
「じゃあ、なんだ。お前は……」
なんだ、この不気味な感覚は。
「【狂った悪魔】と呼ばれていたわ」
狂った悪魔……。悪魔だってのか?ハーツ、獣人ときて、次は悪魔かよ。
「篠宮フウキ。ずっと、ずっと待っていたのよ。世界が狂い、壊れてから。【氷の女王】が来て伝言を聞いてから、ずっと、ずっと。永かったわ……」
永かった……?あいつ?妙に大人びた言い方で彼女は言う。
「はじめまして、そして、待っていたわ。改めまして、狂ヶ夜めると、よ」
これが、俺とめるとの出会いにして、世界のことを知った始まりの物語だった。




