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7人の異世界転生者  作者: 四宮五郎


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第3話 神の思惑

 ラゴス商店の一室を借り、ファーラウの町に暫く腰を据える事を決めたシオンこと俺は、翌日には冒険者としての登録を済ませた。

 とりあえず魔導士で登録し、最下位のFランクからスタートとなるが、地道に頑張って行こう。

 鑑定スキルを活用すれば定番の薬草採集クエストも午前中に片が付き、午後からは図書館でこの世界、アストレイアのことを調べる。

 因みにファーラウの図書館は一日の利用料が1000G(ゴールド)。蔵書の貸し出しや持ち出しは禁止となっている。

 そんな生活も早いもので2週間。町への入場税より高い出費になってしまったが、必要経費と思って割り切ろう。

 そして今日も午前中にギルドの仕事を片付けて図書館へやってきた。


「あら、シオンさん。いらっしゃい。今日も調べ物ですか?」


「こんにちは。まだまだ勉強不足ですから、もう暫くはお世話になりますよ。」


 すっかり顔馴染みになった受付の職員や司書さんと挨拶を交わしてから数冊の本を手に取って席に座る。

 本の表紙には「アストレイア世界史」「グラント王国史」「人族(ヒューム)魔人族(デモン)」とそれぞれ書かれている。

 これらの本は一度読み終えているが、自分の考えをまとめるために復習しようと考えていた。


 アストレイアには4つの大陸が存在する。

 人族(ヒューム)の暮らす中央大陸、その北に魔人族(デモン)の拠点となる大陸。中央大陸の西に小人族(ドワーフ)、南東に獣人族(セリアント)森人族(エルフ)が暮らす大陸がある。

 小さな島に独自の集団組織もあるようだが、大まかにはこのような分類だ。

 人類の歴史は戦争の歴史とも言うが、それはこの世界でも同じようで種族や国家間の争いは今でもどこかで起きているようだ。中でも一番大きいのはヒュームとデモンの戦いだろう。

 お互いを目の敵にして数百年前から繰り返される種族戦争は勇者の誕生、魔王の覚醒などの転機を経て、今なお続いている。

 そんな中で両陣営共に好戦派、共存派などの派閥が生まれ、国が別れて行く。

 ヒュームで言えば中央大陸を3つの国に分けている。

 北半分の領土を有し、勇者を擁して人神ミレイユの名の元に徹底抗戦を主張するソルシア神聖王国。

 南西には貿易で築き上げた巨万の富でソルシアを後方支援する商業国家、カークランド共和国。

 そして南東には共存を唱えつつもソルシア、カークランド両国に睨まれ、やむなく協力体制に組み込まれているグラント王国。一応俺が所属している国で、ファーラウは王国の西側、カークランドとの国境にほど近い場所にある。


 ヒュームの歴史書を読む限りでは、大体はデモンがヒュームの虐殺を始めたことから書かれていて、デモンを絶対悪と定義している。

 かつて初代勇者と当時の魔王がガチンコでぶつかった際にいくつもの山が吹き飛び、陸続きだった1つの大陸を北大陸と中央大陸と言う今の形にしてしまったようで、このまま争い続ければ世界が崩壊すると停戦共存説を訴え始めたのが初代グラント王らしい。

 かつての非道を許すことは出来ないが、世界が滅びては意味がない。

 勇者も魔王も抑止力として存在するだけで良い。と言うのがこの国の基本理念のようだ。

 要は核兵器だな。

 その考え方には賛成だけど、どこかの勇者王も持ってて嬉しいコレクションじゃないと言ってたように降りかかる火の粉を払い除けなければ理想も何もない。

 まぁそれがわかっているからこそ今の状況なんだろう。


 ふむ……。

 まだこの世界の一側面からしか見ていないが、なんとなくあの神様達の真意が読めてきた気がする。

 海神リヴァルドはこう言った。異世界の価値観を浸透させ、この世界の閉塞感を破って欲しいと。

 閉塞感と言うのは長く続く戦争で滅びの道への袋小路に嵌っているとも捉えられる。

 究極的にはヒュームとデモンを敵ではなく、手を取り合う隣人として認めさせるような新しい価値観を求めているのかもしれない。

 そう考えるとグラント王国に送り込まれたのもそう言う思惑があっての事の様に思えてくる。

 冒険者と言うよりネゴシエーターになりそうだな……。

 大体何百年も続く因縁を払拭しようなんて、1人の一生でどうにかなるとも思えないし、下手すりゃ命懸けになるかもしれない。

 ……なるほど、その為に転生特典の大盤振る舞いだったってわけか。

 とんだ狸共だな、あいつ等。

 そんな風に内心で愚痴ってしまうと、このまま僻地に逃げて隠居生活でも送ってやろうかと言う考えも沸いてしまうが、結局こんな世界で生きていく以上争いは他人事ではないのかもしれない。


「はぁ……。あっちもこっちも戦争で滅びそうな世界か……。堪んねぇな。」


 捌け口の見えない憂鬱な気分でそう溢しながら本を閉じると、書棚に戻していく。

 最後の一冊を所定の位置に戻し終えると隣の本の背文字が目に留まる。


「アストレイアの神々……。」


 なんだか神様に騙されたような気分の今はあまり目にしたくないワードだったが、無意識に手が伸びてその場でパラパラと捲り始めてしまう。

 そこには神話と共に神様の事が書かれていた。


『最初に空神ハルシオーネが空を作り、降り注ぐ雨と共に海神リヴァルドが産まれて海が作られる。その後、地神カルディオラが産まれ大地が作られた。これがアストレイアの創世であり、方々を原初の三神として崇める由縁である。』


 神様に姉弟の概念があるのか分からないが、これを読む限りあの見た目で長女なんだ……。

 そんな事を思いながらハルシオーネ神のページを開くと、魔法を放った時に手に浮かび上がった紋章が記され、こう書かれている。


『始まりの神であり、魔法の神。天空より我等を見守り、暖かな風と共に良き縁を運んでくれる慈愛の女神。』


 今は消えているが、あの紋章はハルシオーネ神の加護を受けた証なのだろう。

 それにしても慈愛ねぇ……。

 いまいちあの見た目とノリからはピンとこないが、まぁこの世界の人がそう思ってるならそうなのだろう。深くは突っ込むまい。

 ただ、自分たちが作った世界がそこに住む者達によって滅びようとしているのはどんな気持ちなのだろうかと考えてしまう。

 自ら介入するのではなく、こんな回りくどいやり方をする意味は何なのか?

 俺1人で考えたところで答えが出るわけでもなく軽く溜息を溢してから


「新しい人生をくれた恩もあるしな。出来る限りはやってみるさ。ただ、その結果どんな世界になっても怨みっこなしだぜ?」


 そう呟いて本を戻すと、図書館を後にするのだった。


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