78 エンは異なもの味なもの
78 エンは異なもの味なもの
ケスバ村についてからは村の人たちには待ちかねたぞと言わんばかりに大歓迎を受けた。
まあ、確かに少しスラクロの町で長引くことにはなってしまったので、実際のところも待たせてしまったのは間違いないのだけど。
今は冬の時期に当たるから物資も少なくなりがちだし、ボルファスさんがこのケスバ村の物資調達を一手に担っていると言っても過言ではないこの現状、当然の反応だろう。
「「お帰り、セイルちゃん!」」
ケスバ村のボクより少し年上の女の子たち、エイミーとカリンカが揃って駆けてきた。
他の子供たちも次々と寄ってくる。
「あい!」
ボクも元気良く手を振って応える。
「みんなにお菓子のお土産があるよ!」
「おみやげ?」
カリンカが首を捻る。
そのしぐさが可愛い。
ちなみに、この世界にお土産の文化はないわけじゃないけど、あまり浸透していないようだ。
それもそうだろう。
旅路も危険だし、積める荷物にも限りがあるから、毎回お土産なんてものを持ってくるだけの余剰はない。
今回は特別である。
で、このお菓子はスラクロの冒険者ギルドのギルドマスターのアトフィスさんからボクへのご褒美ということで、自腹で買ってくれたものであったりする。
「前途有望な子供への先行投資だと思ってくれればいいから」
と、アトフィスさんは言っていたので、遠慮なく貰うことにした。
それからしばらくはみんなにお菓子を配っていたので、子どもたちは大騒ぎとなった。
◇
クラードの森の前、ボクたちの家に行くための獣道のところまでやってきた。
すると。
突然、目の前の地面から、湧き出るように何かが上がってくる。
例えるならば、夏の海辺で造られたりする砂の彫刻が崩れていく映像を巻き戻して見ているようなイメージだろうか。
そして、徐々に形になっていく。
それは形が出来ただけにとどまらず、今度は生物の様な、言ってしまえば人間のような質感を帯び始めた。
白く透き通るような肌。
長く豊かで艶のある金髪。
整った顔立ちに青い瞳。
肌よりも白いヒラヒラしたギリシア神話に出て来そうな衣を纏った、16・7歳くらいの少女。
その姿は、神々しく、まるで女神にも見える。
勿論、姿形は違うけど、何処となく転生前に見た薄紫髪ツインテール少女神のパスティエルに雰囲気が似てる気がする。
懐かしくも見慣れた光景。
とは言っても、一か月も経ってはいないけど。
「エストグィーナスお姉ちゃん!」
ボクは嬉しくなって、思わずティニアお姉ちゃんと握っていた手を離し、エストグィーナスお姉ちゃんの元へと走り出す。
『おおっ、セイルよ!』
エストグィーナスお姉ちゃんも、待ち構えて抱き上げてくれた。
ティニアお姉ちゃんとはまた違ったフカフカ感。
「ただいま! エストグィーナスお姉ちゃん!」
『うんうん、おかえりなのじゃ。少し大きくなったのではないかのう?』
「あいっ!」
幼児期の一か月だからね。
『旅は楽しかったかのう?』
「あいっ! とっても楽しかったよ。後で話してあげる」
『そうかそうか。楽しみじゃのう』
そんなことを話していると。
「つっ、土の上位精霊様!」
声が裏返ったようなティニアお姉ちゃんの珍しい叫びが聞こえた。
ボクが振り返ってみると、ティニアお姉ちゃんが驚いた表情を浮かべてから、素早く片膝を地面につけて、恭しく礼をした。




