77 エン征帰り?
77 エン征帰り?
サーベニアお姉ちゃんが、帰宅後の家のお片付け予定を回避するため、文字通り逃亡してから、馬車に揺られること数日。
ようやく、ケスバ村が遠くに見えてきた。
とはいえ、まだ点のような大きさでしかない。
ボクの家はそこからさらに先の森の中に入っていくんだけど、ここまで来れば何となく、家に帰ってきたという気分になる。
今の季節は収穫も終わり、前世で言うなら季節的には冬なので、広がる畑にはほとんど何も生えていないため、とても見晴らしは良い。
今まで通ってきた場所とそう変わらないのに懐かしく感じる空気に心が躍る。
「たっだいまー!」
徐々に大きくなって見えてくるケスバ村に向かって、ボクが思わず荷台の上から身体をいっぱいに使って手を振る。
まだ、遠すぎて、向こうに聞こえるわけはないんだけど、何となく気分的に身体が自然に動いてしまう。
さり気なくティニアお姉ちゃんが後ろから、ボクが荷馬車から落ちないように支えてくれていた。
うん、とても面倒見の良いお姉ちゃんだよね。
狼人族の人は一見、怖そうに言われているけど、実際は仲間意識が強く、とても仲間を大切にする気質なんだそうな。
そういえば、前世の狼も、家族と認めたものの結束は強かったと聞く。
いろいろ御伽噺や迷信の影響で、かなり誤解されていたせいで、日本では絶滅の憂き目にあってしまったけれど。
その結果、山の生態系が崩れたと、どこかの記事で読んだ覚えがある。
今はどうなっているんだろうね?
話が逸れたけど、そういったあたりの血を狼人族のティニアお姉ちゃんも持っているのかもしれないね。
「セイルくん、危ないから、あんまり荷馬車から体を乗り出しちゃダメだからね」
「あい!」
なので、素直に言うことを聞いて、テニアお姉ちゃんの膝の上に座りなおした。
すると、ティニアお姉ちゃんは満足げに、ボクの髪を撫で始めた。
ちょっとくすぐったい。
あと、これだけ構い倒されているボクだけど、ちゃんと隙を見て毎日の日課であるネットスーパーの能力の一つである 一日一回の来店ポイント1ポイントを獲得して《ゲームにチャレンジ!》のダブルアップのゲームもこなしているよ。
現在はこんな感じ。
* * *
『現在の獲得ポイント』
2238 ポイント
《OK》
* * *
まだまだ道半ばにも到達してはいないけど、何となくこの旅で運気が上がったような気がする。
経験値とかあるのかな?
あるといいな。
まあ、運気が上がっているかどうかは家に帰ってから、ゆっくりと検証してみることにしよう。
そんなことを考えていると、どんどんケスバ村が大きく見えてくるようになってきていた。
門の前にはいつものように村の自警団の人が立って、見張りをしてくれている。
あちらも、こちらに気づいたのだろう。
「おーい! ボルファス達が帰ってきたぞお!」
村中に響く声で村の門を警備していたお兄さんが叫んだ。
普通に人が出入りするだけなら、こんな風に叫んだりはしないのだろうけど。
地方の村だからね。
こういうのは一大イベントになるのだろう。
行商人とか、旅の芸人一座とか。
村中の家の中から人々が出てきて、門の前に集まってくるのが見て取れた。
「大歓迎だね」
「セイル、そんな言葉、良く知っていたな。冬場は特に物資が少なくなるからな。みんな待ちわびているんだよ」
ボルファスさんは毎回、こういう出迎えを受けているんだろうね。
ボクは改めてみんなに聞こえるように言った。
「たっだいまー!」




