↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/78

76  離エン

76 離エン(縁)


 ボクたちがスラクロの町を経(た)って、2日が過(す)ぎていた。

 森や草原がゆっくりと後ろへ流れていく光景をぼんやり眺(なが)めていたり、サーベニアお姉ちゃんやティニアお姉ちゃんの膝の上でいろいろなお話、主に冒険談(ぼうけんだん)を聞かせてもらったりしながら過ごしている。

 帰り道は今のところ、意外と穏(おだ)やかだ。

 空は青く、何処(どこ)までも高く澄(す)んでいて、雲一つない晴天(せいてん)。

 道は長く続き、先は大きな道が2方向に分かれているようだ。

 このまま、何事もなく無事にケスバ村まで帰ることができるといいな。

 と、思っていたら。

「うーん」

 突然(とつぜん)、サーベニアお姉ちゃんが両手を組んで伸(の)びをした。

「さてと」

「どうしたんですか、サーベニア師匠(ししょう)?」

 何となく様子の変わったサーベニアお姉ちゃんの雰囲気(ふんいき)に気が付いてか、クリアお母さんが問(と)いかける。

「ランスとクリアの冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドへの異動手続(いどうてつづ)きも済(す)んだし、ラドンツのギルドマスターに報告に帰らないと、と思ってね」

「サーベニア師匠(ししょう)、特に正式な依頼ではなかったのでしょ?」

「まあ、そうなんだけどね」

「それなのに、報告(ほうこく)に帰るなんて、サーベニア師匠(ししょう)にしてはきちんとしてますね」

「もう、失礼ねクリアちゃんは」

 サーベニアお姉ちゃんが両頬(りょうほほ)を膨(ふく)らませて抗議(こうぎ)の声を上げる。

 エルフの見た目と相(あい)まって、かわいらしいと思ってしまうのだが、黙(だま)っておこう。

「その辺の信用は全くありませんから」

 それをクリアお母さんはそんなことは意に介(かい)さずといった様子で話を続ける。

「それよりも、今頃、ラドンツの町で店番を任されているエティスちゃんが泣いていますよ。きっと」

 そういえば、サーベニアお姉ちゃんはいくつかの町で雑貨(ざっか)とか魔道具(まどうぐ)とかを扱(あつか)うお店をやっていて、その一つを冒険者の知り合いに店番させてきたみたいなことを言ってたっけか。

 ……結構ひどい話のようにも聞こえるけど。

 いいのかそれで?

 しばらく一緒に生活していたけど、やり手なのか、ずさんなのか、よくわからない人だな。

 サーベニアお姉ちゃんは見えていた二股(ふたまた)の道に近づいていくと、手前辺りで、動いている馬車から、軽い足取りで飛び降りた。

 流石(さすが)と思うが、同時に良い子は真似(まね)しちゃダメだからねとも思う。

 元々、最初にうちに来た時からサーベニアお姉ちゃんは大した荷物を持っていた様子はなく、軽装(けいそう)だった記憶がある。

 前に少しだけ聞いてみたが、流石(さすが)というべきか、森と共(とも)に生きるエルフ族はたいていのことは森でなんとかできるらしい。

 そのため、通常の旅では大した荷物は必要ないということだそうだ。

「ティニアちゃん、セイルくんを頼(たの)んだわよ」

「あっ、はい!」

 いきなりの別(わか)れに、とっさには理解が追い付いていないようなティニアお姉ちゃんが緊張(きんちょう)したような声で答える。

 ほかの大人を見れば、サーベニアお姉ちゃんの行動に慣(な)れているのか、慌(あわ)てた様子もなく見ている。

「それじゃあね」

 そういうと、ボクたちが向かおうとしている道とは別のもう一方の道を走り出した。

 ルーの飛び跳(は)ね走行(そうこう)にもついてきた脚(あし)で、走っていく。

 流石はAランク冒険者(ぼうけんしゃ)というべきだろうか?

 すぐに姿(すがた)が見えなくなっていった。

 風のように現(あらわ)れて、風のように去(さ)っていったな。

 自由だなあ、サーベニアお姉ちゃんは。

「あっ、しまった!」

 ボクがそんなことを考えていると、クリアお母さんが何かに気づいたように叫(さけ)んだ。

「どうしたの? クリアお母さん」

「倉庫整理(そうこせいり)、逃(に)げられた」

「あっ!」

 そういえば、この旅から帰ったら、エストグィーナスお姉ちゃんの地下遺跡(ちかいせき)に置いてあるサーベニアお姉ちゃんの膨大(ぼうだい)な荷物の倉庫整理(そうこせいり)をするってことになっていたっけ。

 ……あれは逃(に)げ足だったのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。