69 エン護
69 エン護
スケベリーダー改め、アンザスさんとダニエルさんが、他の冒険者集団から分断され、ゴブリン達に囲まれつつあった。
ゴブリンはかなり頭が回ると言われているから、恐らくは、他の冒険者達より、圧倒的に弱いと見抜かれたのだろう。
そして、そういった者達を集中的に狙ってくる。
よく雑魚モンスター扱いされているシーンがラノベでは見られたが、実際にはなかなかに油断のできない魔物であると思う。
まあ、この知識もエストグィーナスお姉ちゃんの読んでくれたモンスター図鑑と、ランスお父さんとクリアお母さんの話の受け売りだけどね。
それにしてもだ。
全く。
身の丈も考えんと。
危険に突っ込みおって。
まあ、町を守ろうとする心意気は立派だけどね。
「とりゃあ!」
ボクの掛け声と共に、ルーが二人の横合いから割って入り、二人が相手していたゴブリンの数匹をまとめて殴り飛ばす。
「うわっ!」
「なんだ!」
二人は一瞬何が起こったか理解できなかったのだろう。
その場で呆けたように固まっていた。
が、しばらくして、再起動したらしく。
「変なゴーレムに乗った小僧!」
呼称が長くなった。
じゃなくて、「変な」を外せというに。
「おじちゃん達、何やってるの! 危ないでしょ!」
「それはこっちの台詞だ! 何で小僧が、こんなところまで出てきているんだ! 早くラドンツの町の中へ戻れ!」
「そうだ。俺達が抑えておくから、早く!」
ふーん、やっぱり、根は良い人達みたいだな。
本気で怒ってくれているよ。
でも、全然抑えられていないじゃないか。
ボクは恐らく、ルーの中にいればまず安全だと思うし。
なんと言ってもルーは同じガーゴイル、ドラゴイルのガーゴンと格闘ゲームよろしく鍛えていたんだから。
ただ、この二人を守りながら暴れるのはルーの戦い方だと、無理がありそうだし。
さて、この二人どうするか。
ランスお父さんが近くにいればいいんだけど。
キョロキョロ
う~ん、近くにはいないみたいだ。
ランスお父さんはかなり強いようだから、最前線に行っているのかもしれないな。
となるとどうしようか?
ほかに知り合いもいないし。
騎士が来るのを待つのは時間がなさそうだし。
キョロキョロ
あっ、あの人たちは!
クロスラの町に入る時に、列でもめてた二人のおじちゃん。
見立て通り、二人ともなかなかに強いようだ。
十分余裕があるみたい。
それにしても何でお互いもめていたのに近い場所で戦っているのかな?
まあ、この際だ、細かいことはこっちへ置いておくとしよう。
よしっ、あのおじちゃん達に、この二人の面倒をみてもらおう。
「スケ……おじちゃん達、ボクとルーに付いてきて。みんなと一緒の方が安全だよ」
アンザスさんとダニエルさんはお互い顔を見合わせている。
それにしても、危ない危ない。
思わず『スケベリーダー』とコードネームで呼んでしまうところだった、あははっ。
「どうする?」
「どちらにしろ、小僧を放っておけないだろう。ついていくしかないだろうな」
「そうだな」
どうやら考えは決まったらしい。
何でも良いから、付いてきてくれればいいや。
「じゃあ、いくよ!」
「「おう!」」
ボクたちがいる所から門で合ったおじちゃん達の所まではそれ程離れてはいなかった。
ただ、途中には何匹かの魔物が間にいたけど、比較的弱い魔物のようで、ルーが蹴散らしながら進んで言った。
流石ボクのルー!
強いね。
そして。
「てりゃあっ!」
ドーン!
走っている途中で勢いよく飛び上がり、二人の間に割って入る。
「うおっ!」
「何だ!」
流石に驚きはしたみたいだけど、アンザスさん達みたいに硬直せずに、すぐにこちらに構えを取ってきた。
「新手か!?」
「ちっ、よりによってゴーレムだと、しかも変な形の」
だ~か~ら、変な形の言うな!
ルーが傷付いたらどうしてくれるんだ。




