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25 エン熟?

25 エン()熟?


 エストグィーナスお姉ちゃんがボクが乗って遊べるようにと、前世で見た事のあるカンガルーとよく似た生き物のガーゴイルである『カンガーゴイル』のルーを作り出してくれてから1ヵ月ほど経っていた。

「ルー、ここで上にジャンプ!」


 ドン!


 カンガーゴイルのルーはボクの言葉に即座に反応を返してくれて、跳ねて走っていたところから踏み込み上方へとジャンプした。

 フワリと宙に浮く浮遊感。

 軽く3マトルくらいは跳び上がっているだろうか。ちなみにマトルはこの世界の長さの単位。1マトルは前世の1メートルくらいと考えてよさそうだ。ただ、そもそもの縮尺が同じ位なのかは分からないから、あくまで感覚的なものだけどね。

 この地下遺跡の大広間みたいな場所は天井も結構高いので多少飛び跳ねても問題ない。

 ルーは石とか土とかで造られているとは思えないほどの軽やかさと跳躍力だ。さすがファンタジー、と言いたいが、正確にはさすが異世界! 前世とは似ているけど、やっぱり違う法則が働いているのだろう。じゃなければ、石でできているルーがこんなに軽く高く飛び跳ねる事なんて出来るはずないし、何より関節の動きとかどうなってるんだ? 明らかに変だよな。

 初め、『ドラゴイル』のガーゴンに追い回されたときも、何で石像が動けるんだよと思ったけどね。

 前世で本を読んでいた時やアニメを見ていた時はそんなもんかと、さして不思議には思わなかったけど、いざこうしてみると前世では不可思議に見えることが、この世界では当たり前であることが沢山あることに気付かされる。

 よく、ラノベの本の中で「知識チート」って言葉が出て来ていたけど、確かに前世の知識が有効な部分もあるけれど、逆に「前世の常識が」「現世の非常識」になってしまって、思わぬ先入観で目先が曇ってしまうかもしれない。気を付けないと思わぬ落とし穴に落ちるかもしれないな。そう改めて思った。


 ドシンッ!


 しばらくの浮遊感の後、力強く地面を踏みしめて着地する。

 その時、袋の中に入っているボクに配慮してくれているのか、バネを効かせてボクには出来るだけ着地の衝撃が来ないようにしてくれている。

 ルーはなかなか気配りの出来る中位精霊らしい。どのくらいの年月がかかるのかは知らないけど、このままで上位精霊に育って欲しいものである。多分何十年とか、下手すると何百年とかいう話だろうから、ボクが生きている間には無理だろうな。

 それにしても、最初の頃、調子に乗ってスピードを上げたら上下の揺れに胃が跳ね上がって気持ち悪くなったけど、これも、流石は子供の身体というべきか、すぐに慣れて来た。三半規管が鍛えられたのだろうか。

「ガーゴン、競争しよう」

 エストグィーナスお姉ちゃんの隣で立っていたドラゴイルのガーゴンが首をブンブン縦に振って返事してくれる。

 すごくうれしそうだ。

 すぐに近くに寄って来て、隣に並ぶ。

 すごく、やる気みたいだ。

 同じ中位精霊同士でガーゴイルの身体を与えられたという仲間意識なのかもしれない。

 もしかしたら先輩とか兄姉とかいう意識があるのかな?

 「中の人」は魔核では無くて精霊だからあるのかもしれない。

「エストグィーナスお姉ちゃん、障害物作って」

『良いぞ。任せておくのじゃ』

 ニコニコと返事をしてくれたエストグィーナスお姉ちゃんが広場に向かって手を翳すと、地面が隆起したかのように盛り上がって来る。

 それは砂状で、徐々に形を変えていく。

 何度見ても不思議で奇妙な光景だけど、まるで、砂の彫刻が崩れていく様子の逆再生動画を見ているかのような気分だ。

 しばらくすると、広場にはちょっとした斜面や段差、柵やバーが出来上がった。

 これはボクが前世で知っているオフロードレースとか障害物レースとかを参考に、エストグィーナスお姉ちゃんと一緒に考えたものだ。

『位置について、よーい、ドンなのじゃ!』

 エストグィーナスお姉ちゃんが右手を挙げ、号令と共に右手を振り下ろす。

 その合図を受けて、ルーとガーゴンが一斉に走り出した。

 どうでもいいけど、ネットスーパーのパスティエルのコスプレキャラのアニメーションを見てるせいで、エストグィーナスお姉ちゃんがレースクィーンのコスプレをしたら似合うだろうな、なんて思ってしまった。


   ◇


 ひとしきり遊んだあと、

 もちろん、勉強もしっかりして来たよ。

 地下から上がってきて、リビングのお気に入りの場所で、毎日の日課のネットスーパーの能力の中の一日一回の来店ポイントとそれを使ったダブルアップを行なう。

 最近、幸運度が上がったみたいと思ってはいたけれど、本当に幸運度が上がっていたとは。

 マジックアイテムで幸運度を上げることはできないだろうかと考えてはいたけれど、まさか、上位精霊であるエストグィーナスお姉ちゃんから精霊の加護が貰えて幸運度も少し上がっていたとは思わなかった。

 道理でここんとこネットスーパーの能力の《ゲームにチャレンジ!》という、一日1回挑戦できる連続ダブルアップのイベントに3連勝しやすくなっているわけだ。

 もちろん物凄く上がった訳じゃなく、あくまで精霊の加護の影響の一部と言った程度のものらしいけど、それでも全くの手立ての無かったボクにとっては凄く有り難い事である。

 これなら、今まで自分の前世での経験から、3連勝したところで止めておくのが無難だと思って止めていたのを5連勝くらいまでねらってみても良いかもしれないと思い、また、以前みたいに様子見しながら慎重に検証している。

 で、検証の途中だけど、現在はこんな感じ。


   *   *   *


   『現在の獲得ポイント』


     1542 ポイント


   《OK》


   *   *   *


 一度、調子に乗って6連勝まで試して見たけど、一回成功しただけで、それ以降がうまく行かなかった。

 その日のミニゲームの内容にもかなり左右されるけどね。

 双六なんかに当たった日には大変なことになる。

 しかも、いくら赤ちゃんで時間が有り余っているとはいえ、時間が掛かるだけ掛かった後負けると精神的疲労が半端ないし。

 双六ゲームじゃなくても、何度か折角5連勝したのに、勿体ない事をしたこともあった。

 ほんと、いてもやみきれない。


   ◇


 日課のネットスーパーの《教えて!パスティエルちゃん》巡りも追え、 ……もうすっかり慣れてるな、ボクが日向でうとうとと微睡まどろみ始めていた頃、家の外辺りで何やら音がしたような気がした。

「ランス、いるか!」

「んっ?」

 ふと、意識が戻って来ると、確かに玄関で扉を叩きながら声が聞こえる。

 ボクは眠い目をこすりながら、ボルファスさんかなと思いつつ玄関を覗こうと、ドアを開けると玄関にはケスバ村の自警団の取りまとめ役のリックさんがクリアお母さんに出迎えられて入って来る途中だった。

「リックさん、いらっしゃい!」

「ようセイル、ちょっと見ないうちに、少し大きくなったな」

「あい!」

 そう言えば、ここんとこ地下でエストグィーナスお姉ちゃんと遊んだり勉強したりしてたから、ケスバ村には行ってなかったっけ。はたから見れば、お留守番をしていたようなものだけど、考えてみると、上位精霊であるエストグィーナスお姉ちゃんに子守を任せて外出しているランスお父さんとクリアお母さんって、かなり肝が据わっているのではないだろうか?

 リックさんがボクを抱き上げて重さを確認するかのように何度かボクをを上下に揺らす。

「どうしたリック?」

 そうしていると、奥からランスお父さんがやってきてリックさんに尋ねる。

「ランス、今お茶を入れるから、こんな所じゃなくてリビングで聞いたら?」

「そうだな。そうしようかリック」

「すまないクリア」

 そうして三人、ボクはリックさんに抱っこしてもらったままリビングへと移った。

 机を挟んでリックさんとランスお父さんが座り、クリアお母さんがお茶を用意した後、ランスお父さんの隣にボクを膝に座らせて席についている。

 ちなみにボクのコップにはミルクが注がれている。

「で、リック、話というのはなんだ?」

 皆が一口お茶を飲んだ後、ただ遊びに来たわけではなさそうなリックさんの雰囲気に、いつもの軽い調子のやり取りもなくランスお父さんが切り出した。

 リックさんはコップを机の上に置くと、神妙な面持ちでゆっくりと口を開いた。

「去年のオークの襲撃があった以前から、ゼバスの森に徐々に魔物が増えているのは知っていると思うが」

「ああ、ボルファスから聞いて、俺も時折足を延ばして見に行ってるからな」

 へえ、ランスお父さん、たまに家を空けてたけどそう言うことしてたんだ。

「それでだな、実はゼバスの森の浅い場所に、魔物の巣が発見された」

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