2 明け渡しカウントダウン(5)
藤沖とクラスとの温度差は乙彦も感じてはいた。たいした問題と思っていなかったのは、ひとえに今までの面倒な出来事が重なっていたからた。すっかり忘れていたと言っても過言ではない。
「でもね、またなんにも起きていないんだからあまり気にしてもしょうがないよね。私としてはとにかく、クラスの平和を願うだけなのよ。一旦修羅場を経験しているんでね。早目に芽を摘んでおきたいというのはあるよね」
「修羅場か」
「ほらご存知の立村の一件をはじめとして、私たち附属上がりは過去の事例をいろいろ味合わされてきたわけ。さらにこれからは新井林やら佐賀さんやら霧島とか色々出てくるわけじゃん。なんとかしなくちゃと思っていた矢先にこの騒ぎでしよ。たまったもんじゃあないよね」
「古川としてはこれからどうしたいと思っているんだ?」
古川の感慨はわからなくもないのだか、乙彦としてはまず行き着くところを知りたい。あまりまどろっこしいのは得意ではないというのもあるが、やはりこの部屋の状況からすると最優先事項は引っ越しの片付けではないだろうか。時間を無駄にしてはならない。
「そう、そこよ。まずさ、新学期になったらとりあえずは評議に潜り込む。みんな面倒なことは考えてないだろうから心配はしてないけど、万が一誰かが藤沖を落とすなんてこと企んでいたらことじゃん? まずは様子見。私も再選を果たすと。そのつもりだったのよ」
「それから」
「藤沖ともじっくり話をしてクラスとのうまい連携を頼むから取ってよねと可愛くおねだりもねえ。あと女子たちに藤沖の男らしさをさり気なくアピールしておく、ってとこかな。まあこれでも結構考えてんのよ。クラス替えのない我がA組のためにね」
要は、藤沖を無難に評議として置いておきたい、それだけだろう。それならなんとかなるような気がする。荷物片付けより優先する内容ではないように思う。
「あとはねえ、立村がこれからどう出るか、実はここが私、かなり心配なんだ」
「心配?」
「今はおとなしくしているし、地味ながら居場所もある。私達も友だちとしてはいろいろ考えるとこあるけど、クラスの中ではまあ無難だよ。けどさ、これから藤沖がだらだらしづつけてたら、吹奏楽部の連中が立村をむりやり担ぎ出さないとも限らないし。立村も、他の子たちからちらっと話を聞いてるんだけど、気になることがそれなりにあるんだ。いろいろとね。その辺りも確認して話をしときたかったんだ。でもね、今だとそれも難しいかなあ」
ざわつくものを感じつつ乙彦は尋ねた。
「あんたもわかってると思うけど、あいつ、杉本さんのことちゃんと見けりつけたのかなあ」
「つけた、んじゃないのか?」
条件反射的に乙彦も答えた。
「ここ数日の様子だと、やたらと吹っ切れていてぞ。それこそ吹奏楽部の連中とはしゃいでいるが」
「まじでえ?」
方で大きく息をつく古川。やんやといった風に頭を振った。
「どん底まで落ち込んでいるか、杉本さん追いかけて家出するか、色々想像してたんだけど、ふっきれたはなかったわ!」




