19話 猫耳少女は仲間のために戦う 4
「そんなに、ぼろぼろでまだ剣を構えるか? そんなに死にたいのか?」
「私は死ぬために戦ってない。生きるために、戦っているの。だから、私は死ぬまで戦うよ」
ティアラ達と旅を始めてたからずっとそうだ。自分には諦めるなんて言葉は似合わないと思いながら、ずっと戦ってきた。だから、今も諦めるわけにはいかない。
必ず、この悪魔に私の刃を刻んでやる。
はあと呆れたような態度で息を吐き、鋭い視線で私を突き刺す。
「あっそ、なら殺してあげるよ」
さっと砂塵を巻き上げて、悪魔は姿を消した。
私は落ち着いて、周囲に視線を向ける。
力があるのに、音もなく動く敵は厄介だ。だけど、見えてしまえば話は変わる。
気づけば目の前で、悪魔は槍を私に向けて突こうとしていた。
私は軽く剣を下から上に振り上げる。真っ直ぐ私を狙っていた槍は弾かれ、目的を失い宙を舞う。
「弾かれた……!?」
――――隙が見えた。
私は素早く構え直して、真っ直ぐ向かってくる悪魔に向かって、剣を横に薙ぐ。
月の光が、刃先を照らし煌めく。
エイブルは目を見開く。
「――――ぐ!?」
素振りをしている時よりも軽く、素早く、力のない剣の振りが空気を斬る。
確かな手ごたえをわずかに感じた。
剣を振りぬいた時には、すでにエイブルは私の背後に立っていた。
息の間もつかせないように、すぐに私は背後の気配に向かって剣を振りぬく。だが、その攻撃は後ろに回転しながら飛んで躱され、距離を取られる。
刃先を見ると、赤い血がついていた。だが、すぐに消滅していく。
再生したか……早いな。
「この姿の僕を斬るなんて、すごいね」
「姿が変わっても、私の目に見えるものは変わらない。つまり、そういうことだ」
「ふーん……よくそんなんで余裕な態度を取るね」
「今、お前の目に私が余裕に見えているなら、お前の目は節穴だな」
余裕なんてない。ここまで、ぎりぎりの戦いを迫られるなんて初めてだ。
だからこそ、集中してるんだ。一手が命取りになるとわかっているから。
「ふっ……余裕じゃないなら、この攻撃は見えてるってことだよね」
にやりと不気味な笑みを見せるエイブル。
私はぞくりと背中に寒気が走った。
くる……。
私は目を閉じて、周りの気配に神経を尖らせる。
エイブルが手を前に構えた。なにをするつもりだ。
「まさか!?」
私は気配なんかよりも、自分の直感を信じてエイブルに背中を向ける。
目を見開くと、さっき弾いた槍が私の方向に飛んできていた。
私は飛んでくる槍に向かって、剣を振ろうと構える。
「いいのかな? 僕に背中を向けて」
そんな声がして、私は背後の殺意に気づく。
まずい……挟まれた。
額から汗がゆっくりと流れる。街の静寂が、空気がゆっくりと流れていくような気がした。
私は手に精一杯の力を込めて、剣を振ろうとした時だった。
私の胸の辺りに小さな光が輝く。月のような優しい温かみがある光は、ゆっくりと胸から剣を握る手に向かって、流れていく。
考えるよりも先に、私は剣を振った。
一回転するように、前からくる槍も、背後から攻撃を仕掛けるエイブルも同時に斬るように私は剣を振りぬいた。
「な、なんだこれ!?」
月のような光の斬撃が全方向に向かって、飛んでいく。
それは、槍を弾き、エイブルの腹部を切り裂いた。
私はこの光に見覚えがあり、すぐにその答えの方へと視線を向ける。
だが宿は静かだった。
ティアラの光がなんで私に……。
そんなことを考えていると、もう一つの答えが頭の上にあることに気づいた。
いや、気づかされた。
「キュー!」
頭の上でキューが同じ光を放っている。
「まさか、キューがこれを?」
「キューキュー」
「おい、なんだその力!」
怒りを見せるように、エイブルは立ち上がり私を睨む。
「傷が再生しないぞ!」
斬りつけられた腹部から、赤い血が地面に垂れている。
「どういうことだ!!」
「私もよくわからないや。だけど……」
私はゆっくりと剣先をエイブルに向けて、笑ってみせる。
どういう原理なのか、全くわからない。だけど、これだけは確かだ。
「あなたに私は勝てるってことはわかった」
歯を食いしばり、エイブルは殺意をむき出しに私を睨む。
「なんだと……」




