第40話 掴んだ闇
「あら?
カナイチくん、何か用かしら?」
「はい。
カナイチがどうしても、
戻って調べたいことがあると言って、
聞かないもので」
カナイチは再びジョウマ・エーマンが、
殺害された現場に戻ってきた。
現場にはまだマリナが捜査している。
玄関付近には見張りがいるが、
カナイチだからこそ、
通してくれたようだ。
「ええ。
現場を調べても構いませんか?」
「構わないけど、
指紋は付かないようにね」
「わかってますよ」
カナイチは手袋を嵌めて、
現場を見渡した。
アドランは玄関付近で待機。
待機していても、
犯人が強襲しても構わないように、
構えている。
「今回の事件で何かわかったことがあるのかしら?」
「はい。
色々と……
マリナさんは?
床に散らばったガラス片から何かわかりましたか?」
「数が数だけにまだよ……
何枚かの写真は、大雑把だけど、
風景画や記念撮影の写真が多いなって、
印象よ。
正直、何故犯人が写真を壊したのか、
理由は不明よ」
「なるほど」
カナイチはキョロキョロとしている。
「被害者、ジョウマ・エーマンの死体は?」
「すでに回収班が誰にも見られない場所に、
回収したわ。
不気味だしね」
「彼の服とかから何か出てきました?」
「出てないわね。
臓物とかなら出ていたけどね」
臓物とかが出ていてなお、
マリナは平気そうだった。
ギルドの仕事を含めて、
凄惨な事件と事故に遭遇しやすい立場故、
なのだろう。
「カナイチ、何かわかったの?」
「まあね。
でも、証明できるものがーー」
カナイチは被害者が殺害されたベッドの下を、
手を突っ込んで探ってみた。
「カナイチ?」
「ん?」
すると、カナイチの表情が変わった。
「何か見つけたの?」
「え?」
マリナとアドランは驚いたように、
カナイチの背後に駆け寄る。
カナイチが見つけたものは、
黒い箱だった。
しかも、黒い箱は頑丈そうで、
上からのしかかっても、
中の物が壊れないようにしている。
「カナイチくん、知っていたの?」
「多分、見つかるだろうなとは思っていました。
人間は大事な物ほど、
何でもないところに隠す物なんですよ」
「大事なもの……
殺されたジョウマさんは、
黒い箱が大事なものだったの?」
「……でも、隠し方はまるで、
男性冒険者が宿のベッドの下で、
いやらしい物を隠すような感じね」
ギルド職員が故に、
男性冒険者の下事情などにも詳しいのだろう。
「かも知れません。
恐らく、犯人は男性がいやらしい物を隠すために、
ベッドの下などに隠す修正を知らなかったのでしょうね」
「……カナイチくん、もしかして、
あなた、犯人が誰なのか気づいているの?」
「ええ。
そして、犯人が何故サトシ・ボーマンの名を語ったのか……
何故、二つの殺人を犯人がやらなければならないのか……
何故、ギルド職員も冒険者も、
大規模な検査をしているにも拘らずに、
爆弾を所持し、殺人に使えたのかも……」
「黒い箱の中身も?」
「はい」
カナイチはこっそりと黒い箱を開けた。
中に入っていたものはーー
「……写真の湿板?」
何が撮ってあるかわからないが、
チラッと見える範囲で言うのであれば、
マリナが言ったように写真の湿板だった。
「アドラン、マリナさん」
「「?」」
「黒い箱の中身が写真の湿板なのは確認しました。
けど、何が撮っているのか、
何があっても校外しないと約束してくれませんか?」
「何が……」
「あっても……?」
「今、僕が持っている写真こそ、
犯人が何があっても壊しておきたいものだったのですよ。
写真のために、犯人の人生は狂わされた。
写真の破壊こそが目的だったのです。
床に散らばった写真のガラス片も、
今持っている写真を壊すためなんですよ」
「……犯人にとって重要な写真……」
「カナイチくん、あなたの言い方だと……
被害者は秘密の写真を使って、
犯人を強請っていたことになるわ。
脅しの写真」
「はい。
いえ、強請っていたのは何も二人だけではありません。
もう一人、いたのですよ」
「もう一人……」
「……僕は確認します。
見たいのなら、さっき言ったように、
外には絶対に校外しないこと……
約束してくれますか?」
「……わかったわ。
カナイチが言うのなら」
「……わかったわ。
……必要ならギルドが秘密保持のための、
契約書を用意しておくわ」
「……ありがとうございます」
カナイチは意を決して写真を開示した。
「……写真の湿板……
……行為中の写真のようね?」
「男性が女性を……
……え……
ま、まさかーー」
写真の秘密に気付いたのか、
アドランの顔から血の気がさっと引いた。
まるで、写真の中に潜む闇に気づいたように。
「……やはり、そうだったんだ」
カナイチは、少しでも信じたくないような感じで、
目を瞑っていたが、すぐに開いて、写真をしまった。
「……か、カナイチは気づいていたの?
写真の秘密……
見る前に……」
「そうだよ、アドラン……
調べる内に……
過去に起きた秘密を……」
「……犯人にとってサトシ・ボーマンは何だったの?
サトシ・ボーマンは犯人のこと……」
「……サトシ・ボーマンに関しては、
亡くなったので何とも言えない。
けど、二人に関して言い表すのなら……
少なくとも、
犯人がサトシ・ボーマンや彼の仲間に対して、
抱いていた感情は……
“感謝”、
“救いの象徴”……」




