第35話 事情聴取
「事件解決まで僕の護衛を頼むよ、アドラン」
「……わかったわ。
マリナさんからの要請だし……
私も親友のパーティーを誰がめちゃくちゃにして人殺しまでしたのか……
知りたいしね」
「ありがとう。
じゃあ、早速二人のことを聞いてみるか」
そして、カナイチは事情聴取を開き、会場内にいた全員に聞いてみた。
「え?
殺されたのはエーマン一族だったのですか?
お気の毒に……
知っているか?
もちろん、知っていますよ。
何せ、珍しく写真を扱う人だからね。
我々のような貴族の写真を撮ってくれることも珍しくないさ。
確か、キミコさんも最近、撮ってもらったと言っていたね」
「まさか、ジョウマさんが殺されたなんて……
はい。
確かに先週に写真を撮ってもらいました。
感じのいい人だったと記憶していますが……」
「私生活の方はどうだったのでしょうか?
ご友人とか……」
「私生活?
いえ、知りません。
だって、写真を撮る人よ?
付き合いなんてそれくらいしかありませんし……
殺される理由なんて、もう呪われているとしか言えませんわ。
ほら、祖父が行方不明になったでしょ。
しかも、サトシ・ボーマンによって殺されて埋められたって話じゃない。
彼の父親も最近、亡くなったと聞きますし……」
「ちなみに亡くなった理由ってわかりますか?」
「亡くなった理由?
確か、父親は老衰だったわ。
母親も父親が亡くなる前に病死していて、事件性はないわね。
ただ、一人っ子なのに……
もう、エーマンの写真は撮れなくなったわね」
「ゾウゴと呼ばれる男性については何か?」
「さあ?
馬車を乗ってきたのだから金はあるようだけど……
ゾウゴっていう人物が貴族の中にいたかどうか。
確か、エーマン一族に写真を撮ってくれたからとカコ様に聞いたことありますわ。
だから、二人はカコ様に招待されたと思います」
「なるほど……
ありがとうございます、キミコさん」
そして、カナイチはカコにも事情を聞こうとした。
「キミコさんから聞きましたけど……
カコ様が二人を招待したのですか?」
「……ええ、その通りですじゃ。
彼の祖父、メラカ・エーマンには私の他にも父……
ゴンゾウ・ハルトマンの写真も撮ってあります。
おかげでゴンゾウ・ハルトマンの顔を忘れずにいます」
「……今回の事件でアナタの父親を殺した犯人……
サトシ・ボーマンを名乗った人物が犯人のようですが……
アナタはどう思いますか?」
「……そう名乗った人物にも事情があったと思います。
最近、話題になった爆弾魔ですし……
逃げ切りたいと思う不届者が名乗ったのでは?」
「なるほど……
時効になるまで自分がサトシ・ボーマンだとバレなかったから……
不届者がそう名乗るのはおかしくはありませんね」
「ええ……
ジョウマ・エーマンは祖父との繋がりで招待しました。
祖父が白骨化した状態で発見されたので気晴らしになれば良いと思って……
ジョウマは友人も招待したいと言っておりましたので……
ゾウゴも招待させました」
「お二人の性格などは知っていましたか?」
「いいえ、知りません」
「……ありがとうございます。
次はミレイさんを呼んでくれませんか?」
「孫娘をお疑いに?」
「いえ、形式的なものですよ」
そして、カコはミレイを呼んだ。
「まさか、カナイチくんに事情聴取されるとは思わなかったわよ。
……アタシ、犯人じゃないわよ?」
「まあまあ、形式的なものだから……
ジョウマ・エーマン、ゾウゴ・カネモリに関して知っていることありますか?」
「え?
エーマンってあれでしょ?
サトシ・ボーマンに殺されたっていう」
「祖父がそうですね。
彼個人に関しては?」
「う〜ん……
どうだろう?
お婆様からゴンゾウ様の写真を撮ってくれたって言っただけで詳しくないしな〜」
「……実はジョウマとゾウゴはミレイ先輩……
アナタを狙っていたんですよ」
「え?」
「……もし、殺されていなかったらミレイ先輩に狼藉を働いていた」
「ほ、本当なの、カナイチ?」
「うん……
怪しい企みを相談しあっているところを見てね」
「ま、マジ……」
「怪しい企みを相談していた場面を見たからすぐに警戒したけどね」
「そ、それでカナイチくんはアタシを疑っているの?」
「まだわかりません。
ただ、何も関係ないと考えるのは早計だと思って……
別の繋がりで殺された可能性もあるし」
「……そういえば、エーマンの写真屋ってあまり儲けていないような」
「そうなの?」
「うん。
昔ながらのお客様もいるけど、新規顧客が得られていないっていうか。
その昔のお客様も毎日撮ってくれるとは限らないし……
最近はカメラも優秀になってきているからね。
成長性がないのよ。
その関係で経営は苦しくなっていたと思うわ」
「なるほど……
ちなみにハルヒコさんを呼んできてくれませんか?」
「ま、まさか、アタシのフィアンセを疑っているの?」
「形式的なものですよ」
「……まあ、いいけど」
そして、次はハルヒコ・ノーマンが来た。
「えっと、僕も容疑者?」
「形式的なものですよ」
「……まあ、君の間近で推理とか聞けるのならいいけど」
「ジョウマ・エーマン、ゾウゴ・カネモリに関して知っていることありますか?」
「いや、よく知らないな……
もう写真を撮ってくれると頼むことはないと思うし」
「何故でしょうか?」
「最近のカメラ優秀じゃないか。
僕の一族も最新のカメラを買ったし、アキト兄さんも趣味で持っているよ」
「なるほど。
わざわざ人を雇ってまで撮ってくれなくても構わなくなったと?」
「多分、カメラを持つ人はどんどんと増えていくよ。
いずれ、写真館はプロじゃないと生きていけない」
「……殺されたから未然になったとはいえ二人はミレイ先輩を狙っていましたよ」
「え?
ね、狙っていたっていうのは?」
「聞いたのですが、あまり良くないことを考えていたっていうか……
……そういうことですよ」
すると、人当たりの良い彼も流石に怒りで顔を歪ませていた。
「……もし、本当だったら許せない。
ミレイが酷い目に遭うなんて考えたくもない!」
ハルヒコの顔を見て、アドランは安心したように息を吐いた。
「って、ま、まさか、ミレイを守るために僕が殺したってこと?」
「考えられますが……
二人がアナタに気づかれるように行動したとは考えづらい……
コソコソ具合から考えて、まだアナタが気付いていないと確信していました。
加えて一人は爆散し、一人は眠らせて抵抗をできなくなったところを刺殺……
昨日今日でできる準備ではありません。
準備を整えて犯行を及んだと思うですよ」
「す、少し安心したよ。
やっと、カコ様のお許しをもらえて結婚まで漕ぎ着けたんだし」
「カコ様のお許し?」
「カコ様、結構厳しいよ。
僕はもちろん、ミレイにも愛人とかいないのかとしつこく聞かれたし……
少しでもそういう影があるのなら結婚は許さないと言っていたし」
「男女間に関しては潔癖の気があったということですか?」
「そういうことになるね。
僕もやっと信頼を得て、結婚を許してくれたんだ」
「……アキトさんも同じだと?」
「そうじゃない?
何だったら聞いてみる?」
そして、今回はアキトとミリィに話を聞くことになった。
ジョウマとゾウゴに関しては二人は知らないと先に明言しておく。
「カコ様が厳しかった?
ああ、確かに厳しかったな。
俺もこういう感じだろ?
カコ様も最初疑っていたよな。
少しでも女遊びをしていたらきっと許さなかっただろうな」
「一族に暗い影、弱みを混じるのを防いだと言ってくれませんか」
「へいへい」
「じゃあ、アキトさんも結婚を許しくれるまでに時間は掛かったと?」
「カコ様のことだ?
諜報機関やらで俺の背景とか隠し事を調査したんだと思うぜ」
とヘラヘラとアキトは笑う。
「まあ、俺だけじゃなくてミリィも調査されていたしお互い様と思ったけどな。
ただ、俺も驚いたんだぜ」
「カコ様が厳しかったことですか?」
「いや、カコ様が男女間に関して厳しいのは貴族の中では有名だったんだぜ。
そうじゃなくて、ミリィがカコ様に信頼を得る方法だよ」
「ちょっと、アキト!」
「……方法?」
「いや〜、カコ様の前でミリィ、俺に熱いキーー
ゴフッ!」
言いかける前にミリィはアキトの懐を殴った。
察したカナイチとアドランは少し頬が赤くなった。
「ミリィさんって意外と情熱的だったんですね」
「意外とはって余計よ」
「いつつ……
お前、鳩尾するなよ……!」
「……アナタが悪い」
そして、カナイチによる事情聴取は終わりを告げた。




