第22話 犯行の証明
「くっ!
冒険者だが何だか知らないが、勝手に俺を犯人扱いしやがって!
さっきも言っただろ!
根拠があるのかって!」
「……!」
この場にはギルド職員やマリナだけではなくアドラン、そしてサクリスもいる。
「……貴方がこの事件の計画を立てたのは、キシヤさんの家にお目当ての土像があったからだよな」
「っ!」
「ゴミ屋敷でも届け物があれば届けざるを得ない。
最初は貴方もイヤイヤで配達していたが届け物を直接渡す時に玄関から見たんだ。
キシヤさんの家に土像があることを……
そして、配達をするたびに……
いや、散歩とか理由付けてあの周辺を歩き回っているうちにあそこ周辺のことで貴方が利用できることを調べ上げたんだ。
まずはあのゴミ屋敷の鍵。
キシヤさんは出掛ける時も玄関近くのゴミに鍵を置いてあったこと。
キシヤさんの家近くにウイズキさんと揉めていたこと。
そのウイズキさんの洗濯用の魔道具が故障してて大きな音が響くようになったこと。
キシヤさんがゴミを拾いに出る時間などをな」
「っ!」
「そして、キシヤさんがコリモノさんに価値のある本を売買していることを知った貴方は内心焦った筈だ。
もし、同じように目利きができる人物がキシヤさんと接すればいずれ必ず土像の価値に気付かれ売られてしまうことを……
だから、そんな人物とキシヤさんが接する前にあのゴミ屋敷で土像を盗もうとした」
段々とブンタの顔色が青くなってきた。
まるで、何故そこまで言い当てられるのかわからないかのように。
「そして、貴方は今日、盗みを決行しようとした。
ある仕掛けをして自分が疑われないように細工をして、キシヤさんがゴミを拾いに出掛けて、調べておいた鍵を使って玄関から入った。
貴方は郵便配達員だ。
手紙を素早く配るためにつぶつぶ付きの手袋をしていても不思議じゃない。
それで鍵に自分の指紋を付かないようにした。
同時にウイズキさんがいつもの洗濯している音を聞いて鍵を開けて扉を開けた。
そして、中に入ってお目当ての土像を盗もうとした。
あの家はゴミ屋敷だし、物がなくなっても気付くのに時間は掛かる。
そもそも、キシヤさんと貴方の接点は郵便ぐらいしかないから盗まれたと気付かれても自分に繋がらないと思ってな」
「そ、それじゃ、どうしておじさん殺されたの?」
「そこまでは良かったんだ。
けど、その時に予定外の出来事が起きたんだ」
「予定外の出来事?」
「多分、キシヤさんが忘れ物したとかで一度、家に戻ってきたんだ」
「!?」
「貴方もそうですが、キシヤさんも慌てた筈ですよ。
だって、家に帰ったら郵便配達員である貴方が玄関を開けて物色しようとしたのだから」
「そして、誰かを呼ばれる前に……
いえ、まだウイズキさんが洗濯をしている間に助けを呼ぼうなどをしていたキシヤさんを家に引き摺り込んで近くにあった棒で撲殺した。
そういうことね、カナイチくん」
「ええ。
そう言うことです。
そして、他の人がキシヤさんを訪ねる前に急いで土像を持って逃げた」
「いい加減してくれ!
妄想も甚だしい!
今までのただのお前の推測だろ!」
「いえ、貴方が怪しい根拠はいくつもある。
まずは配達の順番さ」
「!」
「配達の順番?」
「ウイズキさんも珍しそうにポストに入ってあった魔道具の雑誌を見ていたし、LNBのファンの人も言ったじゃないか。
いつもより郵便が早く配られているって」
「……もしかして!」
「ああ。
ブンタさんは普段とは逆の順番で郵便物を配っていたんだ」
「!?」
「本来ならC地区から配るのとは逆にブンタさんはD地区から配った。
正確にはキシヤさんが住んでいる周辺を最初にしてその辺りの配達物を配り終えてから入ったんだ。
そして、思いがけず殺人をしてしまった貴方は急いで死体が見つかる前に急いでD地区の配達を終わらせた。
その証拠に十二時前にLNBのファンの元に応募券が届けられているし」
「他の住宅も調べましたが、確かに普段とは早い時間帯で配達物が届けられたことを確認しました」
「何ででしょうか、ブンタさん?
何で普段とは逆にD地区の配達物を配ったんですか?
先に配っておかないとこんなことは起きませんよね?」
「そ、それは……
う、うっかりだ!
実は俺、うっかりミスで配達物の順番を逆にしてしまったんだ!
いや、そんなミスをしてすみません!」
ブンタは自分でも上手い言い訳ができたと思ったのかニヤリと笑った。
「……貴方がD地区を先に配ってC地区を後に配ったのは他にも理由があります。
C地区に貴方の家があるからだ」
「!?」
「いくら配達人だからと言って盗品をずっと持って歩く訳にはいかない。
一番安全な方法は簡単な包装をして土像を配達物として貴方の家に届くことだ。
その時だろ?
犯行に使ったつぶつぶ付きの手袋を家にしまったのは……
だから、貴方の家を調べれば見つかる筈ですよ。
キシヤさんの血痕付きの手袋とゴミの臭いがついた土像がね」
「そ、それは……」
「今、証拠がないのに荒らされたら困るのなら……
この場で貴方が犯人である証拠を提示することもできますよ」
「……!?」
「そう。
血痕が付いたのは手袋だけじゃない。
貴方の制服にもいくつも付いたんだ。
だから、貴方はあえて制服を汚したんだ。
不審に見られないように手に擦り傷を作って……
でも、それだけでは血痕は消えない。
調べれば必ずキシヤさんの血だとわかる。
あるいはズボンのポケットも犯行を証明する証拠になりますよね」
「……っ!」
「血痕付き手袋をそのまま使う訳にはいかない。
替えの手袋を持っていたでしょうが。替えた後が問題だ。
だから、家に置く前にズボンのポケットに突っ込んだ。
当然、貴方のズボンのポケットを調べれば出てくる筈だ。
キシヤさんの血痕がな」
「……」
ブンタは青い顔になり地面を向いた。
「さあ、僕の考えが貴方の言う通り妄想なら調べさせてもらってもいいですよね?
貴方は犯人じゃないんでしょ、ブンタさん」
カナイチの推理が確実にブンタを追い詰めていた。




