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カナイチ・ホームズの好奇心ー冒険者ギルドの小さな名探偵ー  作者: 才練人
〜熊に喰われた男〜 3章 証拠と証明
12/22

第12話 対峙

 夕方、エルニアの町外れに平野があった。

 そこに厩舎があり、その近くに一軒家があった。

 その一軒家で掃除する人物がいた。

 【マコ・ダイラー】である。

 彼女は今も疲れ切っている表情をしており、時折暗い影を纏わせている。

 それは客を乗せる時も同じで笑顔で送り迎えしていても何処かで明るくなりきれないところがあった。

「すみません」

 その時に現れたのはカナイチだった。

 額には汗が流れており、急いで来たことがよくわかった。

「……あの、アナタは?」

「は、初めまして。

 僕の名前はカナイチ・ホームズ……

 エルニアの冒険者で盗賊をしています」

「カナイチ……」

 マコもその名前には聞き覚えがあった。

 町中ではモノ探しの依頼をするならカナイチに頼めと持ち切りだから。

 馭者である彼女が知らない理由はなかった。

「初めてお会いしたのですけど、こんな可愛らしい方だったんですね」

「か、可愛らしいってやめてくださいよ……

 いつも女性冒険者に揶揄われて大変なんですから」

 と恥ずかしそうにカナイチは頭を掻く。

「……それでその有名な冒険者の坊やが私に何か用かしら?

 私、何か無くしものをしたのかしら?」

 だが、だからこそマコはカナイチに対して僅かな警戒しているような眼差しを向ける。

 何故、そんな冒険者が自分に会いに来たのかと。

「グラットンベアに食い殺された男のことご存知ですか?」

「……ええ。

 町ではその噂で持ち切りよ。

 私もお得意様によく注意するように言われるわ」

「その被害者が誰なのか判明しました。

 そのことでマコさんと話がしたいので……

 できれば家の中に入らせてもらえないのでしょうか?

 ここでは人の目に付きやすいと思って」

 カナイチは何でもないようにマコに話しかける。

 マコにとってはあまり関わりたくない内容だが、自分でも何故かカナイチの話を聞いてしまう。

 カナイチ・ホームズという男は盗賊で見た目も相まって信頼されにくい立場なのに、妙に人を惹きつけるところがある。

「……構わないわ。

 どうぞ」

「それでは、お邪魔します」

 マコはカナイチを家にあがらせた。

「少々お待ちください」

 マコの家のリビングは清潔だった。

 机などはピカピカに綺麗に拭かれており、埃一つなかった。

「最近、掃除したのですか?」

「ええ。

 実は家にゴキブリが出ちゃって……

 仕事の都合上、どうしても家を離れる期間が多くなって」

「ああ。

 僕達の冒険者ギルドもゴキブリとかが出ると大混乱ですよ。

 アドランは強いのに幽霊とかそういうのダメだから泣き喚くし、他の女性冒険者も慌てて逃げるし、先輩冒険者の中には逃げる人もいますし」

「うふふ、本当に不思議な人達ですね」

「僕としても好奇心が満たせるからいいのですが」

「はい、粗茶ですが」

「あ、ありがとうございます」

 カナイチは嬉しそうに躊躇なく飲み出す。

「……」

「いや~、実は急いで来ていたので喉がカラカラだったんですよ。

 助かりました」

「それなら、もう一杯出しましょうか?」

「お願いできます?」

「それでは……

 ちょっと待ってね」

 チラッとマコはカナイチを見る。

 マコから見たカナイチはまさしく子どものようだった。

 無邪気で嬉しそうにお茶を飲んでいる姿を見ると、つい警戒心が緩んでしまう。

「……それで、カナイチくんは何でここに来たのかしら?

 被害者が誰なのか判明したって言ってましたけど」

 マコがそう聞いた時、カナイチは先ほどの子どものような顔つきから真剣な顔になり始めた。

「ええ。

 それはもう大変でしたよ。

 何せ、被害男性の顔や指紋はメチャクチャになっていますし、彼が誰なのか証明するものが無くなってましたし」

「私も町の人からそう聞いたわ。

 みんな怖がっていたしね」

「……奇妙なことに彼が触りそうなものに彼の指紋がなかったのです。

 財布や靴なども綺麗に磨かれていたし酒瓶やスキットルがなかったからどこで酒を飲んだかも不明でギルドは特定できませんでした。

 ……まるで、誰かが彼の正体を隠すように」

「……それで、誰だったのかしら?

 アナタは判明したって言ったのよ」

「……ええ、わかりましたよ。

 被害男性はアナタの旦那さんを殺した男でしたよ」

 その時、マコの顔から笑顔が消えた。

 目が笑っておらず、冷たい表情になりつつあった。

「……そう、だったの」

「……アナタですね、マコさん」

「……」

「……アナタが彼をあの森に置き去りにしたのですね。

 泥酔状態にさせて、手や顔にりんごとアルコールの匂いを染み込ませて……

 旦那さんの仇を取った」

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