6.5 モラクスの封印
ローゼンハイムの都市中央には四柱に囲まれた祭壇の遺跡が千年前の姿のまま残されていた。
それはた邪神モラクスの魔法陣だった。
岩盤に穿たれた直径二百フィートほどの魔法陣はソロモンが地獄との扉を開き悪魔を現世に呼び寄せるために使ったものだった。
魔法陣は中央から真っ二つに引き裂かれており、魔界との力の繋がりを絶たれたモラクスはそのまま討たれて死んだ
アイルは遺跡を遠くから眺めていた。
王たちとの会話では不明な点がいくつかあった。
王の口ぶりからすると、英雄ロキがアスタロトを復活させたことを国の上層は確信しているらしい。
しかしそれは、起こったとしても千年も前のことだった。
アスタロトはなぜ千年たった今さら人間に害意を持つようになったのだろうか。
しかしアイルはものを訊ける立場ではなかった。
国家の内情に深入りするのは身の危険を増すだけだった。そもそもそれは闇の住人に許される行為ではなかった。
なぜロキはアスタロトを”封印”したのだろう…封印とは一体何のことなのだろうか。
魔法陣を破壊すれば悪魔を殺せるということはある程度自明なことのように思える。
今アスタロトが生きているならば魔法陣は北のどこかに残されているはずだった。
ロキは叡智を求めて北へ向かったという。その後の記録に残らない時間ロキはどこで何をやっていたのだろうか。
そもそもかなぜ”叡智を求めて北へ向かう”ことがアスタロトの復活に飛躍するのかアイルにはわからなかった。
恐らくそれが、国体の秘密なのだろう。王は何かを知っていた。先祖が悪魔と関わりを持った事実に否定的ではないらしい。
アイルは遺跡をあとにした。




