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ラズーン 1  作者: segakiyui
12.ネークの導師

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68/131

5

「『豊かなるネーク』だね」

 ユーノが感嘆を込めて呟いた。

「セレドに、似てる、少しだけ」

 続いた声音は儚い。

 すぐに、そんなことを言い出した自分を恥じるように、いそいそと馬を村へ進め始めた。

「おい、先に行くな……ほら、アシャ」

 イルファが慌てたように続こうとして、ひょいとレスファートを抱き上げ、アシャの方へ差し出す。

「え? もう俺の番か?」

「だろ?」

「だろって、おい!」

 レスファートが何とか自分の前におさまるのを待って、イルファに声をかけたが、相手はさっさとユーノを追って行ってしまう。

 なぜイルファがユーノを後を追うんだ。不快感に眉を寄せる。思わず知らず声を上げる。

「おい、待て!」

「アシャ」

 レスファートが声をかけてきた。

「なんだ」

「そんなにあせるなら、ユーノにひどいことしなければよかったんだよ」

 ぼそりと指摘されて、硬直した。

「…俺は焦ってなんかいないが」

「じゃあ、もう少しここでまってよ……イルファ、らんぼうなんだもん、おしりがいたいんだよ」

 ごそごそと腰のあたりを摩り、座る位置を確認しながら、

「ねえ、アシャ」

「なんだ」

「アシャはユーノのこと、きらいなの?」

 唐突に聞かれた。

「え?」

「ユーノのこと、きらいだから、あんなことしたの?」

 俯いたままでレスファートは尋ねる。もういいよ、と言われたから馬を進め出したアシャが、どう応えたものかと迷っていると、

「ユーノ、いたがってる」

 レスファートの声は怒りを秘めている。

「……ああ」

「すごく、かなしんでる」

「………わかってる」

「わかってないよ」

「わかってるよ」

「わかってない」

「わかってる」

「……じゃあ、どうしてユーノにあやまらないの?」

「……」

 レスファートは振り向いて顔を上げた。じっとアシャを見上げる。

「ひどいこと言ってごめんね、って」

「そう、だな」

 謝っても。

 もしもう一度やり直せたとしてもアシャは同じことをするだろう。イルファの興味を削ぐためだと言い訳しつつ、ユーノを傷つけるとわかっていてもしてしまうだろう、ユーノを望む気持ちと拒む気持ちに翻弄されて。

「なんで?」

「うん?」

「……そんなにユーノのこと……かんがえてるのに」

 レスファートのことばに、そうか、この子はレクスファの王族だったのだな、と改めて苦笑した。同時に、いつの間にか弛んでしまった自分の心の防御壁を引き上げる。

「こら」

「った」

 こん、とレスファートの頭を軽く叩いた。

「人の心に勝手に踏み入るな、とレダト王は教えなかったのか?」

「でもっ」

 ユーノが、ないてる。

 自分が泣きそうな顔でまた俯いたレスファートの頭をくしゃりとアシャは撫でた。

「お前が……慰めてくれ」

「え…」

「ユーノをお前が慰めてやってくれ」

 その方がきっとあいつも安心するし、気持ちが楽になる。

 呟いた自分がどんな顔をしたのか、アシャは意識していなかった。

 ただ、振り仰いだレスファートが驚いたように瞬きし、見る見るきつい表情になっり、唇を噛んでぷいと顔を背けた。

 きっと情けない顔をしたのだろうな、とアシャは思った。


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