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のんびりと1~2週間に一話ずつくらいの頻度での更新予定です。BL苦手な方は退避行動推奨!
すみません、タイトル変えました。五里霧中→なんで? ……なんて?
仮題のまま出してしまった……orz
――嫌われたみたいだ。
寮の自室で課題を片付けていた俺は、小さな音を立てて開いたドアに顔を上げた。
ドアから入ってきたのは、でかい図体を少し屈めた同室者。
「佐久間お帰り―。今日も遅かったなー」
シャーペンを持つ手を軽くあげると、佐久間は少し驚いたように俯いていた顔を上げた。
「佐木……まだ寝てなかったのか」
微かにかすれた声、少し細めた眦。
いかにも寝ぼけ眼の雰囲気の佐久間は、居心地悪そうに玄関で立ち尽くした。
部屋の電気をつけず机についてるライトを使っていたから、ドアを開けても俺が起きているとは思わなかったらしい。
俺は心の中で苦笑すると、ころりとシャーペンを机の上に転がした。
「課題やってた。目、覚めちまってさ。佐久間、こんな時間まで何してたんだ?」
机に置いてある時計は、夜の0時過ぎを指している。
いくら帰寮門限が二十三時のとはいえ、部活で遅い奴ら以外はすでに部屋にいるか大半は寝ている時間だ。
その上、その時間から今まで一時間近く一体どこで何をしていたんだろう。
佐久間はその質問に困惑したように視線を巡らせて、ぼそりと呟いた。
「委員会……、仕事あって。俺、風呂入ってくるから」
そういうと、俺からの質問を受け付けないとでもいうようにクローゼットから寝間着やタオルを引き出して玄関わきのシャワー室へと消えた。
パタリと、軽い音が俺と佐久間を遮断する。
その音を聞いた途端、滲む寂しさを隠せなくなって机に顔を伏せた。
……やっぱり、嫌われたみたいだ。
小さく、息を吐き出した。
俺達が在籍している高校は、今時珍しい郊外の全寮制男子高校。
一番近い町でもバスで二十分以上かかるため、学校の側に職員住宅を含めいくつか小売店……パン屋や本屋、コンビニなどが立ち並んでいて小さな学園都市を形成している。
校内には大学の生協にあたる販売店も併設されていることもあって、放課後や休日に遠い町へ繰り出す学生は少ない。
部活に力を入れてはいるけれど基本は勉学で、赤点を取ると部活動を禁止されてしまう。
その他にも成績が良ければ受けられる特典が多々あって、勉学に励むまじめな生徒が多い……そういう話を聞いて俺はこの学校に入学した。
成績優秀者に与えられる免除と、何よりも寮に入りたかったのが一番の理由だから落ちるわけにはいかなかった。
頑張って頑張って、入学したのは今から一年前。
今年から二年目に入る、高校二年生。
佐久間……佐久間 啓斗は、ここに入学してからずっと同室のクラスメイト。
佐木と佐久間、名前の順で割り当てられたけれど俺にとっては当たりだった。
運動部で真面目な佐久間。歳の割に落ち着いているその性格は、とても好感を持てたから。
バレーボールの特待を受けて入学した彼も、赤点になれば部活動を禁止されてしまうのは変わらないので、ここ一年助け合って勉強に励んできた……はずだった。
それが……
伏せていた顔を緩くあげれば、シャワー室から微かに聞こえてくる水音。
まるで、俺の存在を無視するかのような。
二年生になってしばらくして、佐久間の帰りが異常に遅くなった。
元々部活動で遅くなることもあったけれど、それだって九時前には夕飯を食べて帰ってくる程度だ。
それが今じゃ俺が寝た後、深夜回ってから戻ってくることもざらで。
その理由がその時々によって違うところが、怪しくてたまらない。
だから今日は、起きて待っていたわけだけど……
――委員会……、仕事あって。俺、風呂入ってくるから
動揺を隠しきれていない声、寝起きなのかぼんやりとした表情。
それは決して委員会の仕事をしてきた奴の態度じゃない。
それはまごうことなく、俺とこの部屋で過ごすことが苦痛だということ。
……理由なんか、それしかないじゃんか……。
「佐木、寝てるのか?」
ふわりふわりと漂っていた意識が、囁くような低い声を微かにとらえた。
「う、……ん?」
呻くように声を出してみたけれど、体は動かない。
佐久間がこっちを覗き込んできていることが目を瞑っててもわかるけれど、起きたいと思う意識とは逆に体は全く動かなかった。
ほんの少し間をあけて、小さく息を吐く音が聞こえた。
「風邪ひくだろうが」
呆れたような声音に、瞼がぎゅっと動く。
手を煩わせたくない、呆れられたくない。
仲良くやってきたと思っている佐久間に、嫌われたくない。
焦る意識が思考を覆い尽くすけれど、やっぱり体は動かなかった。
「……仕方ない、よな」
どこか自身に言い聞かせるように佐久間は呟いた後、俺の体がゆっくりと持ち上がる。
波間を漂うかのような安定さで、そこまで小柄じゃない俺をその腕で持ち上げた佐久間の力に思わずピクリと肩が動いた。
その途端、ピタリと佐久間の動きが止まってしまった。
真上から俺を覗き込む佐久間の視線が、目を瞑っていても感じ取れるほど緊張しているのがわかる。
「起きてる……わけないよな?」
動かない俺に問いかけるような言葉は、最後ため息とともに零れた。
――本当は起きているけれど、体が動かない。
そう伝えることができるわけもなく、ただ覗き込んでいる佐久間の視線を感じていた。
最近は目を合わせて会話することも少なくなったなとか……閉じた瞼がちっとも開いてくれないや、とか。
暫くしてゆるゆると動き出した佐久間は、普段は二段ベッドの上段で寝ている俺を下段の自分のベッドに寝かせるとゆっくりと離れていった。
でも動き出す気配もなく、見下ろされているのがわかる。
それからしばらくして、佐久間は部屋を出て行ってしまった。
……やっぱり、嫌われたんだなぁ……。
佐久間を怒らせたきっかけがまったくわからないから、謝りようもない。
それに、あえて問いかけるのも怖い。
拒絶されることが、何よりも怖い。
「ばーか」
思わず零れた声は俺の目を開けさせてはくれたけど、佐久間に届くことはなかった。




