ジョーカーと富豪
大富豪ですね〜
朽葉クンが勝負を持ちかけてきたとき、私はこっそりほくそ笑んでいた。
なぜならその勝負は、私の方から持ちかけようと思っていたものだから。
それを彼が言い出してきたことで、実は私は少しだけ有利になった。
なぜ?理由はこれ以上ないくらいシンプルだ。
種目を、私が決められたから。
実は私は朽葉クンにトランプゲームの中から選ばせるつもりだったのだけれど、彼が選択権を私に譲ってくれたので私は私が得意な種目にさせてもらう。
それが大富豪。───格差社会の縮図。
そして、勝利を確実にするためにもう一つ。
「わかばたちを参加させていいかな?」
「わかばたちを参加させていいかな?」
先輩はそう言った。
好都合だ。まさか先輩の方から持ちかけてくるとは。
通常なら逡巡しただろう。先輩の味方が増えるのだから。しかし僕は迷いなく頷いた。
「構いませんよ」
なぜならそれは、慧悟も参加させることになるのだから。
嘘をつくことにかけては天賦の才を持つ、あの人格破綻者を。
「ルールは?」
先輩が訊いてくる。
「通常でいいですよ。通常の一回戦で」
「一度きり?」
「それがフェアでしょう?」
明確な格差を生む大富豪に於いて、一度負けてから逆転することは難しい。
一度きりの勝負が明暗を分けるなら、それ以上の勝負は時間の無駄だ。はっきりいうと、自分が無惨に追い落とされていくのは、あまり気分のいいものではない。
「まあ、二人とも同じ身分でで終わる可能性もゼロじゃないですけど」
「愚問だね」
「そうですね」
決着がつかない────なんてことはあり得ない。誰が大富豪になるのかも誰が大貧民になるのかも関係なく、どちらが先に上がれるかの勝負なのだから。
「ルールは把握してる?」
「一応は。ただ、バリエーションがあるかもしれないので確認しておきましょうよ」
「偶にあるよね。ローカルなゲームとかだと、ルールに地域差とかが。ジャングルの奥地と都市部とじゃ大分違うと思うよ」
「誰が未開の地出身ですかっ。いやジャングルの奥地を貶すつもり決してないんですけど」
けれどたしかにそれは、割とある。
「ジャンケンの掛け声とか、割と地域によってまちまちですよね」
「ジャンケンの掛け声は年代によってもバラバラだと思うよ」
先輩はどこからかトランプを取り出して枚数を数え始めた。
「ジョーカーは?」
「2枚とも」
13×4+2。即ち54枚。
「さて、まず基本的な確認ね。一番弱いカードは?」
「3。ジョーカーを除く一番強いカードは2ですよね。流石にこの段階で地域差があったらもう別のゲームな気がしますけど」
「まあね。え…と、最初に出されたカードより強いカードしか出せないよね?」
「はい。最初に出された枚数と同じ枚数しか出せません」
「パスした場合は、パスした次の人からのスタートだよね?」
「そうですそうです。じゃあ、ほとんど同じらしいですね」
「そうみたいだね」
僕は廊下の方を伺う。
「八切りも都落ちもなし、ね。革命は?」
革命。同じカードを四枚場に出した時、カードの強さが反転するという特殊ルールのことだ。
「それが楽しいのって、格差ができてからじゃないですか」
一度きりの戦いしかない僕たちには必要のないルールだろう。
その時、ガラガラと音がして扉が開いた。
それは、待ちかねていた来客の登場を意味していた。
「よぉ秤、約束通り遊びに来たぜ」
胡散臭い笑みを浮かべた人格破綻者。
「奏、どうして私を呼びつけたんだ?」
高身長の怖め生徒会長。
そして。
「久しぶりですねっ。奏先輩!」
もう一人の幼馴染───冴月千景。
「たまには皆で遊んでみないかと思ってね。わかばが丁度暇そうだったから」
「いや、あたしはなかなか忙し────」
「僕の幼馴染たちも丁度暇そうだったので」
「そんなことないですよ。慧悟くんが来るからついてきただけで」
なかなか文句が多い来客たちだ。
「まあいいや。じゃあ用意はいい?────勝負を、始めるよ」
ちなみに作者はトランプ系全般がめちゃくちゃ弱いです。




