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錯綜

「フェルナンド、そこまでだ。もう十分だろう?」

 ジークフリートは静かにそう言い渡すと、セシリアを促し立ち上がった。

「あぁ、それからもう一つ──」

 フェルナンドが懐に手を差し入れると同時にレジナルドが剣の柄に手をやり、その動きを注視する。

「これを貴方に…」

 ゆっくりとセシリアの目の前に差し出されたのは濃紺に煌めく大きなサファイアの嵌った首飾りだった。

「貴方と私の色だ。」

「フェルナンド殿下、私…」

「受け取れないとは言わせないよ?」

 フェルナンドはセシリアの手を取り強引に小箱を握らせると甘く微笑む。

「私が選んだ、勿論身につけてくれるだろう?」

「…」

「リア、行こう。」

 振り切るようにジークフリートがセシリアの肩を抱えてガゼボを後にする。

「また明日」

 フェルナンドは足早に去っていくセシリアの背中を満足そうに見送った。

 まぁ今はこんな所だろう──。

 セシリアのように控え目な女性にはこちらから少し強引に行くくらいが丁度いい。断られる前に畳み掛けるように此方の思いを押し付ける──ジークフリートには決して真似出来ないはずだ。


「あっちも結構強引に出てきたね~!しかし何?その巨大なブルーサファイア、ステーリアからわざわざ持ってきたんだろ?すっご…」

「レジー!」

 庭園から回廊へ足を踏み入れ、フェルナンドの姿が見えなくなると直ぐにレジナルドが興奮した様子でベラベラと話し始めた。

「いやだって…さ。──あ!セシリア嬢、そんな目で俺の事見ても流石に王太子が()()()()()()使()()ような宝石は横流し出来ないからね?大事に貰っときなよ…」

「…プロポーズ?!」

 その一言ではたとセシリアの足が止まる。

「ん?」

「リア?」

 男二人は何が起きたのかと不審そうにセシリアを振り返る。

 恐る恐るセシリアは手の中にある小箱を差し出した。

「…これは、プロポーズの?」

「普通に考えて、そうでしょ?」

 レジナルドがジークフリートに確認するように問いかける。

「認めたくはないが、あの流れからしてそうだろう…」

「──私、…受け取ってしまいました」

 セシリアはもはや半泣きである。

 何とも言えない表情のジークフリートの横でレジナルドが笑いを堪えきれず吹き出している。

「フェルナンド殿下も報われないな…」

「奴にはそれくらいで丁度いいさ…」

「…どうしましょう?」

 まるで爆弾でも手渡されたかのようにセシリアが小箱をレジナルドに向けて差し出している様子を見て、ジークフリートの頭にある場面が甦る。

 指輪を差し出し、セシリアの手に握らせたあの時。自分はフェルナンドよりも遥かに分かりやすく愛を囁いたと自負しているが…。セシリアはどうしていた?初めは困惑した様子だったが、拒否はされていないと有頂天になって、思わず口付けたような──。

「リア、フェルナンドからの婚約祝いだと思って受け取っておけ──。」

「うわ、余裕だねぇ~」

「当然だ。」

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