成るように成る
白瀬の面倒を見て欲しいと。
佐村は困惑した。白瀬とは相性も悪い。しかも急過ぎる。それに常識外れだ。いつもの人見なりのジョークだ。そう思ったが、そうではなかった。
そのやりとりを中谷も見ていた。事情を知らない人見は佐村の知らない事情を知っているように見えた。
佐村『お前、何か隠していないか。』
人見『むしろ、さらけ出してるだろ。』
佐村『なら何故、俺に託す。』
人見『それを話せる日が来ると思う。その日まで側に居てやって欲しい。おかしな事を言っている自覚はある。考えに考え抜いて・・・。』
人見は声を詰まらせる。
仲谷『まあ、成るように成るのが人生。人見に従っても、従わなくても、行き着く所は変わらないお空の上。』
中谷の言葉は今では皮肉か、呪いの言葉か、因縁めいたものを感じずにはいられない。
ふと発せられた言葉は佐村の頭の中で数本の枝となり、選んでくれと言わんばかりの顔を見せている。
自分の人生はこれで良かったのか、その後の人生、天へ昇るまでに同じ事を思うのか。簡単に答えは出ない。
佐村『ただいま。』
おかえり・・・聞こえたかな。
聞こえてないや。いつものように部屋に入って来ない。もう寝てると思ってるのかな。あ・・・
佐村『寝てるか。』
足音が聞こえる。二つ。
中谷『残業代欲しいよね。』
佐村『この仕事が夢だったんだ。対価じゃない。』
中谷『成るように成った結果ね。』
コンビニで買った夜食とコーヒー。それも同様だ。
ビニールのシャカシャカという音が耳を刺す。私は耳を塞いで朝を待った。
時計を見ると午前7時。つい最近までは飛び起きる時間。でも今は違う。ゆっくりとベッドから落ちないように、そっと、ゆっくりと。
私『おはよう・・・サム?』
寝てるよ。空いた缶酎ハイが四本に、お弁当が二つ・・・二つ・・・
サムって、そんなに食べる人だったかな。病気が進行しているんだ。こんなことでは驚かない。
私『あのー、どちら様で。』
中谷『うん・・・あ、すいませんお邪魔してました。仕事の事で。』
私『同僚さん?いつも主人がお世話になっております。』
この人、変な顔してる。私、変な事言ってるかな・・・な・・あー、中谷さんだ。
泊まるつもりは無かったけれど寝被ってしまったらしい。本人が言うのだから間違いない。サムも同じ事を言っている。
中谷さんが朝食も食べずに帰った後、サムから怒られた。料理を作るのは危ないから辞めろと何度も言っているだろと。
私『ごめんなさい。中谷さん、お客様だから・・・』
佐村『お客様?』
私『同僚の方でしょ。』
佐村『同僚というか、仕事仲間というか・・・中谷だぞ。』
私『だから同僚の・・・』
その日からだった。サムが私を見捨てたのは。




