息子
サムはどこ。一週間の内に三日帰ってくれば良い方で、帰ってきても深夜。お酒の臭いはしない。
仕事なら良いのだけれど連絡もない。私が忘れっぽくなってるから、強く追求も出来ない。
支えを無くした枯木は脆くなるもの。自宅の階段を踏み外して脚を骨折してしまった。
私『うん・・・苗も看病してくれてるし、安静にはしてるけど。』
佐村『そうか。大事にな。』
私『今日は・・・もう切れた。なんで・・・なんで・・・ううわあああ』
最近は私が悲しくなると美知が目の前に現れる。変なことばかり言うから妹は嫌いだ。
ー某ファミリーレストランー
佐村『ごめんな。忙しいだろうに。』
美知『いえいえ、私も独り身ですし、むしろお姉ちゃんが迷惑をおかけして申し訳ないです。』
佐村『きっと一週間も俺が家を空けたら、あいつもパニックになるだろうからさ。』
美知『・・・ここまで酷くなってるとは思いませんでした。』
佐村『この半年で急に。兆候はあったんだろうけど、甘く見てたな。二人はどうだ。』
美知『苗はそれなり。葉は何してるかわからなくて・・・』
思春期という言葉で片付ける事が出来るならば簡単なものだ。
佐村『まあ、葉は男だし、適当にやってんだろ。』
美知『有名人の息子が何かやらかしたら、大変な事になりますよ。』
佐村『・・・俺もう辞めようと思ってんだよ。ミュージシャン。』
美知『え・・・お姉ちゃんは知ってるんですか?』
佐村『いや。』
佐村は唇を噛んだ。夫の仕事さえ忘れた妻の姿を思い出してしまったからだ。
佐村は溜息一つ。情けない姿を見せたくなくて、ふと窓の外を見た。葉・・・?
葉『病院に気づかれたら、すぐに捕まる。俺が捕まる。』
葵『信号変わってるよ。』
葉『・・・絶対に離すなよ。』
葵『わかってるよ、死にたくないもん。あそこに秘密があるはず。』
あれは確かに葉だ。バイクに乗っている。後ろに葵を乗せて。佐村はその姿を人見と私に照らし合わせた。そして、深く息を吸い込んだ。
美知『どうされたんですか?』
佐村『いや・・。」
夕陽に向かって走り去る息子。それを止める事の出来ない父親。私はそんな事つゆ知らず、今日もベッドの上で天井を見つめる。何を思うわけでもなく。私は独りぼっち。
夜20:00頃、久しぶりにドアの鍵が開く音を聞いた。
佐村『ただいま。』
私『おかえり。』
沈黙が流れる。もう慣れた沈黙。でもいつもより早い帰宅が気になって沈黙を破った。
私『今日は早いね。』
佐村『ああ。実はさ・・。』
サムは音楽を辞めると言った。私はハッとした。何故だか妙な気持ちになった。これは悲しみ?怒り?
私『私のせい?』
佐村『そんなんじゃない。中谷からも言われたんだ。飽きた?って。人から指摘されると、そんな気がしてくるよな。』
サムは笑っていた。笑っていたんだけど、直ぐに神妙な顔をして、私に訊いた。葉の事だ。今日はまだ帰ってきていない。いつ帰ってきているのかも知らない。あれ・・葉?




