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『既読すらつかなかった元彼に、今さら「ごめん」と言われても遅い』  作者: たま


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1/2

前編

数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。

拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。

やよいは、スマホの画面を見つめたまま動けずにいた。

「既読もつかない…」

最後に送ったLINEは、もう14日前のものだった。

《最近忙しい?体調大丈夫?》

それだけの、たった一言。

それすら、彼――充は開いていない。

大学から付き合って、もうすぐ3年。喧嘩だってしたことはある。でも、こんな風に“消える”ようなことは一度もなかった。

美容師として働くやよいは、忙しいながらも充との時間を大切にしてきた。休みを合わせて旅行に行ったり、夜遅くでも電話したり。将来の話だって、少しずつしていたはずだった。

だからこそ、理解が追いつかなかった。

そして――

「え、やよい…聞いてないの?」

大学時代の友人から言われた、その一言で全てが崩れた。

「充、別れたって言ってたよ」

頭の中が真っ白になった。

別れた?

誰と?

どういうこと?

本人からは、何も聞いていないのに。


最初は信じなかった。

何かの誤解だと思った。

でも、別の友人に聞いても、同じことを言われた。

「なんかさ、新しい子と一緒にいるの見たよ」

その瞬間、何かが切れた。

悲しみじゃない。

怒りでもない。

もっと冷たい、決定的なもの。

「……そっか」

やよいは静かに呟いた。

「じゃあ、終わりだね」


そこからのやよいは、早かった。

まず、充との思い出の写真を全て削除した。

LINEのトークも消した。

SNSもブロック。

未練を残す余地は、一切残さなかった。

美容師としての仕事に没頭し、指名客を増やし続けた。元々センスも腕もあったやよいは、あっという間に店のエースになった。

さらに――

やよいの実家は、美容院を30店舗、スーパーを20店舗も経営している。

つまり、“本気を出せば世界が変わる立場”だった。

これまで、やよいはそれに頼らなかった。

「自分の力でやりたいから」

そう言っていた。

でも今回は違った。

「ちょっと、お父さん」

久しぶりに実家に顔を出したやよいは、にっこりと笑った。

「仕事、手伝う」

その一言で、歯車が動き出した。


一方その頃、充はというと。

「やよい?あー、もう終わったよ」

軽く笑いながら、新しい彼女の肩に手を回していた。

「ちょっと重かったんだよね」

既読すらつけずにフェードアウト。

最低な別れ方だと分かっていながら、どこかで「どうせ大丈夫だろ」と思っていた。

やよいは優しいから。

怒らないから。

追いかけてくるかもしれない。

そんな甘えがあった。


数ヶ月後。

充の会社に、一つの通達が届いた。

「え…?」

それは、取引先変更の連絡だった。

今まで大口の取引をしていた企業が、突然契約を打ち切ったのだ。

理由は明確ではない。

ただ、“より条件の良い企業と契約するため”とだけ書かれていた。

そして、その新しい契約先の名前を見た瞬間――

充は凍りついた。

それは、やよいの実家のグループ企業だった。


「嘘だろ…」

調べれば調べるほど、現実は残酷だった。

やよいは、ただの美容師じゃなかった。

経営にも関わり始め、複数の店舗の再建を成功させ、グループ内で急速に影響力を持ち始めていた。

そして――

充の会社は、そのグループに依存していた。

つまり。

やよいの一声で、どうにでもなる立場だった。


焦った充は、久しぶりにやよいにLINEを送った。

《久しぶり。元気?》

当然、既読はつかない。

《ちょっと話せない?》

既読すらつかない。

《あの時はごめん》

既読すら――つかない。


その頃、やよいは新しいサロンのオープン準備をしていた。

スタッフに囲まれ、笑顔で指示を出している。

その横には、新しいパートナーの姿もあった。

誠実で、仕事もできて、何よりやよいを大切にする人。

充とは、まるで違う存在だった。


ある日、業界のパーティーで。

充は偶然、やよいと再会した。

「やよい…!」

思わず声をかける。

やよいは振り返り、そして一瞬だけ目を細めた。

「ああ、久しぶり」

それだけ。

まるで、どうでもいい知り合いに向けるような声。

「ちょっと話…」

「忙しいから無理」

即答だった。

取り付く島もない。

「俺、あの時…」

「聞いてないし、興味ない」

言葉を遮られた。

そして、やよいは静かに微笑んだ。

「既読もつけなかった人に、返す言葉なんてないよね?」

その一言で、全てが終わった。


さらに追い打ちのように。

充の会社は、業績悪化で大規模なリストラを発表。

彼自身も、その対象になった。

再就職もうまくいかない。

信用も、キャリアも、何もかもが崩れていった。


一方のやよいは。

事業をさらに拡大し、業界誌にも取り上げられる存在になっていた。

「あの若さでここまで…」

「すごい経営者だ」

そんな評価が飛び交う。

かつての“彼女”という立場は、もうどこにもなかった。


そして最後に。

やよいはふと、昔のことを思い出した。

既読すらつかなかった、あの2週間。

胸が締め付けられるような不安。

でも今は――

「どうでもいいな」

そう、心から思えた。


充は全てを失った。

信頼も、仕事も、未来も。

軽く扱った代償は、あまりにも大きかった。

そしてやよいは。

何も失わなかった。

むしろ、すべてを手に入れた。


これが、本当の意味での“ざまぁ”だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

誤字脱字のご連絡ありがとうございます。

感想もいつも励みになっております。

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