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断罪の法廷と超高速麺

街道のド真ん中に、突如として厳かな石造りの建造物がせり出してきた。クッキー繋げて書かれた、その名も「味覚の聖法廷」。この先、王都に入る者は、過去に犯した「食の倫理的過ち」を告発され、裁かれねばならないという。


「……何よ、この悪趣味な法廷。私の貴重なランチタイムを裁判ごっこに費やすなんて、死罪に値するわよ」


私が馬車から降りるなり、高座に座った裁判官が木槌ガベルを叩きつけた。


『被告人、無名聖女! 貴殿の記憶を適当にスキャンした結果、重大な罪が発覚した! 貴殿は観光中、あろうことか「泥のついたイモ料理」を口にし、あまつさえそれを「意外と悪くない」と評した! これは美食国家ハラペコニアに対する、万死に値する冒涜である!』


「……はあ? 寝ぼけたこと言わないでちょうだい。不味いものを食べたのが私の罪? 笑わせないで。悪いのは、そんな粗末なものしか提供できなかった調理人の無能と、観光者にまともな食材すら流通させられないこの国の構造的欠陥、そして、それを放置している貴方たち行政の怠慢よ。被害者は私、加害者はこの不毛な国。私の舌は常に正義を刻んでいるわ。貴方のその腐った脳髄こそ、デミグラスソースで煮込んでやり直したら?」


私の一切の慈悲なき正論(毒舌)の乱打を浴び、裁判官は「あ、あ、ああ……」と白目を剥いて泡を吹き、法服を脱ぎ捨てて逃走した。精神崩壊である。


「おおお! セレスティーヌ様の正義の判決が下った! 悪しき法廷には、更地という名の鉄槌が必要ですな!!」


アルフレッドが「正義の有罪!」と叫びながら法廷の柱に頭突きを食らわせると、建造物は一瞬で瓦礫の山へと化した。その隙に、ベレッタが証拠物件として保管されていた「ヴィンテージ・ロマネ」と「最高級白トリュフ」を音もなく強奪。


「……ふふ。判決は『私の完全勝利』ね。謎姫、このワインを私の勝利の為に開けなさい。ンフ♪ 勝利の美酒は格別だわ」


馬車の隅で、謎の姫とカップホルダー人形が「……この人たち、法さえも物理でねじ伏せた……」と、抱き合いながらガタガタと震えていた。


法廷を破壊して進んだ先に現れたのは、王都へ続く唯一の道……と言い張る、巨大な竹のといが数キロにわたって崖の間に設置された「大渓谷コース」だった。上流からは清らかな水とともに、人間一人分ほどの太さがある「巨大麺」と、薬味に見立てた「巨大なネギ(丸太)」や「生姜(岩)」が超高速で流れてくる。


「何よこれ。流しそうめんの竹の中を走れっていうの? ハラペコニアの設計思想は、一度頭の中を洗浄パッキングしてもらった方がいいわね」


「セレスティーヌ様、お任せを! これぞ、上流から攻めてくる正義の試練! 私が全ての障害物を粉砕し、道を切り拓きましょう!!」


アルフレッドは雑巾を降りるなり、竹の樋の中を猛スピードで逆走し始めた。

 ドガァン! バキィィッ!

 上流から迫りくる巨大な麺や薬味の岩を、彼は「正義のラッシュ」で次々と粉砕していく。飛び散る麺の破片。


「……セレスティーヌ様。上質な麺の端切れが、空からデリバリーされておりますわ」


ベレッタが空中を舞い、粉砕された巨大麺の「一番良い部分」だけを神速のナイフ捌きで一口サイズにスライス。馬車の窓から、キンキンに冷えた出汁とともに差し出してきた。


「『超高速・流しそうめんパスタ』、完成いたしました」


「……あら。……つるつるしてて、コシ完璧ね。喉越しが最高だわ」


私が涼しい顔でそうめんを味わっている間、アルフレッドは最上階のダムまで到達し、巨大な薬味岩を素手でキャッチして「正義のポーズ」を決めていた。

 こうして、私たちは「流しそうめんの逆走」という史上最もふざけたルートを完走し、ついに王都の近くまで着いた?

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