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ああ、なんて汚れの知らない純粋な瞳なの。そんな瞳で見つめないで、私がどれだけ汚れてしまっているのかわかってしまうじゃないか。

私と2つ、1つしか変わらない歳の子ばかりだと言うのに、羨ましい限りだ。

しかしだ。なぜなんだろうか。


「なぜ、ここには私より年上の子達はいないのでしょうか。夢、情報持っていますか」


私は積み木で遊ぶ子達と遊びながら、折り紙をする子達と遊ぶ夢に問いかければ、夢ではなく1人で絵を描く黒髪の男の子が答えてくれた。


「それはね、しおはらきいちとおなじように、しあわせにそだててくれる「かぞく」をかよこせんせーが見つけてきたからだよ。

おねーさんくらいの年になればかならず、かよこせんせーは「かぞく」を見つけてきてくれるんだ。ぼくはあたらしい「かぞく」が見つかってほしいわけじゃないけど。ぼくは絵をかけたらそれだけでいい」


確か彼は、秋葉あきはくんと言う名前で、目立つことを好まず物静かで無表情、笑う姿をあまり見せないと書いてあったな。

特技は色鉛筆画と水彩画。

不思議な雰囲気を持ち、優しげな色使いな絵を描くと記されていたような気がする。

私は積み木で遊ぶことをやめ、彼の元へと歩み寄る。そして、彼の描いた絵を覗き見た時……。

……私は衝撃を受けた。


「綺麗……」


淡く光る泡。

海のように感じるのに、まるで海の中に太陽の光があるかのように明るく、それでも儚くて。

私は目を奪われた。


……ああこの子だ。


そう私は思った。

その瞬間、秋葉くんは私が思わず自分の耳を疑うようなことを言ってみせた。


「やっとあえたね。ぼくはね、ずっとまってたんだよ。きみがきてくれるのをまってた。

ぼくはね、しってたの。きみがこの家にくることを。それでぼくの絵をみとめてくれることも。

それから、みらいのぼくが「しないといけない」ことすべてぼくはずっとしってたの。

だから、この家から出るわけにはいかなかった。……きみがくるまでは」


……私が来るのを待っていた……?

と、言うことはこの子は瞑想系の予知能力者ってことか⁈ しかし、なぜここまで使いこなすことができているんだ? 私より幼いはずなのに。

私は内心、戸惑っていた。

そんな内心を露知らず、彼は話を続ける。


「ぼくはきみをあるじとするうんめいのながれにいる。ぼくはそれにさからえないし、さからわない。ぼくはそれを生まれた時からしっていた、そしてその時からぼくはきみをあるじとして考え、きみがむかえにくるのをまっていた。たかが5年、されど5年。

いつくるかもわからないあるじをまちつづけていたから、とても長かったよ。だけどいいんだ、きっときみはぼくのあるじになってくれる。やっと、きみのために……いや、たったひとりのあるじのためにぼくは……ううん、ぼくたちはどりょくをすることができる。

ここにいるのはね、きみがかんがえたこの世界をこの世界であるために中立のたちばとなるみらいのかのうせいをもっている子たちなんだよ。

きみはね、ここの全員をメンバーにえらぶんだ。ううん……、そのつもりでここにきた。

だからね、ぼくらはかくごをもうきめてるよ。きみがぼくらにやさしく声をかけてくれた時から、ぼくらはあきみの目となり、耳となり、ぶきとなり、そしてきみの1部になるってきめたんだ」


この子は相当な実力者となるな。

能力者としても。リーダーとしても。

彼が言っていたことは正解だ。

ここの子達は全員、うちが運営することになる孤児院に移動してもらい、教育を受けてもらう。

そして様々な業界で目立つ存在か、情報の集まりどころとなる会社で平凡でどこにでもいるサラリーマン、OLと言う立場を演じてもらうかの2つ。

勿論、彼らには自由な選択をして貰う。

だが、中立の立場をしっかりと保ってくれることを約束をしてだけれど。


佳代子さんの育て方はとても良い。

彼らがのびのびと暮らすためには彼女の存在は必要不可欠と考えている。

佳代子さんにも、後継者の教育を頼まなければと考えている。その後継者は恐らく、この中から見つかるだろうとなんとなくそう思う。

佳代子さんはあくまでも彼ら、彼女らの母親としての立場としていてもらう。

勉強面での「先生」を見つけなければ。


「もう少しだけ待っていてくださいね」


私はにっこりと笑って言えば、


「こんどはほんらいの穂月さまできてね。ぼくから、じぜんにみんなにはなしてあるから」


彼は無表情のまんまそう言った。

随分と彼は信頼があるんだなと思った。

だから、遠慮なしに素で話せた。


「ああ、そう言ってくれるとありがたいな。ありがとうな、秋葉。次会う時は君が候補生となる時だ、努力を怠るなよ。皆も良く励んで欲しい。それでは今日のところは失礼する。

朔斗、夢。次の目的地へと行くぞ」


公爵令嬢らしからぬ歩幅で歩き始めれば朔斗も、夢も3歩後ろの距離を保って歩き始めた。




孤児院の外に出て、父上が用意してくれた車のドアを朔斗が自然な動作で開けてくれた。

私が入った後、朔斗が私の隣に座る。

そうすることは私が希望したことだ。


「月穂様。こちらの孤児院だけでよろしいのですか? 篠原佳代子さんの姉、雪子ゆきこさんの方の孤児院は合併しなくてよろしいのですか」


「いや、そうすると葉月様達に勘付かれてしまうからな。そうなると、非常に動きづらい。雪子さんの方は事前に連絡を入れておいた。水月家が補助金を出し、1部の子達は候補生として雪子さんの孤児院からも呼び寄せることにした。塩原希一への手紙を書くことも納得してくれた」


「そうですか。教育担当になる方にはもう了承を頂いております。後は本当の代表である月穂様からの説明した後、契約書にサインして頂くだけです」


優秀な秘書で何よりだ、とそう考えていると朔斗は何か言いたげにしていたから咳払いをして見せる。そんな動作を見せたことで我に返った朔斗は話すことなく通常運転に戻ってしまった。

私は何を言われようが、優秀な秘書である朔斗を手離すことはないからな。


「どうしたよ、朔斗。言いたいことがあれば遠慮なしに言って構わないよ」


朔斗の意見を聞くことで、私がまた少し向上出来るのであれば何を言われようが気にしないからな。年下だろうが、教わることもある。朔斗より私のほうが精神年齢は上だからな、まあ見た目は年下だが。


「話はだいぶ変わりますが月穂様、本当に雪夜様のことをお好きでいらっしゃるのですか?」


随分と話が変わったものだとそう思う。

このことくらいで、朔斗のことをクビにするほど私は短気な性格ではない。

だから、本来なら失礼ではあるが、質問を質問で返してみた。そうしなきゃならないと理由はわからないけれどそう感じたから。


「どうしてそう思う?」


「……同じだったからです」


……同じ、だと?

何が同じなんだ⁇

私は内心そう考えていた。すると、朔斗はそれを読み取ったかのように改めて言い直す。


「夢や私が月穂様に向ける目と、あなたが雪夜様のことを話すときの目は同じだったからです。私にはわかります、何人も自分と同じ立場にある同志達を私は見てきましたが、あなたの雪夜様に対する視線は忠誠心に満ちていました。そして尊敬や憧れなどの感情には満ちていましたが、恋人同士が抱く「愛」とは何か違うように感じたのです。月穂様が抱くその「愛」も一種の愛情ですが、あなたが感じている感情は客観視から見れば依存でしかないと感じます。

月穂様、雪夜様にあなたが惹かれたのはきっと理想の主人としてではないかと。そして、あなたはいつか出会います、本当の想い人に。その時にはもう、月穂様は雪夜様に外堀を埋められ、追い詰められ、逃げられなくなっていると思います。ですから、どうか今のうちに自分と向き合われていた方がよろしいかと。

月穂様、もし向き合われる時、こう思い出してください。……雪夜様はあなたではない誰かと微笑み合い、仲睦まじげに手を取り合い、歩いている姿を。それを見てあなたは嫉妬をしましたか? それとも、相手の幸せを祈りましたか? その選択が答えです、月穂様」


とても真剣な表情で言うもんだから思わず、わかったと了承してしまった。

その後私はぼんやりと考える。

私は、雪くんのことを自分の主として慕っているように見えていたのかと。

私は雪くんに恋してるとそう思っていたし、そう感じていたのに……。周りから見れば、従者のような行動をしているように見えていたのか……。


まあ結果がどうであれ、雪くんが私じゃない誰かを選んだ時に気づくのでは遅いんだってことはそういうことに鈍感な私でもわかった。

それに、その立場が逆だったとしてもそうなってからじゃ遅いと言うことも。

朔斗に言われて、少し自分が雪くんしか見えていなかったことに気付けた。

それでは駄目だと言うことにも気付けたから、私は朔斗の言う通り、少し考えて見ようと思う。

だから、改めてこう言い直した。


「それも一理あるな。考えてみよう」


「ありがとうございます。

たった数日しか仕事をさせて頂いていませんが、私はあなたのことを主として慕っておりますし、尊敬も抱いております故。

ですから、あなたには幸せになって頂けなければ困るのです。なので、恋に盲目にならず、向き合って本当に愛している方を愛し、愛されてくださいませ」


何故か切なそうな顔をしてそう言った。

……どうして、朔斗がそんな顔をしている理由が私にはよくわからなかった。

だから、鈍いだなんて前世でも言われてしまうんだろうな。お嬢様にも、あの方にも。

私が私らしくある限り、恋愛感情に鈍いのは直ることはないんだろう、きっと。

そう考えていると信号が赤信号に変わって、車が一時停止をした。この時、今まで黙って安全運転を心がけていた夢が落ち着いた声でこう言った。


「私も同意見です。

ですからどうか盲目にだけはならないでください。私はあなたに幸せに生きてほしいのです。ですから、朔斗さんが言ったように考え直してみてください」


夢がそう言い終わった後、信号機か空気を読んだかのようなタイミングで青に変わった。

それから7時間くらいかけて、了承してくれた教育者達がいるところを周り、説明して歩いた。

全員のところを訪問し終わった時にはもう、景色は真っ暗闇に変わっていた。実際に彼ら、彼女らに会ってみて、本当に良い教育者なんだと実感出来た。

彼ら、彼女らは今の教育内容に納得出来てない優秀な人材を選んだ。が、1番大事なのは、候補生達の思いやりの心を育てることであると伝えた。

勉学も確かに大切だが、人として慕われる人にしたいのが1番の願いである。

それを踏まえて、教育者達が候補生の教育内容を考えて欲しいと。行った教育内容を嘘偽りなく記した書類を毎月送って欲しいとも頼んだ。

候補生、それぞれの才能に合った教育を実際に彼ら、彼女らに会ってから考えて欲しいとも伝えた。その願いを叶えると言う条件があったとしても、教育者全員はこの話を引き受けてくれた。


有難いな、そう考えながら私は眠さを感じ、目を擦った後、欠伸をすれば……。


「眠いならば、お休みになっていてください、月穂様。屋敷に着いた時に声をかけますから」


朔斗は優しい声でそう言ってくれた。その好意に甘えて、私は眠ることにした。





また、真っ白な空間の夢だ。

今度は王座のような椅子に、王冠を被った人形が座っていた。今度は誰の記憶なのか。


「警告しにきた」


人形は私にそう言ってきた。

……警告……? それはどういうことなのだろうか? と私は人形の意味深な言葉に対して考える。

そんな内心を読み取ったかのように、人形はその言葉の続きについて話し出す。


「私はね、君があの方と呼んで慕う彼の記憶の一部が意志を持ったものなんだ。

もし、私が記憶だけじゃなく本人だとしてもきっと君に警告しにきていたと思うから。

だから、私はこうして警告しにきた。

私はあの方の名前、そしてあの方の最期の時の記憶に意志が宿った存在なんだ。

何かの間違いで、あの方の記憶は2つの魂に私の記憶を除いて半分ずつ宿ってしまったんだ。

1人は悲しみの記憶を。

1人は穏やかな記憶を受け継いだ。

その2人に唯一共通するのは前世の君を愛していたことの記憶だ。前者は君を強く望み、君が愛してくれることを固執するはずだ。

後者は君の幸せを祈り、密かに愛し続け、困っている時は君のことを助けてくれるだろう。

だが、君を愛していたのはあの方だけではない。その存在には気をつけて欲しいのだ。

それはな、君を刺した通り魔だ。

通り魔に見せかけた、君のストーカーだったんだ。そして、自分を愛してくれない君のことを通り魔に見せかけて……、あの事件を起こした。

本来なら、彼はこの世界に転生するはずではなかったんだが……、何らかのエラーが起きて、君と同じ時代の流れに入り込んでしまったんだ。

本来なら起きるはずのなかったことだ。

だからこうして、予定通りに戻すために警告をすることにした訳である。

だから、恋に盲目にはならないようにして欲しい。疑って欲しい、信じ過ぎないで欲しい。

選択肢次第で君は、相手によっては予定外に殺められる可能性が出てくる。

身内を失う可能性もある。だから、自分の力を過信しないで欲しい。我々には運命に必要以上に関わることは出来ない。我々に出来ることは、こうして君に警告をするだけである、申し訳ない。

嘘偽りなく、君が好きになった人と付き合ってくれることを我々は祈っている」


一方的に彼はそう話して、私を夢から覚めさせた。夢から覚めた後、冷や汗を結構掻いているせいなのか、身体が水分を欲している。

それを察したように朔斗は私に水の入った水筒を差し出してきて、お礼を言った後、それを受け取る。水を口に含めば、身体中に染み渡るような感覚に落ち入りながら、私はあの方の記憶の一部に宿った意志が言っていたことについて深く考えた。


……私はこれからどうしたら良いのか。


ますますわからなくなった。




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