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2人のサイコパス  作者: アズキ
第4章

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4,追跡

現場にいる警察官、刑事はヒソヒソと話している。

その内容のほとんどが、死体の顔につけられたお面についてだった。

全員が般若のお面に反応していることが伺える。

反応しない方が無理だ。

川島も般若のお面を凝視していた。

時々、こちらを睨んでいるようにも見えるそのお面からは酷い憎悪を感じられる。

般若というものがそもそも、女の怨念そのものだ。

嫉妬、怒りが怨念となり、人間だったはずの姿から遠い鬼の姿へと変貌を遂げる。

犯人は警察に対して何を伝えたいのだろうか。

お面をつけられている死体は見て分かるが、女性だった。

そこに理由があるのかは分からない。

犯人は女性を狙って殺したのだろうか?

だとしたら、無差別殺人とは言えない。

最初に殺されたのは男性だったはず。

どこかのタイミングで狙って殺したということになるのだろうか?

しかし、今のところ、被害者に共通する部分はこれっぽっちも見つかっていない。

経歴、年齢、性別、何をとってもバラバラ。

警察は無差別殺人と判断する他なかった。


川島は死体を解析班に任せ、通報してきた男の話を聞くことになった。


「あなたが、通報をしてきてくれたということで大丈夫ですか?」


「はい、間違いないっす」


「通報した時の情報を教えて貰ってもいいですか?」


「はい。

あ〜でも、結構焦ってたんで、犯人の人間の細かいところまでは分からないかもっす」


「大丈夫です。分かっていることだけで」


男は少し大柄な体格をしていた。

気の強いというよりも、肉体的に強そうというイメージを強く感じさせる。

肉体的に強そうというイメージが先行しているだけで、明らかに気も強そうだった。

刺青が入っていても不思議ではないし、驚きもしないであろう風貌。

人は見かけによらず、こちらの話に積極的に答えてくれた。


「死体を見つけて通報したということでいいんですか?」


「いや、ちょっと違うっすね。

正確には、犯人が殺している現場を見たって感じっす」


「犯人を見たんですか!?」


「顔は見てないっす。

暗がりだったもんで。

でも、様子がかなりおかしくて、犯人が死体に何かをつけてるのが見えて、こんな所でまさかおっぱじめてるのかと思ったんですよ。

犯人の方を見ると手にナイフか包丁を持ってて、確実に刃物だってことは分かったんっすよ。

だから、かなり焦って、自分こんなんですけど、テンパったんすよ」


男は淡々と話してくれた。

恐怖の色はなく、むしろ警察に協力できて嬉しそうだ。

ヒーローにでもなったかのような気持ちなのだろう。

一般人が事件に貢献するとなれば、このような気持ちにならないこともない。

気の弱い人間であれば、恐怖で話せなくなってしまう可能性もあり、そちらの方が言い方は悪いが面倒なのだ。


「で、気になって、何してんすか!って大声で言ったんっすよ。

そしたら、そいつ、ものすごい勢いで走り出して、何かあると思ってあとを追いかけたんっすよ。

走る途中で倒れてる方も見て、血まみれっぽかったんで、完全にやばいと思って」


「犯人をどこまで追えたんですか?」


「本当にほんの少しっすね。

足がバリ早かったみたいで、すぐに見失っちまって。

俺、結構足には自信あるほうなんすよ?

だから、かなり鍛えてる方だったんじゃないかな。

で、戻って通報したんすけど、見たでしょ?あの般若のお面。

さすがにちょっとビビりましたね。

何かの悪ふざけの可能性もあるから、死体を足で少し触ったんすけど、反応なかったんで通報しました」


川島の目から見ても、体育会系と言われても疑わないその男をゆうに超える身体能力。

かなり手強い相手であることが想定できる。

おそらく、犯人は見つかる予定はなかったのだろう。

たまたま通行人である男に見つかり、たまたま気の強い人間で声をかけられてしまった。

焦った犯人は監視カメラも気にせずに、逃走。

周りの監視カメラからも黒い影が確認できているらしい。

顔が分からないというのが残念なところではある。

犯人の入念さが見て取れる。

焦るような状況でも、しっかりと自分の正体だけは明かさないようと気をつけていた。


「でも、人が多いって訳でもない場所なんで、どうやって逃げたんすかね。

ガチで探したんすけど、見つからなくて。

壁とかフェンスとかは一応あったんすけど、飛び越えたとか?

さすがに身体能力が鬼っすよね、マジで」


「分かりません。

犯人の身体能力が高いとなれば、ありえない話でもないかもしれません。

でも、隠れるのが上手いと考えるのが妥当だと思います」


「そうっすよね」


「とにかく、ご無事で何よりです。

相手が悪ければ、あなたも殺されていたかもしれませんし。

危険すぎる行動ですので、今後は気をつけてくださいね」


「そこは反省してるっす。

いやー自分もかなり衝動的に動いてしまって。

声をかけて、襲ってきたら逃げるか抵抗するか考えてて。

でも、声をかけたのも少し根拠があったからなんすよ」


「根拠?」


犯人を目の前にして、どんな根拠があるのだろうと、川島は刑事であることを忘れたかのように純粋な気持ちで聞いた。


「体格が、ちっこかったっていうか、こんな言い方アレなんすけど、弱そうだった、感じっすね」


「弱そうだった?本当ですか?」


「なんだろうな、本気出せば勝てるんじゃないかな?ってぐらいには体格が小さくて。

女だって言われても疑わないくらいには?

ちなみに、犯人の性別とかって分かってるんすかね?」


「いえ、そこまでは」


「あ〜だった、女っていうせんもあるかもっすね」


川島は今まで見た防犯カメラに写った人影を思い返した。

確かに、男の言う通り、カメラ越しでも少し分かるぐらいには小柄な体型をしていると言える。

細身で、殺人鬼とは思われなさそうな人物。

だが、そういう奴に限って人を殺す。

性別の方に関しては頭から完全に抜けていた。

男寄りの体格は指定内にしろ、内心は小柄な男がやったとばかり考えていたのだ。

しかし、顔が分かっていない以上、女である可能性もある。

話をしてくれた男が強そうだから、相手が弱く見えてしまっただけの可能性もなくはないが。


身体能力がかなり高い。

頭がキレる相手。

冷静な判断ができる。

これだけ聞くと、とても手強い相手に思える。

途中でわかった、体格的にはとても弱そうというのを付け加えると対面することが出来れば何とか捕まえることができるのではないのか?

襲ってきたとしても何とかなりそうだ。

考えみれば、これまで襲われた人々は全員、お世辞にも強そうとは言い難い人たちだった。

それに、殺され方を見るに、おそらくは不意打ち、防ぎようのない攻撃を後ろから仕掛けていたに違いない。

そうせざるを得ない理由があったとしたら、殺人犯自身が弱かった可能性があるのだ。

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