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~記憶を対価にす癒す追放聖女ですが、時間が巻き戻った冷酷公爵様がなぜか異常なまでの溺愛モードで迫ってきて困惑しています~

薄暗い教会の礼拝堂


ステンドグラスから差し込む月明りの下で公爵レオン


ハルトの足がピタリと止まった


目の前にいるのは、3年前・・いや彼の失われた記憶


の底に沈んでいた筈の聖女


かつて自分を救う為、己の記憶・・最も愛おしい思い


出の数々を代償に私にかかった呪いを癒しその直後に


役目は終わったと冷たくこの教会から追放した聖女


エリーゼその人だった


レオンハルトの息が詰まる。3年前の過去へ巻き戻っ


た彼がまず最初に行ったのは、この場所への疾走だっ


た。ボロボロになりながら自分の為に教会で祈り記憶


を失ってゆく姿を二度と繰り返させないために


しかし目の前のエリーゼは、レオンハルトの知ってる


すべてを諦めた様な冷徹な聖女ではない。まだあどけ


なさを残し戸惑い瞳を揺らしながら目の前に立つ冷酷


公爵レオンハルトを見上げていた


「あ、あの・・レオンハルト様?なぜこの様な場所に


・・それに・・そのお顔が・・」


エリーゼが震える声で尋ねる。それも無理はない。冷


酷非道と恐れられ普段なら泥を払うような視線しか向


けないはずの北方の暴虐侯爵が、今のレオンハルトは


まるで世界の全てを失いかけて、ようやく拾い上げた


宝物を抱きしめるような、血の滲むような熱い眼差し


で彼女を凝視してるのだから


間に合った・・今度は絶対にお前を一人にしない・・


レオンハルトは、大きく息を吸い込むと音を立てて冷


たい石畳を踏みしめ一歩また一歩とエリーゼとの距離


を詰めた。その足音は、まるで逃げ場を塞ぐ獣の様に


逃れられない重圧を伴っていた


「レオン・・ハルト様・・そんなに近づいて一体・・」


「エリーゼ・・」


低い、しかし震える程の甘い声音が礼拝堂の静寂を切り


裂いた。レオンハルトは、彼女の目の前まで歩みよると


その細い両肩をガシっと掴んだ。あまりの強引さとその


瞳に宿るだた事ではない熱量に、エリーゼは小さく悲鳴


を上げて身を引こうとする。だが逃すわけが無かった


「もう二度とお前にそんな真似はさせない・・」


「えっ・・?何を・・私はただあなたを・・」


「そうだ。お前は俺を救うためにお前の記憶を対価にし


た。俺がどれほど苦しもうとも、お前が自分の記憶を犠


牲にする世界など二度と御免だ。」


「!!・・なぜそれを??私が記憶を対価にする事は、


誰にも・・!」


エリーゼの顔から血の気が引いた。それは神殿の契約の


奥義であり他人に知られる筈のない秘密だったからだ。


彼女の瞳に恐怖と警戒の色が浮かぶ。しかしレオンハル


トはその反応すら愛おしいと言わんばかりに更に顔を近


づけた。冷酷公爵の頬を一筋の熱い涙が伝い落ちる。そ


のあり得ない光景にエリーゼは、言葉を失い完全に硬直


した


「俺の記憶にはもうない。だが俺の魂が覚えている。お


前が俺の為に泣き俺の為に何を差し出したという事実を」


「レオンハルト様・・狂ってしまったのですか?」


「ああ狂ったとも。お前を失った世界で生きる地獄に比


べれば狂気の中でお前を溺愛するほうがよほど救われる」


逃げ場のない聖女と時間を超えて執着の怪物と化した公


爵。冷徹な筈の再会の夜は、狂おしいまでの溺愛の幕開


けへと変わってゆく。






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