魔法使いの執事を雇うぞ。さあ、インク量産だ。
1800基
それが完成された魔法のインク工場の量産体制だった。
銀色のタンクが整然と並んでいる。
流石の師匠でもこの数の魔力充填を一度に行うのは難しだろう。
そこで、人を雇うことにした。
師匠のツテで彼の執事の家系のエリート魔法使い2人を正式に雇った。
一人当たり600基のタンクだ。
一月に一度の魔力充填のタイミングだけアトリエに来てもらう契約だ。
何も言わずに来て何も言わずに帰っていく。
まるで仕事人だね。と言っても師匠には伝わらなかった。
「仕事が捗るね。全く」
「まったくですね師匠」
「街の様子はどうだい?革命が行き渡っているかな?」
「今や水の出るツボの普及率が90%を超えましたよ!公衆のトイレにすら設置されています」
「トイレが公衆?水洗の?」
「そうです。水洗の」
「いやはや少し前の貴族の家の設備が街中にすらあるなんてね」
「革命、ですよね。街中の子供達ですら魔法陣を書いて火遊びをして注意されていますよ」
「もっと高い値段で売ってもいいんじゃないかな?」
「本来は工業製品の生産のために、ですものね」
「ああ、そういう契約だ。誰でも魔法を使えたら逆に不便だろう?」
「ところが、誰でも使えるようになってしまいましたね」
「誰のせいだろうね?」
「ちょっと安売りしすぎましたね」
「そろそろ老後を暮らすのに十分な報酬を得たのではないかね」
「設備の増築でトントンですよ。材料の代替の研究にもお金がかかりますからね」
「まったく。本当に才能がないねえ我が弟子は」
魔法革命の時代。その礎となったインフラを築いた師匠と弟子がいた。
時代は隆盛を誇り。誰もが魔法の道具を使える時代が来た。
それを支える弟子と師匠はどこまでもノンキだった。
「師匠!試作品の給湯器で作ったコーヒーをどうぞ」
「どうもありがとう弟子よ」
ボタンを押すだけでお湯が沸く。
そんな便利さの中でもコーヒーの香りは変わらず香ばしかった。




