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(2/4)ハマの弾丸娘、勉強する

小塩由香は図書館にいた。しかも数学と物理の教科書を開いている。こんな事、高校生活で初めてだ。ただ目の前には中森トオルがいる。

話は数日前に遡る。グラウンドで由香にディフェンダーへのあたりを教えると言った中森は、その指導場所に図書館を指定したのだ。

そして、サッカーとは全く関係がない幾何学の勉強をさせられた。次の日は物理だ。何でこんな事を、と由香は思ったが持ち前の負けん気の強さから、できると言うのなら何でもやってやろうじゃないか、と勉強に食いついてきた。

中森トオルの教え方はうまく、数学と物理が楽しく感じられたのが由香は自分でも意外だった。どんな事でも自分の成長が感じられる時は楽しいものだ。


いやいや、なにを勉強に励んでいるのだ。

今やるべきは、あの憎き横須賀中央高校のグレートウォール、大迫姉妹を抜く事だ。と思った由香の心を読んだのか中森トオルが言った。

「そろそろ、サッカーの話をしようか。よくここまで我慢したね」


やっぱり図書館でかよ、グラウンドじゃなくて。とは由香の心の声。


「まず、知っていて欲しいのは重心の話。昨日幾何学でやったよね。どんなものにも重心があるんだな」と中森は人差し指の先に教科書を載せた。微妙なバランスを取って教科書は水平を保っている。

「そして重心をずらすと簡単に崩れる」と中森は教科書を指から落とした。


当たり前の事だが、こいつが言うと何やら凄い話に聞こえてくる。

由香は次の言葉を待った。


「次は慣性モーメントだ。物は回転し始めに大きな力がいるし、回転を止めるのにも力がいる。注目すべきはその止まりにくさだ。重い物体ほど止まりにくい」

と中森は物理の教科書を指のうえで回転させる。しかも右手では数学の教科書、左手では辞書を回している。器用な奴だ。

「辞書の方が簡単には止まらないよね」


由香は次の言葉を待った。


「大型ディフェンダーは立っているだけでなく、必ず体を寄せてくる。その時の重心の位置と相手の動きの回転方向を見るんだ。その回転はすぐに止まらないから回転を加速させる方向に体を当てに行く。そして出来るだけ重心から遠い位置に当たる。絶対に重心に向かって当たっては駄目だ」


何となく分かったような気がした。由香はそう思った。しかしそう考えるだけでうまくいくものか??


その由香の心を見透かすように中森トオルは言った。

「さあ、座学は終わりだ。グラウンドで実際にやってみようか」


おい、お前はサッカーできるのかよ?


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