fragment (自作だと地味にもやっとする場合もある)
「おおおおおおおおお!? 本当に異世界だっ!!」
少年が一人。異世界の森の中で咆哮する。彼は異世界転生者だ。いや、厳密には転生ではなく転移である。ただ、彼は死んでからこちらに肉体を再構成され送られたので転生の方が恐らくは正しいだろう。現象としては転移の方が近しいが。重要なのはそこではなく、彼がこの森の中に転生してきたということである。
「えっと、このままだと危険だよな」
森の中というのは獣がいる、毒虫がいる、食べるものを探すのも大変だ。そもそも少年に森で食料を探せるような知恵も能力もない。
「よし、とりあえず住むところを作ろう!」
そういって少年は森をカットし始めた。ばっと腕を振るだけで森が消える。森の木々は切り払われ、倒れ、それを少年がどこにあるかもわからない空間へと格納する。残った切り株は大地がうねり飲み込み、砕き大地へと還す。そしてそのようにうねり森の残りを飲み込んだ大地も徐々にしっかりとした硬さを取り戻し、重いものを載せても問題のないくらいの大地へと変化していった。
少年はこの世界に転生してきた。その際この世界に転生させた神により力を与えられた。この世界に革命を起こせるような超常を起こせる力を。その力を使い少年は森の中に自分が住むところを作ろうとしているのである。
「よーし! じゃあ次は……建物!」
大地を整え、その上に建物を作り上げる。素材は先ほど格納した木材。それだけでは足りないため、世界のどこか、だれも手の届かない場所に存在する大地も使用し、建物を立てていく。その大きさは人が数百人住んでもあまりあるくらいの超豪邸、家という意よりは砦または城と言うほうが正しいかもしれないだろう。
「住むところはこんなものでいいかな。えっと、家具とかも作る必要があるだろ、灯りとかも欲しい、魔道具とか作ってみたいな……ああ、でもその前に生活を整える必要があるか。食料だって簡単に手に入らないし。っていうか、そういうことを頼める存在を作っておかないと、ってことは……メイドさん! メイドさんを作りたい! 言うこと聞いて仕事をしてくれて甘やかして自由にさせてくれて楽をさせてくれるメイドさん!」
随分と欲望でいっぱいな願望である。その望み通り、彼はメイドを作り上げる。ただそれは生物ではない。無機から作り上げられた意思ある人形……世界によってはオートマタと呼ばれるような存在。ほぼ人の形と同じであり、またその肉体は正しく人とな時機能を有する。生体としては機能しないが、人と同じ行動が可能なもの。それらを大量に作り上げた。
「ハーレムだー!」
ハーレム願望がないわけではない彼は、そんなふうにたくさんの女性型の人形を作り上げ生活をしていくつもりだったのである。
「くそっ! 大丈夫か!?」
森の中を五人の人間が走っている。この五人は冒険者たちだ。
「リフィア! 怪我は!」
「問題ないわ! でも、まだ魔物が追ってきてるから……」
「ちっ、すぐに移動だ!」
がさりと草をかき分ける音が近づいてくる。
「くそっ、もう来たか!」
「逃げるよっ!」
「もう、面倒ね!」
五人は逃げ続ける。しかし、獣と人では持続する体力が違う。彼らは逃げ続けたが、ついに追いつかれる。
「うわあっ!?」
「ジャック!」
「くそっ、なんとか倒さないと!」
それができるのであれば逃げる必要などない。魔物に追いつかれ押し倒されたジャックはそれだけでかなりのダメージを追っている。一時的に魔物を追い払ったところでジャックが怪我をしている以上すぐに逃げられない。ジャックを見捨てて四人だけでも逃げたほうがいいが、それをすぐに選べるかというと、ジャックは彼らの仲間だ。簡単に見捨てられるような付き合いではない。
「どうしたら……」
そんな迷いを見せた一瞬。森の中から現れる流星のような影。それが魔物を吹き飛ばす。
「なっ!?」
とっ、と軽い音を立てて地に着地する影。それは少女だった。メイド服を着た少女。
「人です。えっと、こういう場合、魔物を倒し案内すればいいですね」
軽く腕を振るい少女は魔物を倒した。
「凄い豪邸だな……」
「っていうかなんでこんなところにこんな大きな建物があるの?」
「さあ、わかんないけどジャックの治療ができるなら……」
「ここで休めるならいいじゃないか。森を抜けるのも大変だしな」
ジャックを運び先に歩んでいる少女についていく四人の冒険者。別にジャックは気絶もしていないし動けるが、ジャックをそのまま歩かせると時間がかかるので少女が運んでいる。魔物を一人で倒すほどの力を持つ少女は人一人運ぶのも容易である。そうして彼ら豪邸に案内された。
「メイド長、メイド長、人間発見しましたです!」
「あら、ルーエ……これはこれは。我らがご主人様のお住まいになる邸宅へようこそいらっしゃいました」
「え? あ、ああ……」
丁寧に挨拶をする少女……ルーエと呼ばれた少女にメイド長と呼ばれた女性。
「ルーエ、その人はそこに寝かせてご主人様へ報告をお願いします」
「はいです! マスターに報告に行ってきますです!」
ルーエは入口付近にあったソファーにジャックを寝かせ、タタタと家の奥へと向かう。
「改めて……我らがご主人様の邸宅へようこそ。今まで人をお迎えしたことはなく、大した歓迎もできませんが、皆様をお客人としてお迎えしたく思います」
「いや……別にそこまでのことは求めない。俺たちは森で魔物に襲われているところをさっきの少女に助けられただけだ。ジャックの怪我をなんとかすればすぐに出て行ってもいい」
これほどの邸宅を抱えている人間は確実に貴族または王族と言った上位の人種である。そんなところにいて彼らは落ち着けない。
「そうですか……その前に我らのご主人様に一度会ってもらえますか? ご主人様は私たちしか相手をできる人がおらず、退屈していらっしゃるでしょうから。色々と話を聞かせてもらえれば少しは楽しめると思いますので」
「それは……」
「アルフェ。ちょっといいか……おや? 人間か?」
「フマルド。はい、お客人です。ご主人様の元へ案内するつもりなのですが」
「マスターの所へか? カメリアかターギスに頼んだらいいだろ。呼べばすぐにくるじゃないか」
「そうですね」
アルフェがちりりとベルを鳴らす。それをどこで聞いていたのか、女性が現れる。
「お姉様っ! 何か御用ですかっ!」
「カメリア。お客人です。ご主人様の所へ案内してもらえますか? 先にルーエが報告に言っていますので問題はないでしょう」
「マスターの所へですか……お姉様の頼みですからもちろん精一杯頑張りますっ!」
「……頼みますよ」
元気いっぱいにメイド長と呼ばれた女性、アルフェに頼まれたカメリアは五人……いや、ジャックは寝かせられ傷の治療が行われているため四人を連れてマスターまたはご主人様と呼ばれた相手、ここの家主の元へと案内された。
「ようこそっ! 我が家の初めての客人たちよっ!」
そこにいたのは少年。この世界に異世界転生してきた例の少年である。
彼はかつてここに城を作り、たくさんのメイドを作り彼女らに管理を任せた。一種のハーレム状態、最初はかなり楽しく思っていた。しかしである。いつまでもその状態というのも実に面倒で大変だった。城の管理自体はオートマタに任せればいいことであるが、城をずっと維持するのも面倒が多い。それにたくさん作ったとはいえメイドたちの数も足りない感じであるため大変そうだった。別に問題はないが。まあ、見ている少年の方がもやもやしたので城の規模を小さくし、豪邸規模にした。それでも百人くらいは余裕で入るが。
そしてメイドたちだけというのも、どこか寂しい。別に女性に囲まれているのは悪い気分ではないが、本人の心情的に自分の作ったものに囲まれて喜ぶのはどうなのだろう、と我に返った感じである。そして少年は男性も作り出した。作り出した女性のメイドたちの数に合わせる形で執事として。なぜそんなことをしたのか? なんというか、彼は…………カプ厨なのである。女性一に対し男性一、そのカップリングとなり得るように人数を合わせた。実際はそこまでうまくはいかない。どちらの性別のオートマタにも意思があり好みがある。まあ、多くはお相手のオートマタを見つけている。しかし、そんな中カップリングをと望んだのに主に忠誠を誓い相手を作らない者、主に懸想するもの、同性に姉兄妹弟として慕う様子を見せる者、ハーレム逆ハーレム的な環境を作り上げる者、様々で全員がそのまま一対一のカップリングとはなっていない。まあ、それはそれで一つの形だろう。
ともかく、今の彼の住む家はそういう状況にあったのである。そこに新たな人間の客人だ。これがいったいどういう影響をもたらすことになるのか……それはわからない。




